日本語教師ブラジル奮闘記

ブラジル生活裏話

ブラジル人と日本人の時間・お金に関する感覚の違い

2008年05月01日 06時46分18秒 | ブラジル事情
 ブラジル人はとてもいい加減である。よく言えば、おおらかであり、悪く言えばズボラ。

 日本人は几帳面である。よく言えば、正確だし、悪く言えば細かい。

 日本人もブラジル人もそれぞれ育った環境や価値観が全く違うため、その国民性なるものが大きく違うのである。

 物の考え方は変えられるが、性格は変えられないというのはよく聞く話である。だから、日本人とブラジル人の間で価値観の違いから生じる軋轢に悩むのは時間の無駄である。最善の策は、お互い相手の考え方を単純に受け入れることだ。お互いを変えようとすると泥沼にはまる。(この受け入れるというのは、その考え方の存在を認めるだけであり、その正しさを認めるものではない。)

 日本人がブラジルにいる場合、ブラジル人流の考え方を身につけるべきで、逆にブラジル人が日本にいる場合は、日本人流の考え方を身につけたほうが生きやすい。つまり、「郷に入れば郷に従え」の考え方だ。

 そもそも自分を変えることすら相当の困難を要するわけだから、他人(外国人)、さらには社会(外国社会)を変えようというのは不可能である。従って、その土地の習慣に従って、上手に生きたほうが賢い。

 大体、日本人どうし、ブラジル人どうしでも価値観というのは人によって全然違う。人間が2人寄れば、2通りの考え方が生じ、対立が起きる。だから、要は自分の考え方や価値観を絶対のものと考えず、常に柔軟性を持って、相手の考え方を尊重して生きていく方が賢明なのである。特に外国で暮らす人は、自分の価値基準を物差しにして生きるのは自殺行為に等しい。自分の母国で暮らす人も自分の価値観は100%正しいと考えるのは傲慢以外の何物でもない。

 ブラジル人は時間にいい加減だ。まず、テレビのニュースは時間通り始まらない。日本だったら、9時のニュースなら0.1秒もずれずに9時きっかりに毎日始まる。しかし、この国の場合、大体9時ごろっていう感じである。つまり、8時55分の場合もあれば、9時10分くらいの場合もある。

 コンサートもパーティーもチケットや招待状に9時と書かれていたら、9時半から10時くらいに始まると考えて出かけたほうがいい。大学の授業なんて5分や10分先生が遅れてくるのは当たり前で、下手すると何の知らせもなく休校なんてこともある。

 だから、ブラジル人はある意味そういうところはおおらかである。しかし、銀行の窓口で待たされると文句を言う場合も多いから、場合によっては気が短いところもある。ただ、時間にルーズすぎると、やはりブラジル人の間でも人格を疑われてしまうようだ。特に仕事に関してはきっちりしたほうがいいから、ケースバイケースと言えよう。

 別の例をとりあげよう。スーパーなどで買物をすると、17センターボとかの端数が出る時がある。こんな時ブラジルでは15センターボ払うだけでいい。逆に端数が19センターボの場合、20センターボ払う必要がある。ブラジル人にとって2,3センターボは気にしないのが普通で、そういう細かい人は嫌がられる傾向がある。このようなお金に対するいい加減さは日本のスーパーではまず考えられないことである。僕もブラジルに来た10年前は、何かすっきりしない奇妙な感覚があったが、今ではもう慣れてしまった。

 ブラジルの市内バスなんかも一応時刻表がある。しかし、それはあくまで目安であって、その通りにバスが運行されているわけではない。10分や20分遅れることはザラであり、遅れてきた運転手がそれに悪びれる様子もない。日本のJRで電車の運転手が1,2分の遅れを取り戻すために加速して脱線し、多くの犠牲者を出す事件があったが、ブラジル感覚が身についてしまった僕から見ると信じられないような事件だ。1,2分くらい許してあげろよと思う。

 ブラジルは何事も予定通り進まない。だから、ある程度事がうまく運ぶと、今日は運がいいと思う。また、ブラジルの場合、コネやら賄賂なんか、さらにはそれがなくても、ある程度融通が利いてしまう時がある。

 日本は何事も時間通りに事が運ぶ。だから、時間通り物事が運ばないと日本人は怒る。でも、実は時間通り物事が進むために、そこで働いている労働者は大変なプレッシャーの下で働く。また、何か客に不都合なことが起きると謝罪する。お客様は神様なのである。ただ、日本は融通が利かない場合が多い。役所仕事など2日と言われれば、2日かかるのであって、1日でも3日でもないのである。ブラジル人は基本的に謝らない人が多い。最近は日本人も謝らない人が増えたと聞く。

 それにしても、日本とブラジル、時間・お金をとってみてもこれだけ考え方が違う。どちらかが100%正しいとは誰も言えない。その違いを大きな心を持って、受け入れることが人生を幸せに暮らしていく秘訣なのではないだろうかと思う今日この頃である。 

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2012-02-26 16:18:35
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ひもは、何も言わない (kimurinho)
2013-12-13 06:18:39
 77年頃の話ですが、昔のバスの降車合図は、ほとんどは「ボタン」ではなく、窓の上で横に張られてる「ひも」だった。例によってメンテナンスが悪いので、鳴らないのもある。ある時、客がひもを引っ張っても鳴らなくて、乗り越してしまったので運転手に文句を言ったら、運転手が言った言葉が「CORDA NAO FALA」(ひもは、何も言わない)です。これは実際に私がその場に居合せて、聞いた言葉です。自分達のメンテナンスが悪いのは放っておいて、この言葉!日本だったら、客は激怒して会社に電話され、上司から叱責されるのは間違いなしで、日本との違いを感じた出来事でした。
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お返事 (たけちん)
2013-12-13 10:15:04
コメントありがとうございます。
今でも紐のバスあります。
ブラジル人の対応も今も同じですね。
客目線で対応してくれることは、まずありません。
残念ながら。
でも、時々人間味溢れる場面とかもあるんですよね。
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