国境で溺死した父娘写真、トランプ移民策に非難の声
[マタモロス(メキシコ) 26日 ロイター] - メキシコと米国の国境を流れるリオグランデ川で米国に不法入国を試みて溺死したエルサルバドル人父娘の悲惨な写真が公開され、トランプ米大統領の移民政策を巡る政治的論議を巻き起こしている。
エルサルバドルを脱出した25歳のオスカル・アルベルト・マルティネスさんと、2歳になったばかりのアンジー・バレリアちゃんは、米国での亡命申請を願っていた。父娘がうつぶせになって浅瀬で浮かんでいる写真が公開されると、中米諸国からの難民・移民の窮状に改めて注目が集まった。
2020年米大統領選における民主党候補指名争いに名乗りをあげているバーニー・サンダース上院議員は、この写真について「非常に痛ましい」と述べ、トランプ大統領による移民弾圧がこのような死を招いたと批判した。
「亡命申請をますます困難にするだけでなく、申請した家族を分断するトランプ政策は、残酷で無慈悲であり、こうした悲劇を招いている」とサンダース氏はツイッターに投稿した。
一方のトランプ大統領は、移民の亡命を促している法律の「抜け穴」をふさごうとする米政府の努力を、民主党員が妨害している、と反撃した。
「彼らが法律を修正していれば、こんなことにはならなかった。押し寄せた人々はリオグランデ川を通り抜けている」「人がどんどん来ないよう、簡単に修正できる。そうすれば人々が死ぬこともない」とトランプ氏は報道陣に語った。
トランプ政権による不法移民の取り締まり策にもかかわらず、今年中米諸国から米国に達する移民数は史上最多となる見込みだ。その多くは貧困、干ばつ、主にギャングによる犯罪的暴力などから逃れようとする人々だ。
米国の国境警備当局は、今年既に66万4000人をメキシコ側の国境沿いで拘束。これは去年と比べて144%の増加だと国境警備当局のブライアン・ヘイスティングス氏は語る。「システムはパンク状態だ」と同氏は語った。
移民が死亡する事態も珍しいことではなく、犯罪者による暴行の被害に遭ったり、不安定なリオグランデ川の流れや、砂漠の暑さに倒れたりすることもある。
国境警備隊によれば、2018年に対メキシコ国境で死亡した移民は283人。人権活動家は、全長3138キロの国境沿いにある荒野などで死亡した移民は発見されないため、実際の数字はもっと多いと主張している。
押し寄せる移民に対処するため、米政府はここ数年、「メータリング(制御)」と呼ばれる制度を導入。これにより、通関手続き地点で1日に処理できる人数に上限が設けられ、順番を待つ人々が国境付近の危険な町で数週間以上過ごすこととなった。
その結果、多くの移民たちが不法に国境を越え、米国で自らを当局者に引き渡して、亡命申請しようとしている。亡命申請に向けたアクセスが制限されたことで、移民は地下ルートなど別のルートを探ることを余儀なくされ、危険な状況に追い込まれている、と移民の人権を訴える活動家は警鐘を鳴らす。
メキシコ・タマウリパス州移民管理局のエンリケ・マシエル氏によると、写真に写っているマルティネスさん一家は、メキシコのマタモロスと米ブラウンズビルの間にある通関手続地で順番待ち名簿に登録しないとならないと伝えられた後、川を渡ることを決断したという。
川岸の泥の中に突っ伏したマルティネスさんと、父親の首に力なく腕をかけた幼い娘の写真は、ソーシャルメディアで世界中に共有された。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、今回の写真を2015年に地中海で溺死し、トルコの浜辺に流れ着いたシリア難民のアイラン・クルディちゃんの写真と比較している。この写真も当時、欧州で大きな反響を呼び起こした。
アイランちゃんの写真と同じく、今回の父娘の写真もまた、このような衝撃的な写真を公開することの是非が論じられた。一部のコメンテーターは、写っているのがヨーロッパ人もしくは米国人だった場合、欧米メディアは掲載しないのではないかと批判している。
アリゾナ州に拠点を置く人権団体、コリブリセンター・フォー・ヒューマンライツのロビン・ライネケ氏は、このような写真使用は、国境での死亡防止にはほとんど、もしくは全くつながらないと指摘する。
一方、国境で命を落としている移民の実態を人々に直視させるために、写真の公開は正当だとする向きもある。
「大変悲しいことだが、これは本当に必要なことだ」。行方不明になった移民の捜索活動を手掛けるボランティアグループをサンディエゴで立ち上げたラファエル・ララエンザさんはそう語る。
多くの国々はこれまで、移民を寄せ付けないためのフェンスなどを設置しており、欧州連合(EU)や米国は隣国に対し、移民の流入数を制限するよう要求してきた。
トランプ大統領は、メキシコ国境からの不法移民の流入が止まらないのであれば、新たな関税をかける考えを示している。
過去10年間で最多となる移民が国境に押し寄せる中で、どちらの国も移民収容施設において適切なケアを提供できていない。米国側の施設では子どもたちが数週間にわたり十分な食料を与えられず、劣悪な衛生状態に置かれている、と移民弁護士は指摘する。
【 所 感 】
そもそもとして、生まれ育った国を捨て、何故、他国へ移住するのか。
その理由としては、記事中に貧困や治安の悪化、気候変動といったことが挙げられているが、本当にそうなのだろうか。
考えるに、言葉も文化も異なった国へ移住するためには二つの条件が必要となります。ひとつめは移住するための勇気と覚悟です。ふたつめは絶対的な安定が確保されていることです。そのどちらかを達成していれば、移住を決断することに何ら躊躇することはないでしょう。
なにより、個人というよりも集団で移住するのですから、さらに心強いと思えるのです。
さて、今回の移民者が死亡するという当該記事については、「移住の自由を妨げるものは何があっても許さない」という強い意思が働いているような気がするのです。さらにいうと、年間283人もの死者が出ているにもかかわらず、何故、移民という危険な橋を渡ろうとするのか、そして何故、移民を食い止めようとしないのか、が最大の焦点となってくると思われます。
中南米地域の事情というのはまったくもって知る由もありませんが、移民を受け入れる側であるアメリカの姿勢については、自国民の生命・財産を守ることが第一であり、強力な体制でもって移民を受け入れようするは至極真っ当なことです。しかしながら、流出する側であるメキシコ政府などは全くの知らんぷり。
マスコミや人権活動家などもそうですが、全ての悪は現在のアメリカ政府なんだという認識で一致しているところに、何やら得体のしれない恐怖を感じてしまうのです。それは「裕福なものが貧しい人を助けるのは当たり前」であったり、「人間の生命は地球よりも重い」であったりなど、いわば白人特有の博愛精神の押し付けともいいましょうか…。
しかしながら多くのアメリカ国民は、こうした押し付け行為にはうんざりしているはずであります。なぜなら、これまで長年にわたり数多くのアメリカ人の血が、世界中で流されてきたのですから。
トランプ大統領がいう「自国のことは自国で決めろ(守れ)!」
まさに、アメリカ国民の悲痛な叫び声なのかもしれません。
(最新のトランプ大統領のツイッターです。)
All Democrats just raised their hands for giving millions of illegal aliens unlimited healthcare. How about taking care of American Citizens first!? That’s the end of that race!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2019年6月28日
〔訳〕すべての民主党員は、何百万人もの不法な外国人に無制限の医療を与えるために手を挙げた。まずはアメリカ市民の面倒を見てみてはいかがですか!?レースは終わり!