【社説②】:「闇バイト」強盗 背後にいる首謀者の解明急げ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:「闇バイト」強盗 背後にいる首謀者の解明急げ
SNSを通じて集められた「闇バイト」の若者らによる強盗事件などが後を絶たない。凶悪犯罪の連鎖を断ち切るには、背後にいる首謀者の摘発が欠かせない。
警察庁によると、闇バイトの若者らを使った強盗や侵入窃盗事件は、この2年間に22都道府県で計70件起きている。154人が摘発されたが、大半は末端の実行犯で、犯罪を指示したメンバーの実態は十分に解明されていない。
東京・銀座の高級時計店に5月、仮面姿のグループが押し入った事件では、16歳の少年を含む実行犯4人が逮捕された。暴力団関係者から金銭を要求されていた1人が強盗を持ちかけられ、知人らを誘って犯行に及んだという。
指示役から携帯電話などで襲撃する店や方法を伝えられ、言われるままに事件を起こした。実行犯の1人は裁判で「組織が絡んでいて逃げられないと思った」と述べており、背後に首謀者グループの存在があるとみられている。
闇バイトに応募した若者は「捨て駒」にすぎない。指示役や首謀者を突き止め、逮捕しない限り、同様の事件はなくならない。
昨年から続いていた広域強盗事件では、「ルフィ」などと名乗る指示役とみられる男3人が逮捕された。フィリピンを拠点に、秘匿性の高い通信アプリを使って犯行を指示していたという。
逮捕の決め手は、海外のアジトを割り出し、最新のデジタル鑑識技術を使って指示メッセージの復元に成功したことだ。
海外警察との連携や、デジタル解析能力の向上が、今後一層、重要になることは間違いない。民間とも協力し、最先端の技術を身につけた人材を増やしてほしい。
銀座の事件は、「ルフィ」らの逮捕から3か月後に起きた。銀座の指示役は別にいたことになる。相次ぐ強盗事件には、複数のグループが暗躍しているのだろう。
闇バイトは従来、特殊詐欺の実行犯として利用されてきたが、防犯対策の進展で収益が減ったことで、手っ取り早い方法として強盗が増えたとも指摘されている。
被害者が襲われて死亡したケースもあり、事態は深刻だ。首謀者の摘発を急がねばならない。技術面や法制度上の課題を洗い直し、早期に対策を講じるべきだ。
闇バイトは「高額報酬」をうたっているが、実際には、実行役が報酬を受け取れず、しかも逮捕後は厳罰が待っている。安易に応募する若者らに、いかに割に合わないかを認識させる必要がある。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年10月29日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。