昨年、米大統領選が行われた結果、ドナルド・トランプ氏が敗れ、なんとかバイデン氏が新しい大統領となったわけだが、多くの米国人は選挙結果に納得することができず、今尚、トランプ氏の復権を願っている…。
これまで米国といえば、「自由の国・アメリカ」や「アメリカン・ドリーム」などとわが国では囁かれ、現在においては「経済大国」「軍事大国」「同盟国」といった感じで、戦後日本社会にとって、とても繋がりの深い国家のひとつともいえる。
しかしこれは表向きな米国の顔であって、実態としては世界最大の「社会実験(または研究)国」として、これまで様々な社会実験および研究が為されてきたわけであるが、米国に関しての社会科学的な資料などが、他の国よりも圧倒的に多く発表されていることが、それを裏付けるものと言ってよいだろう。
さて、そんな世界最大の社会実験国である米国だが、今回のいわゆる「トランプ現象」においても、そんな『社会実験がもたらした産物』であるということを忘れてはならないと思い、少し考えを纏めてみようかと思う。
■ なぜ多くの米国人はトランプ氏を選択したのか?
トランプ氏といえば、「アメリカ・ファースト」を掲げて前回の大統領選に出馬し、マスメディアなどが全力で支持をしてきた民主党のヒラリー・クリントン氏を破った記憶は新しく、まさに米国民が自らの手で勝ち取った大統領選だった。
さらにトランプ氏は、偏向報道するマスメディア対策として、SNSなどを駆使することで直接的な形で情報を発信し、米国人のみならず世界中の人々からも高い支持を得たのであった。
これほど世界中の人々が期待を寄せたトランプ氏だが、なぜ、米国人はトランプ氏を大統領に選ぶことができたのか?
我々日本人からみれば、『愛国心』いうのは "保守" というよりも "右翼" という印象があり、「自分は愛国者だ」と表明する日本人は非常に稀である。しかし、米国人は「自分は愛国者だ」と堂々と表明する人が多く、しかもこれまでの西洋的イデオロギーの "右翼" ということではなく、「純粋な愛国者」というのが私の見方である。
『純粋な愛国者』とは、祖国を想うことに左右も上下(=格差)もないということを意味しており、このことは、左派が主張する移民受け入れやグローバル化などに対抗するという意志と、右派が主張する積極外交・積極軍事行動などにも対抗するという意志が働いており、「祖国が危機に瀕する政策は絶対に受け入れない」とする考え方なのだろうということである。
当初、過激そうにも思えたトランプ氏だったが、彼の純粋な愛国心を象徴する目玉政策として最も印象的だったのが、紛争地における米軍兵の撤退…、と、これに尽きると思うわけであり、トランプ氏こそが真の平和主義者であるということが立証された瞬間だったともいえ、まさに、純粋な愛国者の米国人とトランプ氏とが意気投合して叶った、前回の大統領選だったような気がするのである。
■ 純粋な愛国心はどこから来たのか?
では、純粋な愛国心についてさらに深く考えてみようと思うわけであるが、まず米国人といえば、(個人的主観で申し訳ない)若いころに感じた「粗暴で残忍、だけど格好良い…」だった米国人がいつしか「優しくて清楚、しかも真面目…」に変わってしまっていたのである。
なぜ、このように劇的に米国人は変われたのか?といろいろ自分なりに調べていくうちに一つの答えが見つかったのである。それは、レーガン政権(1981年~1989年)にまで遡る。
レーガン政権が発足するまでの米国社会というのは、荒れに荒れまくっていた時代であり、特に、子どもや若者を取り巻く社会(特に教育環境)がこうした荒んだ社会の元凶となっていた。そこでレーガン大統領は教育改革を実施すべく、1983年に発表した『危機に立つ国家』が米国内で大反響を呼び、1985年に教育長官に任命したウィリアム・ジョン・ベネット氏が基本的な改革案を作成し、以降の政権がこれを継承し米国社会は変化していくのであった。
特に『危機に立つ国家 』には、わが国の教育勅語にある十二の徳目を参考としている点についていえば、冒頭で述べた現在の米国人の印象として「優して清楚、そして真面目…」と感じたことに深く納得させられたと同時に、米国人の「純粋な愛国心」に対する違和感というものを全くといって覚えたことがなかった…、ことを振り返り考えてみた結果、また一つ確信に変わったことが…。
そ・れ・は・・・
今から70年以上も前、共に多くの死傷者を出す熾烈な戦いを味わった者同士ではあったが、敗者であるわが国の良心的な部分を自国の子ども教育に利用していただけたということは、実に喜ばしいことであり、さらには、現在は亡き先人たちの意志というものが、太平洋を横断した大陸の人々の心の中に宿っているということに、言葉では言い表せないほどのうれしさである…。
ただ、こうした教育改革も所詮は社会実験の一環でしかなく、今後、戦前日本人を悪者扱いしてきた連中からの弾圧や嫌がらせなど、愛国心ある米国人たちへの風当たりが強くなることが予想されるのである。
つづく・・・