社会福祉を考える会 ユメこえ

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ON HOME17

2010-07-27 08:58:58 | ON HOME
階段を駆け上がり、ドアをいきおいよく開ける。

「J。」

その姿を確認すると、名前を呼ぶ。

表情は、複雑なまま。

あわてた様子を見て、手を止めた。

「どうした?」

いつもとは違う、ホームズの様子。

「聞いてないよね?」

何を。

とは、言えなかった。

自分が研究目当ての人間と噂されていることを、とは。

でも、その表情を見て、彼は察した。

自身でその噂を聞いて、わざわざ確認に来たということを。

いつもと同じ声、同じ口調で聞き返す。

「君が私の研究を狙って、近づいたって事かい?」

一瞬で表情が凍る。

彼もやはり、聞いていたのだ。

“違う”

“そんな噂はでたらめなんだ”

その言葉だけでいいのに、のどが詰まる。

声が出せない。

ただ、目を見つめる。

先に答えたのは、彼の方だった。

「分かっているよ、ただの噂だって。」

やわらかな声。

やわらかな表情。

すべてを包むようなあたたかさ。

“心配するな”

と、言ってくれているようで。

「引き寄せたのは私だ。

君から進んできたのではないだろう?」

そうだ。

一人でいる事を選んでいたホームズに、彼が声をかけた。

それが出会い。

それがはじまり。

「私の意志で君を呼んだのに、周囲の憶測の声など、

気にする訳があるまい。」

当たり前の様に話す。

さり気なさ。

こんなにも、

言葉ひとつが嬉しい。

むしろ自分は、彼を信じ切れずにいた事がおろかに思えた。

自分も、ただまっすぐに信じればいい。

大切な人だから。

この思いを信じればいい。

今更ながら、

それに気づいた。


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