八咫烏シリーズは以前もご紹介しましたが、目下私がハマっている和風ファンタジーです。
著者の阿部智里さんは現役の早稲田大学大学院の学生さん。
2012年史上最年少の二十歳で松本清張賞を受賞なさいました。
デビュー作
『烏に単は似合わない』以来
『烏は主人を選ばない』
『黄金の烏』
『空棺の烏』
『玉依姫』
を毎年一冊ずつ刊行し、今夏
『弥栄の烏』で第一部を堂々完成させました。
『玉依姫』と『弥栄の烏』は文芸春秋のハードカバー
『単から空棺』までは文春文庫で発売中です。
相関図
各巻によって語り手(主役)が違うのですが、シリーズを通してのヒーローは真の金烏である若宮こと奈月彦。超絶美青年。
準主役が若宮を護る雪哉。彼は人気ありますね。最初は生意気な少年なんですが、最後には知略と武力を併せ持つ若宮の最大の味方の参謀役(総参謀長.参謀総長)にまで登りつめます。
ヒロインは若宮の妻で桜の君の尊称を持つ浜木綿。若宮とは幼いころ悪友だった彼女は美しく凛々しい女性になり、若宮のためには自分の気持ちを殺してでも尽くせる強さも持ってます。
準ヒロインは西家の姫、まそほの薄。絶世の美女で若宮の妻になりたかったけど、様々な事情からまそほは浜木綿の女房として彼女を支えます。少し男っぽい浜木綿と女らしいまそほは親友です。
『玉依姫』と『弥栄の烏』はセットで同じ内容を違う視点で描いた作品です。
八咫烏とは何か。八咫烏の神である山神とは何か。烏たちを襲う猿と八咫烏の関係は?シリーズの始めから引かれた伏線を回収しながら、八咫烏を描いた全くの異世界ファンタジーかと思っていたら、『黄金の烏』で人間世界とどうやらどこかで繋がっているらしいことが明かされ、猿と烏はいずれ闘わねばならないと読者にワクワクさせます。
ですが、『玉依姫』で初めて山神が現れ、山神を産み育てる巫女=玉依姫が人間世界の少女から選ばれてきたという歴史が語られる。
猿と八咫烏は玉依姫と共に山神に仕える幸せな何百年という歴史があった。それがいつしか歯車が狂って、ついに百年前、八咫烏の長当時の金烏が山神の住む「神域」と八咫烏たちがすむ「山内」を封印して神域に通じる禁門を閉じてしまった。
だが、ついに閉じられた禁門を奈月彦は開かねばならない状況に陥る。
奈月彦がみた山神はまるで化け物のようだった!
その化け物のような姿をした山神を育てるためにまだ高校生の少女が人身御供として捧げられる。
彼女はどんな選択をするのか。
八咫烏と貿易をしている天狗の長大天狗の潤天は八咫烏たちと違い、人間界で人間として仕事もしているし、もう何が何やら。
けど、大天狗さんのキャラ好きです。
『弥栄の烏』では、もっと謎が明かされて行きます。
山神の話は一応の終わりを迎えますが、猿と八咫烏の謎は残ります。真の金烏は初代からの記憶を継承して生まれてくるのですが、若宮奈月彦にはその記憶がまるでない。
なんとか百年前の奈律彦の記憶は戻ったけど、それ以前はまるでわからない。
たった一人生き残った猿の長は「わたしだけがそなたの本当の名前を知っている。その名前を取り戻せばそなたの記憶も戻り、山神がこの山にやってくる前の、この山の神だった八咫烏の神性を取り戻し、八咫烏たちは生きていけるやもしれぬ」と話し、名前を知りたければ地面に平伏し接吻し、猿に許しを請えと命じます。
他に方法のない奈月彦は先祖が猿にした仕打ちに青ざめながら謝罪しますが、猿はついに秘密を語ることをせず剣で胸を付き自害します。その時、猿は笑いながら真の姿に戻っていきます。
猿は美しい長い黒髪を持つ女神でした。
猿と共にこの山を統治していた八咫烏の長も女神だった。
山神のいない山。真の名前がついにわからなかった奈月彦が治める山内はどんな崩壊を迎えるのか。雪哉は全ての秘密ごと奈月彦を護って差し上げるから奈月彦は民に何も言うなと言われ、悩みますが他に選択肢はありません。山内がいずれ崩壊するのを知りながらも雪哉は民衆の前で高らかに「山内よ 弥栄なれ!」と叫ぶのです。
胸が痛みます。
若宮が金烏として即位し、奈月彦と浜木綿の間には美しい姫宮が生まれます。紫苑の宮と呼ばれる姫宮は山神が来る前に山を治めていた女神の生まれ変わりかもしれません。
表紙の女性は、単を着ていないから太古の八咫烏の女神か、成長した紫苑の姫宮でしょうか…?
