ＯＮ ＨＯＭＥ２０

それを見送り、確認してから、彼も歩きはじめた。

ホームズは先ほどと同じように、頭の中に世界を広げながら、

ゆっくりと歩いていた。

その足が止まる。

なにやら、考えに決意が見えた。

足をこれまでとは、違う方向へと向ける。

そのまま、走り出す。

「町中探せば、あるかも知れない。」

敷地内を抜け、外へと。

先ほどの実験に使っていた、あの薬草を探し始めたのだ。

オソキグサ。

別名をハシリドコロという。

ナス科の多年生草本植物。

猛毒の薬草をひとつで。

トリカブトと並んで２大猛毒草と言われている。

これはこのあたりでは自生していなく、珍しい種類で、

東洋原産の薬草だ。

買うと言っても大学ルートでさえ、手に入れるのには

時間がかかるものだ。

残りも少ない。

医院や薬店をまわれば、どこか１ヶ所くらい

置いているところがあるかもしれない。

そう考えはじめると、探さずにはいられなかった。



翌朝。

いつもの様に、寮を出るモリアーティの姿。

昨日歩いた道を、そのまま辿る。

いつもの道。

毎日歩いた道。

この道とも、まもなくお別れをする時間が近づいていた。

それをいつ告げようか。

いつ話そうか。

考えながらも、相手の笑顔を見ると、つい言えずにいた。

スロープを抜け、階段をのぼる。

見えたのはドアだけではなく、そこにしゃがみこむ

ホームズの姿。

うたたねをしている。

「ホームズ！」