『えんどう豆のベッドで眠れないお姫さま 忠誠の儀式』 鬱を消す絵本
原作:Hans Christian Andersen 「エンドウ豆の上に寝たお姫さま」
むかし昔、王子がいました。
王子はお姫様と結婚したがりましたが、それは正真正銘のお姫様でなければなりません。
「本当のお姫さまでなければ、お城の中には入れませんよ」
王子のお母様は、厳格な方でした。
そこで、王子は世界中のお姫様を探して回りました。
ところが、どこへ行っても、本当のお姫様は見つからないのです。
お姫様はいくらでもいましたが、王子のお母様の御眼鏡に適いそうもない。
こうして、王子は、お姫様に失望してお城へ帰りました。
ある夜のことです。
ひどいあらしになり、雷がなって、ひじょうに気味が悪い雨が降ってきました。
その時、お城の門を叩く訪問者がありました。
門を開けると、そこに立っていたのは一人のお姫様でした。
ところが、雨にうたれて、みすぼらしくて、あわれな流人の姿をしていました。
髪の毛や着物からは雨水がしたたり、靴もびしょびしょです。
それでも、「わたくしは本当のお姫様です。お城の中に入れてください」と言うのでした。
王子のお母様は、
「どうせ、偽物の姫だと分かることです。」
と考え、お城の中の寝室に入れてあげました。
そして、ベッドの上に、まず一粒のエンドウ豆を置きました。
それから、そのエンドウ豆の上にマットレスを20枚も重ね、その上にさらに、羽毛の布団を20枚も重ねました。
お姫様は、その夜、このベッドに寝ることになりました。
朝になって、お姫様に寝心地を聞いてみると、
「ええ、とてもひどかったわ。
一晩中、寝心地が悪かったわ。
寝床の中に何が入っていたのでしょう。
固いものの上に寝たものですから、体に傷跡がついてしまいました。
本当に、ひどい目にあいましたわ。」
王子のお母様が見てみると、お姫様の背中には、エンドウ豆の跡がいっぱい付いていました。
これで、このお姫様は本当のお姫様だということが証明されました。
なにしろ、二十枚のマットレスと、二十枚の羽毛布団の下にあるエンドウ豆に、強くこだわるのですから。
こんなに繊細で傷つきやすい人は、本当のお姫様に違いないと、王子のお母様は満足しました。
王子は、このお姫様と結婚しました。とうとう、王子のお母様の強いこだわりと不平不満を、いちばん理解することができる、本当のお姫様を見つけたのです。
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