雪哉は美しい姫宮の笑顔をみて、この1年流したこともない涙を流しました。
雪哉の孤独も悲しみも怒りも全て包みこむような優しい笑顔を見せた紫苑の姫宮のために雪哉は生きていくのでしょう。
ざざっと書いてしまい、サッパリわからない方ばかりですよね。
すみません。
是非、一読をオススメします。
『単は似合わない』『主人を選ばない』はいわば登場人物の紹介と山内とはこんな世界ですよ、という導入部分です。
事が動きだすのは『黄金の烏』から。
全寮制男子高を描いた『空棺の烏』も後半大きな出来事が起こります。
『玉依姫』でちゃんと何が起こったか説明があるので、序章で止めず読み続けてください。
『弥栄の烏』を読んだあなたは、もう一度『烏に単は似合わない』から読み直し、この世界を存分に楽しむはずです。
読み終えると日本の神や神事に詳しくなり、調べたくなるかもしれませんね。私も古事記を読んだり、祭をしらべたり、神様の名前や神社を調べました。
日本の神話をファンタジーの材題にした阿部智里さん。
大好きな世界なので、第二部も楽しみにしています。
暁という名の朝顔
読んでくださりありがとうございます。
著者の阿部智里さんは現役の早稲田大学大学院の学生さん。
2012年史上最年少の二十歳で松本清張賞を受賞なさいました。
デビュー作
『烏に単は似合わない』以来
『烏は主人を選ばない』
『黄金の烏』
『空棺の烏』
『玉依姫』
を毎年一冊ずつ刊行し、今夏
『弥栄の烏』で第一部を堂々完成させました。
『玉依姫』と『弥栄の烏』は文芸春秋のハードカバー
『単から空棺』までは文春文庫で発売中です。
相関図
各巻によって語り手(主役)が違うのですが、シリーズを通してのヒーローは真の金烏である若宮こと奈月彦。超絶美青年。
準主役が若宮を護る雪哉。彼は人気ありますね。最初は生意気な少年なんですが、最後には知略と武力を併せ持つ若宮の最大の味方の参謀役(総参謀長.参謀総長)にまで登りつめます。
ヒロインは若宮の妻で桜の君の尊称を持つ浜木綿。若宮とは幼いころ悪友だった彼女は美しく凛々しい女性になり、若宮のためには自分の気持ちを殺してでも尽くせる強さも持ってます。
準ヒロインは西家の姫、まそほの薄。絶世の美女で若宮の妻になりたかったけど、様々な事情からまそほは浜木綿の女房として彼女を支えます。少し男っぽい浜木綿と女らしいまそほは親友です。
『玉依姫』と『弥栄の烏』はセットで同じ内容を違う視点で描いた作品です。
八咫烏とは何か。八咫烏の神である山神とは何か。烏たちを襲う猿と八咫烏の関係は?シリーズの始めから引かれた伏線を回収しながら、八咫烏を描いた全くの異世界ファンタジーかと思っていたら、『黄金の烏』で人間世界とどうやらどこかで繋がっているらしいことが明かされ、猿と烏はいずれ闘わねばならないと読者にワクワクさせます。
ですが、『玉依姫』で初めて山神が現れ、山神を産み育てる巫女=玉依姫が人間世界の少女から選ばれてきたという歴史が語られる。
猿と八咫烏は玉依姫と共に山神に仕える幸せな何百年という歴史があった。それがいつしか歯車が狂って、ついに百年前、八咫烏の長当時の金烏が山神の住む「神域」と八咫烏たちがすむ「山内」を封印して神域に通じる禁門を閉じてしまった。
だが、ついに閉じられた禁門を奈月彦は開かねばならない状況に陥る。
奈月彦がみた山神はまるで化け物のようだった!
