ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

核使用の条件 アメリカ議会の危機感

2017-11-24 11:45:49 | 日記
トランプ米大統領が北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定したことに対して、
北朝鮮は案の定、激しく反発した。北朝鮮は報道官の談話で、再指定の措置
を「我が国に対する重大な挑発だ」と非難するとともに、「米国の敵視政策
が続く限り、我々の抑止力は一層強化されるだろう」と述べ、核兵器開発を
続ける方針を改めて示した。

北朝鮮のこの反応に対して、トランプ大統領が「核には核を」で応じようと
するだろうことは、想像に難くない。自国の大統領のこの携挙妄動癖は、ア
メリカ国民も懸念するところで、「こんな男に核のボタンを握らせていいの
か」という議論が、米議会でも沸き起こっているという。

金正恩の挑発に乗ったドナルド・トランプ米大統領が命じれば、たった5分
で核兵器が発射される──。
短気で軽はずみな決断をしがちなトランプが、うっかり核のボタンを押して
しまうシナリオに、米議会が危機感を募らせている。核攻撃には議会承認を
必要とする法案の本格的な審議に入った。40年ぶりの見直しだ。
米上院外交委員会は11月14日、「核兵器を使用する大統領権限」について
公聴会を開催した。上下院を通じ、外交委員会が大統領権限を議論するの
は1976年以来だ。
この議論は長年にわたり先延ばしにされてきたと、米プリンストン大学の研
究者で核兵器の発射手順の専門家であるブルース・ブレアは言う。
「今の法律は、世界を破滅させる神のような権限を1人の人間に委ねてい
る。おかしいと気づくべきだ」と、ブレアは本誌に語った。
核攻撃を命令するトランプの権限を制限しようとする動きは、今回が初めて
ではない。米民主党のエド・マーキーとテッド・リュー両上院議員は今年
1月、議会承認なしにトランプが核を先制使用するのを禁ずる法案を提出
した。
              (ニューズウィーク日本版 11月15日)

「米民主党の両上院議員は今年1月、議会承認なしにトランプが核を先制
使用するのを禁ずる法案を提出した」と記されていることから判断すると、
法律によって禁じられるのは「議会の承認なしに核のボタンを押すこと」
と「核を先制使用すること」の両方であるように見えるが、オバマ前大統
領が提案した「核の先制不使用宣言」が見送られたことから判断すれば、
アメリカは「核の先制使用」それ自体は禁じていないと解することもでき、
したがって、法律により禁じられるのは、「議会の承認なしに核のボタン
を押すこと」だけだということになる。だから米議会は、このたび「核攻
撃には議会承認を必要とする法案」の本格的な審議に入ったのだろう。

先に私は、本ブログで、大統領による核攻撃の命令が「合法」である条件と
して、(1)それが正常な状態でなされたものである(つまり、泥酔の酩酊状
態でなされたものでなく、冷静なしらふの状態で下されたものである)とい
う条件をあげたが、客観的に大統領の精神状態が「正常(normal)」か
「異常(abnormal)」かを見極めるのは難しいから、最低限の縛りとして
「議会の承認が必要」ということにしたのだろう。議会は、大統領による核
使用の命令が合理的であるかどうか、つまり、それが国益に合致するかどう
か、という観点から、承認の可否を審議することになる。

さて、北朝鮮に対して現時点で核を使用することは、アメリカの国益にかな
うと米議会は判断するのかどうか。この国益の判断に、同盟国・日本の利害
はカウントされるのかどうか。結果を知るのが楽しみである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする