《以下引用》
「私は、息をのんで眺めていた。あの父とともに展望車から眺めた富士山以上のすばらしい富士山を未だ見たことがない。それゆえ、今五十を過ぎても、富士山を眺めるたびに父が展望車のデッキから指さしてくれたあの富士山を思い出す。それはまさに、聖なる山、霊峰であった。そして、いつの頃からか、父が私に遺産として残してくれたものは、富士のあの霊峰の姿なのだと思うようになったのである。
父は、西郷南洲を敬仰していた。「幾たびか、辛酸を経て、志初めて堅し」ではじまる西郷の詩は、「自孫の為に美田を買わず」で終わっている。父は、この詩を覚えておけよと中学一年生の私に言った」(『眞悟の時事通信』から)《引用ここまで》
父、故西村栄一(元民社党委員長)の「自孫の為に美田を買わず」を実践していたならば、彼は今日、お縄を受けるといった〈屈辱〉を味あわないで済んだはずである。
《以下引用》
「自分の法律事務所元職員の非弁活動(無資格での弁護士活動)を知りながら弁護士の名義を使用させていたとして、大阪地検特捜部と大阪府警は二十八日、弁護士法違反(非弁護士との提携)容疑で民主党衆院議員の西村真悟容疑者(57)=比例代表近畿ブロック=を逮捕した。西村容疑者は、逮捕後の調べに対し「分かりました」と述べ、容疑を認めたという。
特捜部などは非弁活動は六年間に約百九十件に及んでいると見ている。組織犯罪処罰法違反(犯罪収益の収受)容疑でも立件する方針で、報酬の総額や使途など全容解明を進める」(11月28日『デイリースポーツ』)《引用ここまで》
容疑者といえども、刑が確定するまでは無罪である、という前提に立てば断定的なことは控えたい。そのうえであえていえば、西村眞悟容疑者の心のなかに棲みついていた〈カネ〉を巡るふたつの解釈、つまり父が憶えておけよ、といって残してくれた「詩」と、逮捕の容疑となった「犯罪収益の収受」というこの乖離はいったい何なのだろう、と思う。そして、どっちが本性か、といえば、いうまでもなく、今日のことであろう。
西村容疑者は今年9月に行われた衆議院選挙で、民主党候補として大阪17区の小選挙区では落選したが、近畿ブロックの比例で復活当選した。議員時代には日本核武装論を唱えたり、尖閣列島に上陸したり、また北朝鮮による日本人拉致問題では、拉致議連の中核メンバーとして逮捕される直前まで活動をしてきた。どのようなことを主張しようが、どんな活動をしようが、そのことは問わない。問われなければならないことは、どのようなことを主張しようが、どんな活動をしようが、いまの「本性」がすべてである、ということである。公人の宿命と言っていい。
因みに、「公人」というのは議員だけではない。選挙で選ばれた者全てが公人である。国民も市民も「公人」を選ぶ権利を持つと同時に、「公人」がその責任を全うするかどうかを監視する義務もある。そういう意味で言えば、佐久市でずっとくすぶりっぱなしの「パラダ問題」も、規則がそうはなっていない、といったことで済ませるのではなく、経営内容など市長は率先して市議会ではっきりさせるべきである。「公人」としての市長の責務であり、なによりも市民が行政に信頼を寄せる第一歩のためにも、である。
時間は常にかかる。が、隠し事はいつかは必ず明るみに出る。いま新聞紙面やテレビの画面を独占しているアスベスト問題も然り、偽装耐震建築問題も然り、そして今日の西村問題も然り、である。まさに「官=アスベスト」「業=偽装耐震建築」「政=西村容疑者」のオンパレードとなったのは決して偶然ではあるまい。
はからずも政、官、業という戦後日本を象徴する部分に、いま亀裂が奔っているのである。
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