先日のことである。朝日新聞の紙上で東野篤子氏(筑波大教授・国際関係論)が次のように語っていた。
「28日の会談で明らかになったのは、やはりトランプ政権下の米国に過度な期待をかけるのは難しいということだ。この政権の不確実性は想像以上だったと、欧州は震え上がっている。欧州や日本も、いざというときに米国なしでもやっていけるように、相当に覚悟しなくてはいけない。」
(朝日新聞3月3日)
トランプ政権の不確実性、それは、この政権がやらかすことはだれも予測できないということであり、その意味で、この政権には常にリスクがつきまとうということである。
トランプがやらかすことは、なぜ予測不可能なのか。それは、トランプの思考回路が常人のものと全く異なっているからである。
べつに難しいことを言おうとしているわけではない。トランプの思考の独自性・異質性は、すべてを金銭的な損得勘定の論理(算盤の論理)で考える、ということに尽きると言ってよい。
戦争状態にある二国と交渉し、戦争を終わらせようと考えるとき、ほとんどの人は、どちらの国に〈正義〉があるか、とか、〈法〉(国際法)を犯したのはどちらの国か、といったことを考える。どういう戦争終結の形が損か得か、ーーそれも調停者である自分にとって損か得か、などとは考えない。せいぜい地政学的なリスク管理の観点から、賠償金の落としどころを考えるくらいだろう。
だからシンプルに、ーー恐ろしくシンプルに、すべてを「自分にとっての損得勘定」で割り切ろうとするトランプの発想は、だれにとっても予想外であり、予測不可能なのである。
2月28日の首脳会談で、ウクライナのゼレンスキー大統領が突きつけられたのは、まさしくこの「損得勘定の論理(算盤の論理)」にほかならなかった。まずもって〈正義〉や〈独立〉や〈矜持〉にこだわるゼレンスキーは、この予想外の椿事に面食らい、逆上してしてしまったものと思われる。
「トランプはウクライナの地下資源に目をつけている」、ーーこのことを知った時点で、ゼレンスキーは、トランプが「損得勘定の論理(算盤の論理)」を突きつけてくると予測できなかったのだろうか。
2月28日の首脳会談でへそを曲げたトランプ大統領は、「アメリカの軍事支援の有難みを思い知るがいい」と、一時的にウクライナへの軍事支援を停止するだろうが、どのみち「損得勘定の論理(算盤の論理)」にこだわる気持ちから、最後にはふたたび地下資源の権益をめぐる協定書に署名を求めてくるだろう。そのときどう対処すべきかは、今からでも考えられるはずだ。
その意味で、ありうべきこの「想定内」のチャンスに、ゼレンスキーは今度こそウクライナの生き残りをかけて、全身全霊で立ち向かえばよい。
(つづく)
「28日の会談で明らかになったのは、やはりトランプ政権下の米国に過度な期待をかけるのは難しいということだ。この政権の不確実性は想像以上だったと、欧州は震え上がっている。欧州や日本も、いざというときに米国なしでもやっていけるように、相当に覚悟しなくてはいけない。」
(朝日新聞3月3日)
トランプ政権の不確実性、それは、この政権がやらかすことはだれも予測できないということであり、その意味で、この政権には常にリスクがつきまとうということである。
トランプがやらかすことは、なぜ予測不可能なのか。それは、トランプの思考回路が常人のものと全く異なっているからである。
べつに難しいことを言おうとしているわけではない。トランプの思考の独自性・異質性は、すべてを金銭的な損得勘定の論理(算盤の論理)で考える、ということに尽きると言ってよい。
戦争状態にある二国と交渉し、戦争を終わらせようと考えるとき、ほとんどの人は、どちらの国に〈正義〉があるか、とか、〈法〉(国際法)を犯したのはどちらの国か、といったことを考える。どういう戦争終結の形が損か得か、ーーそれも調停者である自分にとって損か得か、などとは考えない。せいぜい地政学的なリスク管理の観点から、賠償金の落としどころを考えるくらいだろう。
だからシンプルに、ーー恐ろしくシンプルに、すべてを「自分にとっての損得勘定」で割り切ろうとするトランプの発想は、だれにとっても予想外であり、予測不可能なのである。
2月28日の首脳会談で、ウクライナのゼレンスキー大統領が突きつけられたのは、まさしくこの「損得勘定の論理(算盤の論理)」にほかならなかった。まずもって〈正義〉や〈独立〉や〈矜持〉にこだわるゼレンスキーは、この予想外の椿事に面食らい、逆上してしてしまったものと思われる。
「トランプはウクライナの地下資源に目をつけている」、ーーこのことを知った時点で、ゼレンスキーは、トランプが「損得勘定の論理(算盤の論理)」を突きつけてくると予測できなかったのだろうか。
2月28日の首脳会談でへそを曲げたトランプ大統領は、「アメリカの軍事支援の有難みを思い知るがいい」と、一時的にウクライナへの軍事支援を停止するだろうが、どのみち「損得勘定の論理(算盤の論理)」にこだわる気持ちから、最後にはふたたび地下資源の権益をめぐる協定書に署名を求めてくるだろう。そのときどう対処すべきかは、今からでも考えられるはずだ。
その意味で、ありうべきこの「想定内」のチャンスに、ゼレンスキーは今度こそウクライナの生き残りをかけて、全身全霊で立ち向かえばよい。
(つづく)