その化け物のような姿をした山神を育てるためにまだ高校生の少女が人身御供として捧げられる。
彼女はどんな選択をするのか。
八咫烏と貿易をしている天狗の長大天狗の潤天は八咫烏たちと違い、人間界で人間として仕事もしているし、もう何が何やら。
けど、大天狗さんのキャラ好きです。
『弥栄の烏』では、もっと謎が明かされて行きます。
山神の話は一応の終わりを迎えますが、猿と八咫烏の謎は残ります。真の金烏は初代からの記憶を継承して生まれてくるのですが、若宮奈月彦にはその記憶がまるでない。
なんとか百年前の奈律彦の記憶は戻ったけど、それ以前はまるでわからない。
たった一人生き残った猿の長は「わたしだけがそなたの本当の名前を知っている。その名前を取り戻せばそなたの記憶も戻り、山神がこの山にやってくる前の、この山の神だった八咫烏の神性を取り戻し、八咫烏たちは生きていけるやもしれぬ」と話し、名前を知りたければ地面に平伏し接吻し、猿に許しを請えと命じます。
他に方法のない奈月彦は先祖が猿にした仕打ちに青ざめながら謝罪しますが、猿はついに秘密を語ることをせず剣で胸を付き自害します。その時、猿は笑いながら真の姿に戻っていきます。
猿は美しい長い黒髪を持つ女神でした。
猿と共にこの山を統治していた八咫烏の長も女神だった。
山神のいない山。真の名前がついにわからなかった奈月彦が治める山内はどんな崩壊を迎えるのか。雪哉は全ての秘密ごと奈月彦を護って差し上げるから奈月彦は民に何も言うなと言われ、悩みますが他に選択肢はありません。山内がいずれ崩壊するのを知りながらも雪哉は民衆の前で高らかに「山内よ 弥栄なれ!」と叫ぶのです。
胸が痛みます。
若宮が金烏として即位し、奈月彦と浜木綿の間には美しい姫宮が生まれます。紫苑の宮と呼ばれる姫宮は山神が来る前に山を治めていた女神の生まれ変わりかもしれません。
表紙の女性は、単を着ていないから太古の八咫烏の女神か、成長した紫苑の姫宮でしょうか…?
雪哉は美しい姫宮の笑顔をみて、この1年流したこともない涙を流しました。
雪哉の孤独も悲しみも怒りも全て包みこむような優しい笑顔を見せた紫苑の姫宮のために雪哉は生きていくのでしょう。
ざざっと書いてしまい、サッパリわからない方ばかりですよね。
すみません。
是非、一読をオススメします。
『単は似合わない』『主人を選ばない』はいわば登場人物の紹介と山内とはこんな世界ですよ、という導入部分です。
事が動きだすのは『黄金の烏』から。
全寮制男子高を描いた『空棺の烏』も後半大きな出来事が起こります。
『玉依姫』でちゃんと何が起こったか説明があるので、序章で止めず読み続けてください。
『弥栄の烏』を読んだあなたは、もう一度『烏に単は似合わない』から読み直し、この世界を存分に楽しむはずです。
読み終えると日本の神や神事に詳しくなり、調べたくなるかもしれませんね。私も古事記を読んだり、祭をしらべたり、神様の名前や神社を調べました。
日本の神話をファンタジーの材題にした阿部智里さん。
大好きな世界なので、第二部も楽しみにしています。
暁という名の朝顔
読んでくださりありがとうございます。