実写化されるかなり前から、森本梢子さん著『アシガール』が気になっていて、実写化に伴い本屋さんにズラッと列ぶ既刊の1巻~9巻を我慢できずに大人買いしてしまいました💦
さすがに『ごくせん』『研修医なな子』『デカワンコ』など名著の作者さんです。
タイムスリップものは作者が飛ばしたい時代と作者が会いたい歴史上の人物のもとにヒロインを「なぜか」偶然の力でタイムスリップし、これまた偶然に歴史に名を残す王様だの貴族だの騎士だの大名や武士の所に上手くタイムスリップして、現代の持ち物で相手を助けて寵愛を受けたり、また知られていない知識や技術でまわりをメロメロ(王家の紋章、天は赤い河のほとりみたい)にすることで居場所を得ますよね。または、重要人物とそっくりで入れ代わりをしたり(信長協奏曲)ね。しかし、作者はヒロインをそんな甘い環境に飛ばさなかった。
アシガールの主人公、速川唯は天才物理学者の弟である尊が趣味か興味で制作ってしまった満月の時しか起動しないタイムマシンを全く信用しないで起動してしまい、うっかり永禄の時代、1500年代に時を超えてしまいます。
満月の光しかない時代で敗戦し退却中の軍のただ中に落ちたヒロインは制服に足軽の軽い具足を付けたらシルエットは立派な足軽となり、ちびっこでおかっぱで高校女子とは思えない色気のない身体故に、周りから全く女だとあやしまれることなく他の足軽のおじさんお兄ちゃんと並んで退却中に、余りにもお腹の空いた唯は道端の草でも食べようかと思いつめる。
顔を地面に落とし、食べられそうな草を物色している少女マンガのヒロインとして色々ありえない唯は、草ではなく、運命の人に出会います。
この美形な青年はこのあたりの大名の羽木家の跡取り。
羽木九八郎忠清。若君です。
唯は一目惚れをして、若君にもう一度会いたい一心で次の満月の晩まで羽木領内の村で暮らします。
貧しい梅谷村で唯はこの時代における母親代わりの吉乃さんと出会い、吉乃さんの暖かい心で吉乃さんの小さな息子二人と一緒に暮らします。
この【吉乃さん】ひっかかるのが信長の側室に吉乃という女性がいるんだけど、関係あるのかな……
ともあれ戦国時代のおふくろ様は、優しいだけではなく超厳しかった。
早朝から唯を叩き起こして田を耕かせ、働かない者は食うべからずと身を持って教え、貧しい村だから助け合わなくては生きていけないと教え、「このたわけ!お座りなさい!」と説教する。
誠に頼りがいのある良き戦国の母なんです。
この先何度も唯は「たわけ者!』『おすわりなされ』と説教を受けますが、おふくろ様の愛がこもっているんですよね。好きだわ、吉乃さん。唯が女の子だといち早く気付いていても、何も言わずに支えてくれる。
唯は足軽《唯之介》として得意の陸上部の中でもトップランナーの自慢の足を使い、若君の後を走って守ろうとします。
足軽から少しずつ出世して城の厩番になって馬糞を運ぶのも我慢して健気に頑張る。
ある勝ち戦の時、若君の元に側室候補の女性が行くと知って唯は大慌て。遊女の女性に何故か好かれていた唯は、彼女により綺麗な着物を着せて貰い、短い髪にかもじをつけ、うっすら化粧をして夜の若君の元に行きます。(側室候補の娘を刀型スタンガンでやっつけて)
彼氏などいなかった唯は帷の中に敷かれた布団を見て狼狽したり、戦は勝っても負けても何故か空しいという若君に「そうですよ。人はあんな風に殺しあって死んじゃいかんですよ」と変な口調で力説し、女人に興味なかった若君の心を動かす。
お酒の入った杯を飲みほして、真っ赤な顔で「かあぁー!」と叫び、若君に男の前でそんな顔してはならぬと笑われ、風流に歌を歌わぬか、と言われたら大きな声で和歌ではなく『おお、牧場はみどり』を歌い、「………呼びかけるよ私に。ホイ!」の掛け声でついに若君は腹の底から笑い、なんと明るく面白い娘かと思う。
戦の惨さを知り、酒に赤くなるだけでなく変な顔をし、聞いたこともない面白い歌を歌う娘を若君はきにいります。
唯は若君が瀕死の矢傷を負った時には、自分の代わりに平成の世に若君を送って、弟や家族や(隣のおじいちゃん)を驚かせますが、命を取り留めた若君は、見たこともない病院やわけのわからないことを話す医者や看護師さんを見ても騒がず、聡明な若君は尊の話した未来の世界を受け入れて一ヶ月を唯の部屋で過ごします。
450年後の自身の城、黒羽城址のわずかに残る石垣に未来に来たのだと完全に理解します。
両親と弟と平和に暮らす唯が何故命をかけてまで自分を助けるのかと愛しく思い、こんな戦のない世の中にしたいと願うようになる。
逆タイムスリップという留学を
した若君は戦国の世には稀な思想を持つ人物へとなっていきます。
タイムマシンの燃料があと一回しかないと尊から聞かされていた若君は唯には秘密で現代に帰します。
でも、現代に帰って平和な世の中にいても少しも幸せじゃない。
大切な若君がいない。絶対に守ると決めた若君がいない。
もうタイムマシンは燃料の宇宙線が貯まり、動かせるようになるまで使えない。唯は成す術もなく過ぎていく毎日が辛くてたまらない。450年前に亡くなった人だと、生きる時空が違うとわかっても恋心はどうにもならない。
尊はそんな姉を見ていられず、何とかあと二回分ようするに往復できるだけの燃料を確保する。
唯は止める家族に「帰らなくても心配しないでね。だって、そういう時は、ほらぁ、私、若君と結婚してるかも」と親なら「この馬鹿娘~!」と叫びそうなセリフを言いながら、450年の時を再び超える。
胸が潰れそうな思いで帰した唯がまた戻ってきた(しかも忠清と松丸家の姫、阿湖姫(可愛いし生活も良い)との縁談を邪魔しに)。
初めは怒った若君も唯の気持ちと覚悟を知ると、唯を妻に娶ると抱きしめる。
唯は天にも昇る気持ちだけど、「戦だけは奥さんになってもついていく。私の願いは若君と結婚することじゃなく、若君を守ること。もし奥さんは戦に行けないなら結婚という形式にこだわらない」と泣きながら訴える唯に若君はわかったと答える。
きっと戦のない世界をほんの数年、いや十数年でいいから作りあげて、唯と唯の産む二人の子供達と未来で見たような生活を送ろうと決めたんでしょうね。
ですが、時代はそんな二人の願いなど無視して大河のように流れて行く。
羽木の宿敵高山の後ろに織田信長の影が。
3千人の鉄砲隊に羽木は僅かな鉄砲隊と弓矢で応戦しなければならない。
婚礼をあげるはずだった夜に、絶体絶命の危機。
唯と若君の恋は…
以上、大まかすぎるあらすじです。ファンの方に怒られそうな程、人物も話もはしょりました。
興味のある方はぜひお手に取って読んでくださいね。
作者らしい最後を用意しているとのこと。
コミック派なので、次巻が楽しみです。
すみません。ドラマは見てないんです。
読んでくださりありがとうございます。
今日は来月夫の誕生日なので、プレゼントを買いに行ってきます✨
紅葉のライトアップ点灯式にも行かなくちゃ。