前に、iPhone4のリーク画像が出たときに、私も縁まで張り出すガラスを批判しました。
一般的な工業デザイナーの思想で・・・・
さて、ギズモの記事 「いいです! すばらしい問題提起」
機能美はどこへ行った? iPhone 4のデザインを考える
iPhone4はデザイン的に失敗である。 理由は、おおむね以下の2つです。
・ガラス素材を使ったことで、壊れやすく傷が付きやすい
・アンテナの位置で、持ち方によっては受信感度が下がる
ガラス素材で作る必要はない。電波を悪くする構造的な欠陥はデザインとして失敗。
と言うことです。
この記事で、電波問題は、将来的にソフトで解決できなければアップルの設計ミスとなるでしょう。
理由は、「機能そのもの」なので、論理的な判断が出来るからです。
さて、デザインそのものを語る場合に、ラムス氏の法則を取り上げています。
良いデザインは革新的である
良いデザインは製品を実用的にする
良いデザインは美的である
良いデザインは製品を理解しやすくしてくれる
良いデザインは出しゃばらない
良いデザインは誠実である
良いデザインは恒久的である
良いデザインは細部にいたるまで必然性がある
良いデザインは環境にやさしい
良いデザインは最低限のものである
その通りかもしれませんが、これは、一つの意見です。
工業デザインの歴史は、たった90年です。
法則なんて、工業デザインの神に失礼です。
ですから、これは、「ラムス氏のデザイン方針」と解釈するべきです。
とはいうものの、工業デザイナーと名乗るほとんどの人が、この落とし穴に落ちて、この様な事が正しいのだと主張する。
井の中の蛙です。
そして、これは、工業デザインの進化の足を引っ張る「悪しき井」なのだと思います。
私は昔、ある著名なデザイナーデザインしたハサミについてプレゼンテーションを聞いたことがあります。
これがかなり直線的で、持つと指に食い込み痛いのです。
そして、「人間工学的に痛くて使いにくいのでは」と質問され、そのデザイナーは、「切られる紙も痛いのです」 と答えました。
10年近く、私はこの話を笑い話としてきましたが、最近は違います。
機能的であることが本当に優れたデザインなのだろうか?
iPhone4に飛びついて買う人たちは、少なくとも
「落としたりしないように、だいじに使うでしょう」
「手に持っても、ガラスの扉にぶつけないように歩くでしょう」
「めんどくさくても、いつも布できれいに拭いているでしょう」
「電波問題は、アップルから専用シールが配布されることを信じているでしょう」
ギズモの記事で引用されている某有名腕時計会社のデザイナーは、利用者にだいじに使ってもらえない製品をデザインしていたのでしょう。
歴史を刻む工業デザインは、
それまでのデザイン法則と呼ばれる呪縛から解き放たれたときに生まれる。
私はそう思います。
若きデザイナーよ「井に落ちるな」デザインの世界は始まったばかりで先は長い
ギズモの記事は、一つの意見として記憶にとめ、
なぜAppleが出す製品がこんなにも魅力的なのか、本質はそこにあるとおもいます。
そう、何故、あなたの会社では、アップルみたいな製品のデザインが出来ないのか、いや許されないのか?
これから、夏です。
近所の子供が、アサガオを種から育てるでしょう。
種から芽を出し、ツルを使い上方へ葉を伸ばし、やがて花を咲かせます。
これが歴史の中で完成された優れたデザインです。
たった90年の工業デザインの歴史で、アサガオを超えられたデザインは無いのです。