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ミントの時限爆弾  -売った土地が10年後に帰ってくる-

2005-08-29 | 会計・株式・財務
週末ネタ探しにネットサーフィンをしていましたら「民間都市開発推進機構」という団体のホームページにたどり着きました。

ここは「民都」(みんと)というらしいのですが、事業概要などを読んでるうちにミントの香りというよりは、胡散臭さを感じてきました。

中でも注目したのが、「土地取得・譲渡業務」です。
目的は「民間都市開発事業の用に供される見込みの高い、都市部の低・未利用地を先行的に取得し、当該事業を施行する者に譲渡する」とのこと。
これではさっぱりよく分かりません。


そこで、不動産に詳しい知人に聞いたところ、次のような答え。
「企業が処分に困った(含み損のある)土地を民都に買ってもらう。しかも売主はその土地を引き続きタダで利用できる。」
おいしい話じゃありませんか。
と思ったら、しっかりウラがありました。
「10年以内に、それまでの固定資産税、金利を上乗せして買い戻さなくてはならない」のです。


なんてことは無い、本質的には金利後払いの不動産担保金融ではありませんか。


民都による事業見込地等の取得は平成17年3月末をもって終了しているのですが、
HPには有難いことにこの業務を通じて取得した土地の一覧がついているのです。
99物件、総額5,670億円(貸借対照表より)。
1物件 約57億円の計算です。
http://www.minto.or.jp/p-menu.html

ここでいくつか疑問が出てきました。
① まず、企業側が民都に売る時、適正な時価で売っているのか?
この段階で、(おそらくあったであろう)多額の売買損益を計上しているのか。
② 10年後、買い戻す時には金利などのコストが上乗せされるだけ、売った価額よりも確実に取得価額は上がる。地価がさらに下がっていたら、泣きっ面にハチ。
③ 万が一、①をもともと取得した時の帳簿価額で譲渡していたとしたら、最悪です。


リストに出てくる顔ぶれをみますと、「やっぱりいましたか」という企業もあったりします。
民都はここ数年の資産リストラの受け皿になっていたんですね。


でも企業が売却して10年後には時限爆弾が爆発します。
その時、買い戻せる体力が有ればよいのですが。
さながら「企業財務版のアスベスト」のようなものですね。


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【参考】 日経新聞記事 2005/8/30

[そごうに131億円支払い命令、契約条件の土地開発せず]

 2000年に経営破綻した百貨店、そごう(民事再生手続き終了)の土地を
取得した民間都市開発推進機構(民都)が、そごうの破綻で契約条件だった
再開発を実行しなかったとして土地の買い戻しを求めた訴訟の判決が29日、
東京地裁であった。
原敏雄裁判長は請求通りそごうに約131億円の支払いを命じた。


 そごうは1996年、再開発資金調達のために神戸市の駐車場用地約5500平方メートルを
約117億円で民都に売却。「10年以内に開発を行わない場合、そごうが買い戻す」などとする契約を結んだ。しかし00年7月に民事再生法の適用を申請し破綻。
01年2月、「買い戻し契約を解除する」と民都に通知した。


 判決理由で原裁判長は「契約は土地取得と代金支払いに関して、
再開発の実施前と実施後に双方が義務を負う内容だった」と述べ、
土地の管理費用を含めた請求額全額の支払いを命じた。
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1 コメント

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みんと、民都、ミント (温故知新)
2006-01-04 15:27:36
 民都、なつかしい響きです。小売業で不動産物件でアブナイことをやっているところは必ずやっていました。事実ですし、報道もされましたので実名をあげてもいいと思いますが、例えばマイカル。民都はまさしくミントのごとくマイカルをすっきりしゃっきりさせてくれるはずだったのですが.....。

 8年前のマイカルの決算資料を見ながら遠い目になっている温故知新でした。

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