女性の貧困世界とカウンセリングの方法
「症例研究」ケーススタディ
大学で飛び降り自殺未遂をした女子の対人恐怖症
大学3年生の冬、研究室の大きな窓から衝動的に飛び降りました。ゼミの教授はアカデミックハラスメントで有名で、教えられていないことをやれと怒鳴られて、「教わっていないので、できません」と言うと、「君はダメな人間だ馬鹿だ」と頭ごなしに否定されました。それからは、ずっといじめの対象になって、学生みんなのいる前で、「あいつはダメな奴、無能な馬鹿だ」と扱われました。その1年前に、母親が脳出血を起こして介護が始まりました。大学では教授から、家では母親から罵られ続けて、おかしくなったのです。研究室の窓から飛び降りた日は、課題の発表がありました。長い長い時間をかけて、ようやく準備した課題をプレゼンしました。腕組みしていた教授は、「無能な女の話を聞かされて耳が腐るわ。」と余りのおかしさに吹き出して、盛んに笑いながら、プレゼン資料を破り捨てました。学生全員がみんな教授につられて笑っていました。おそるおそる教壇に立って、教授がケラケラ笑っていて、同じ研究室の人たちにも嘲笑されて、私、なんだか生きていてはダメなのかなって、生きる希望を全く失って、死んでもいいのかなって、発作的に自分が死ぬイメージが思い浮かんで、飛び降りました。
学内での飛び降り自殺未遂は大問題になりました。私はますます対人恐怖の不安が増幅しました。人のくすくす笑いが、不当な仕方で物理的な強制力を行使する爆力のように聞こえます。このまま、学校中の笑いものになるのではないか?と生き地獄にいる思いで憂鬱です。
カウンセリングの方法
一度堕ちたら抜けられない「貧困スパイラル」と性格に基づくお悩み
今の経済社会はとりわけ、女性にとって厳しい時代です。本当に深刻な状態といえます。旬な肉体を持つ女子大生であっても、もはや自分一人の生活さえ支えることができません。女性にとっての最終的な切り札である肉体やフェロモンでコミュニケーションを密にしても、苦しい生活から逃れられない。大学を卒業して社会参加できても賃金は安い。初任給は高いように見えても、トータルで考えると目減りしているでしょう。ダブルワーク、トリプルワーク、長時間労働をして、やっと普通の生活ができる。
このような女性を取り巻く経済環境の中で、「性格に基づくお悩み」とは、生きてゆく人生の上で、一体、どういう意味を持つものでしょうか?内面の世界の不安や異和感というものは、あたかも、「現在に限った不安」のようにみえますが、しかし、本当はそうではなくて、そのお悩みや不安を受感している人の、将来の経済的不安や、働き方の異和感、生活の恐怖を象徴しているのです。
将来、それは明日も、あさってもずっと、ということになりますが、これから生きている間、半永久的に訪れて来る「経済不安」の内容が、現在の悩みなのです。これは、悩みというものは、その人に特有のものの考え方の、経済社会の現実を認識する方法に基づいて、リアルな現実参加の逸脱やブレなどの歪みから発生するものです。
それでは、大学で飛び降り自殺未遂をした女子のお悩みの内容から抽出された対人恐怖症から何がわかるのでしょうか?それは、ゼミの教授のアカデミックハラスメントという言葉の暴力であり、他者からとやかく言われる評価のことばであり、他者の意図された嘲笑や冷笑であり、さらに不特定多数の他者の、直接、自分の耳には届かない噂といったことになります。これらの諸現象に対して、恐怖をおぼえ、不安を感じ、つねに、心の内面の世界に異和感を喚起させられる、と切実に訴えておられます。
すると、意味の一方的な傾斜と断定的な強調という関わり意識を、一方的に裁断し、結合させてゆくところが、非常に特徴的です。すなわち、性格に基づくお悩みは、一方的に裁断して、決めつける性格から生じたものであると考えるのが妥当であると言えましょう。ご自分の「主観の範囲内」で意味の整合をおこない、辻褄を合わせるばかりで、ご自分の解釈に妥当性があるのか?説明性という表現の現実を保っているのか、いないのかを、全く内省的に疑うということを行うことが出来ないというところに、真の問題点が所在するということです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます