Re-Set by yoshioka ko

■『ゲリラは処刑されたのか?』 最終回

 ペルーで起きた日本大使公邸占拠事件で、邸内に立て籠もった容疑者14人は全員が射殺体で発見された。だが、人質となっていた日本人外交官の証言で、少なくとも2人は突入した特殊部隊の兵士らによって〈処刑〉されたとして、軍人19人が殺人罪で起訴された。

 リマの法人類学者たちは、埋葬されていた14人全員の遺体を掘り起こし、鑑定した結果、〈処刑〉の可能性が指摘されたのは、14体のうち8体。うち1体は1発の銃弾しか受けておらず、それが致命傷になった、と言う。

 テロは憎まなければならない。しかし、戦争とは異なり、人質救出に当たっては〈処刑〉が許されるはずがない。私は最後の旅を続けた。

■『ペルー大使公邸占拠事件~ゲリラは処刑されたのか~』最終回
○アマゾンの山々
  山中に転々とする村々。
  そこで、ひとりの女性を捜し当てた。

○ある家の粗末なドア
  「ジョアンナさん?」

○ドアが開き、ひとりの女性が顔を出す
  占拠事件が起きたとき、
  公邸にいたと考えられた
  ジョアンナさんの居場所がわかったのは
  偶然のきっかけからだった。
  彼女は二年前にMRTAを脱退、
  いまは二人の子供と暮らしていた。

○ジョアンナ・プラセンシアさん
  「知らない土地ばかりだったので、
  グループから逃げることは出来ませんでした。
  私に残された唯一の道は、
  彼らと一緒にいることだったんです」

○夕暮れの庭先
  MRTAにリクルートされたとき、
  ジョアンナさんはわずか十歳だった。
  そして八年間、ジャングルを転々としながら
  大人になったという。

○ジョアンナさん
  「彼らが教えてくれました。
  私たちが生きている境遇はなんなのか・・・、
  なぜ母があのような貧しい暮らしを
  しなければならなかったのか・・・」
  
  「貧しさはいまも変わっていない?」
  「この街の外のことはわかりません。
  しかし私の中では、
  なにもないということはどういうことなのか、
  身をもって貧しさを体験してきました・・・」

○川の渡し籠
  自然に恵まれたチャンチャマーヨ郡だが、
  電気や水道の普及率は三割ほどだという。

○夕餉の支度をするエリヒア・ロドリゲスさん
  「ここは真っ暗です。
  こうやって灯油でランプを灯すんです」  

○台所のランプ
  電気のない村ではかまどの火と、
  小さなランプだけが頼りだ。

○エリヒアさん
  「あと何年すれば暮らしは変わると思いますか?」
  「うーん、私は死んでるでしょう、
  恩恵にはあずかれないと思いますよ」

○ゆかいも煮
  エリヒアさんが夕食の支度を始めました。
  主食はユカと呼ばれる芋です。
  最後の質問をぶつけてみた。

○エリヒアさん
  「娘がテロリストと呼ばれていることについては?」
  「娘はテロリストなんかではない。
  身をもって不正を体験してきたんです。
  正義は、この国では金持ちのためのもの。
  カネのない者には、
  どんなにひどい扱いを受けようが正義はないんです」

○竈の火
  貧しさが敵意を産む、という構図は
  ペルーでは現実のものとして
  今も生きている。(了)
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