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会計士兼アナリストによる屈指の歴史だけがウリの会計・財務・株式・金融ブログ。異常な経済金融環境を一刀両断!できるかな?

企業価値の最大化に効果のある経営戦略とは何か?

2006-03-26 | 会計・株式・財務

 いつもご覧下さり誠に有難うございます。

さて、3月22日に(社)日本経済団体連合会が
「企業価値の最大化に向けた経営戦略」なる意見書を発表しております。 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2006/010/index.html

この意見書は財務データ、株価データ、アンケートを使って経営戦略と企業価値
との関係を実証分析している点でユニークなものだと思います。

今後の企業戦略を見るうえで1つの参考になるかと思われますので、
以下に私なりに興味深いと思ったポイントをランダムにご紹介します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

■ 「当面の経営戦略」と企業価値
 (1,650社の財務データと株価データから分析)

 ・収益力(売上高経常利益率の上昇)
 ・ 成長力(売上高の伸び)
 ・ 健全性の強化(利払い費の営業キャッシュフローに対する割合の減少)
 ・ 株主への還元(配当性向の引き上げ)

これらいずれの経営戦略も確実に企業価値を高めている。


このうち収益力強化に向けては、
 ・労働生産性の上昇
 ・一人あたり人件費の抑制
 ・有形固定資産回転率の上昇
 ・売上高の伸び
いずれの取り組みも確実に「収益力の強化」につながると。


■ 「中長期的な経営戦略」と企業価値
(会員企業306社アンケート結果と企業価値プレミアムとの関係を分析)

経団連会員306社に「他社よりも進んだ取り組み」行う分野は何か?と質問。 
その回答内容と、その企業の企業価値のプレミアム(株価が理論値よりも割高)の
関係を見ていくと、次の取り組みを先進的に行っていることが
企業価値のプレミアムに繋がっていると。  

   ・優秀な人材の育成
    ・中長期的な視点からの研究開発の推進
    ・経営理念の明確化・社内外への徹底/法令順守を含む企業倫理の徹底
    ・IRをはじめ情報開示の推進
    ・女性・障害者・高齢者などの雇用機会の提供
    ・環境負荷の軽減

一方、  
    ・執行と監督の明確な分離(いわゆる米国型コーポレートガバナンスの導入)
     ・財務報告に係わる内部統制の充実
は必ずしも株主価値の増大に繋がっていないと。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

(コメント)

①意見書では「倫理に則った経営戦略こそが、企業価値の安定的な増大に
   つながることを、分析結果は示している」としておりまして、
   経団連に加盟する大企業にとって我田引水的な結果かも。
  その点を割り引いて見て下さいね。


②収益力強化に向けての「労働生産性の上昇」「一人あたり人件費の抑制」。
  簡単に言いますけど、従業員の立場からすれば大変ですよ。  
  現在検討が進んでいると見られる「ホワイトカラー・エグゼンプション」も
 目的はホワイトカラーの残業代の削減。  

 この分析結果が、経団連加盟企業の人件費削減に理論的お墨付きを与える
 としたら悲劇ですよね。少々気が重くなりました。

 【参考の拙稿】1月28日
「残業代 貰える今が 花かもね」 -ホワイトカラーエグゼンプションの衝撃-
http://blog.goo.ne.jp/dancing-ufo/e/2e6d7872faa62f9f46eca91b423040d3


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5 コメント

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そうそう (なべや)
2006-03-27 09:59:59
 そうですね。

 「企業価値」という切り口とは少し違いますが、経営側と

従業員側とに利害対立がおこったら、その組織の目標達成

能力は低下するといえます。

 誘引の低下がメンバーの貢献意欲を低下させるからです。

 モチベーションを維持するための誘引の設定と、チーム

として効率的に共働できる人間関係の構築というのが、

企業価値と労働者の心の健康をささえるポイントとなります。

 いわゆる「米国型企業統治」ではなく、新しい日本型経営

システムです。経営者がこれに気付いているかどうかが重要。
一度 (佐藤)
2006-03-27 19:21:27
頭の中を叩き割って中を見てみたい。もちろん、経団連の方々ですから。こういうアンケートデータを使った文章を読むたびに、質問はどういう形式だったんだろうと思います。この手は概ね選択形式だったんじゃないでしょうか。ある意図を導くために選択の順番や質問を作って一定方向に数字を導き出す。よくやる手ですよね。大体が、株高、円安、原油安値安定、中国の経済活発そして人員削減で回復しただけの会社業績じゃないですか(そりゃ、あまりに乱暴だと言う声が聞こえる 笑い)。ましてや、書いている中身ときたら多少は新しい言葉を入れてるが十年以上前からの企業の社会的責任をちょっとひねっただけ。情けないことこの上ない。本当にこの人たちの中長期なんて考える力はあるのでしょうか?所詮5~6年間つつがなく、問題を起こさずにトップを勤めて、次にバトンタッチするだけの、役所官僚と何が違うのでしょうか?国内の市場を活発にし拡大するためにはどうするのかという戦略ゼロじゃないですか。国内市場では、社員=客でもあるはずでしょうに。そこも考えていない。いつまで外部要因頼りでいけるつもりでいるんでしょうか?「平成」という年号は、内平らかにして外成る。イライラして書いてしまいました、すいません。
イライラさせてすいません (dancing-ufo)
2006-03-27 21:27:51


佐藤さん



長文コメント有難うございます。



ある種の批判は覚悟しておりました。

本文に書きましたように

「我田引水」のところがある

と自覚していましたので。



コメント末尾からお察しのように

私はどちらかといえばこの分析の結果に

不快感をもっていることを

付言しておきます。











すいません (佐藤)
2006-03-27 21:37:12
dancing-ufoさんにでもなく、dancing-ufoの書かれている内容にイライラしたのでもありません。書き方が悪くて誤解をさせてしまいましたようですいません。(社)日本経済団体連合会が発表した「企業価値の最大化に向けた経営戦略」なる意見書の内容を見ていて、つい思ったことを書いてしまいました。dancing-ufoさんが、この意見書に対し批判的なのは文面から十分分かっております。本当に書き方が悪くてすいませんでした。
Unknown (marufuku)
2006-03-29 00:24:34
これ、原因と結果をすり替えてみた分析ともとれますね。つまり、収益性が良い企業→成功した結果としての大企業→成功した事業を継続する方針をとる→ステークホルダーから大きな不満が出ないように気配り、と。



これと同じような内容の本で「優秀企業の研究」とかいう本もありました。



解釈のしようによって、原因と結果は入れ替わりそうなテーマです。

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