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なー

おっさんがまだ、小さかった頃。
いつも可愛がってくれる、親戚のおばさんがいました。
一家で親戚を訪ねると、おばさんは、玄関先で出迎えてくれました。

「なー、よう来てくれたなー、ええ子じゃなー」

おっさんの両親は、父親も母親も共に、厳しい人でした。
叱られて、泣きべそをかいていると、おばさんがやってきて、
ヨシヨシしながら、慰めてくれました。

「なー、泣かんでもええがなー、ええ子じゃがなー」

・・・・ と言いながら、頭を抱きかかえ、慰めてくれました。
小さい頃にいただいた、紛れもない 「愛」 の原体験でした。

あれから、時は流れて ・・・・

親戚のおばさんだけでなく、親兄弟、お爺さんお婆さん、学校の先生、友人知人。
多くの人たちから、受けてきた愛に対して、恩返しが出来たのかどうか。
そう自問自答すると、心が曇ってしまう。

おっさんは、そんな有様で、歳を重ねてしまいました。



この3~4年くらい前からでしょうか。
おっさんは、ある独り言を呟くようになりました。
人間、歳を取れば、多かれ少なかれ、誰でもそうなっていくのでしょうか。

おっさんは、昔から、基本的に独り言の多い人間です。
例えば、TV で見たお笑い芸人のセリフなどが、ふと口を突いて出る、
そういうところがありました。

ただ、この歳になって、変わったことがあります。
ひとしきり、物思いにふけった後、
最後に必ず、こう呟くようになりました。

「なー」

振り返れば、おっさんの人生は、物事から逃げ続けてきた人生でした。
まだ何とかなる、まだ先がある、と、物事を先送りし続けてきました。
20代、30代、40代までは、それでも良かったかもしれません。

50代となった今、どうにも誤魔化すことのできない、現実が見えてきました。
自分は、このまま、寂しい人生を終えることになるのだろうか。
そんな、悲しみとも後悔とも付かない気持ちを、心中ひとしきり、噛み締めた後で、

「なー」

最後に一言、おまじないのように、こう呟きます。
そうすることで、心が救われ、顔を上げることができるようになりました。
その一言には、おっさんなりの、さまざまな思い、念が込められています。

(寂しいけど)なー」
(また頑張っていくもん)なー」
(独りでもまた頑張っていくが)なー」
(みんなみんなありがとう)なー」

最近は、個人的な物思いにふけるときだけでなく、
外で犬や猫を見かけたときも、こう言っています。

(飼い主に可愛がってもらって良かった)なー」
(可愛いが)なー」

傍目には、「一人で "なーなー" 呟いているアブナイ人」 に見えることでしょうw
でも、おっさん本人は、それで救われています。

幼少の頃、親戚のおばさんから受けた 「なー」 の愛が、
おっさんの人生を救う、おまじないを与えてくれた、そう思います。
本当にありがたいことです。


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Feel the Raindrops

アドベンチャーズ(The Adventures)という、北アイルランド出身のロックバンドがある。
80年代半ばから90年代前半にかけて活動し、その後何度か再結集するも、本格的なリユニオンには至らないまま、現在はもう活動していない。

リードボーカルの、テリー・シャープ(Terry Sharpe)
紅⼀点の女性サイドボーカル、アイリーン・グリベン(Eileen Gribben)

PV を見る限りでは、↑この2人が中心メンバーのようだ。
あと、その他5名からなるw、計7人組のバンドだった。
自分もそれほど詳しく知っているわけではなく、ほとんど Wikipedia からの引用になる。

1985年 「Theodore and Friends」

デビューアルバム 「Theodore and Friends」 は、80年代洋楽黄金期真っ只中の1985年に発表され、4曲の UK マイナーヒットを生んだ。
1988年の 2nd アルバム 「The Sea of Love」 が、UK チャート No.30 まで上昇、US でもチャートに食い込み、これがバンド最大のアルバムセールスだったようだ。

1988年 「The Sea of Love」

その後、さらに2枚のアルバムを発表して、1993年にバンドは解散。
ディスコグラフィーを見ると、UK を中心に地道な支持を獲得していた状況がうかがえる。

シングルでは、1988年の 2nd アルバムからの 「Broken Land」 が最高位 No.8 を記録。
その当時、大学生だった自分は洋楽人間を絶賛継続中だったが、その曲は聞いたことがない。
The Adventures というバンドの存在自体、基本的に知らなかった。

しかし、あの頃好んで買って視聴していた LD の洋楽ソフトの中に、1985年のデビューアルバムから出た 3rd シングル 「Feel the Raindrops」 の PV が収録されていた。
そこで描かれているショートストーリーに、当時いたく心を打たれた。
それが今でも印象に残っている。



古びた廃アパートを訪ね、物思いにふける、男と女
2人を今も苦しめる、幼い日の記憶
そんな物語の主人公を、テリーとアイリーンが演じる

仲良しのアパート仲間と、かくれんぼをして遊ぶ日々
ある日、童テリーは、童アイリーンを誘って、こっそり抜け駆け
秘密の別室に隠れ、恋心を通わせる

気付いた仲間が、2人を血眼になって探す
あいつ、どこに行った? と聞かれ、童アイリーンが告げ口
見つかった童テリーは、集団リンチでボコボコに殴られてしまう

泥と血と涙にまみれた、童テリーの顔
その恨めしげな視線を、黙ってみつめる童アイリーン
残酷なまでに傷ついた、2人の幼い心 ・・・・

あの、セピア色の苦い記憶の残る部屋で、一人追想に暮れるテリー
そこへ、あの日、自分をボコボコにした幼友達がやってきた
長い年月を経た、和解のとき ・・・・

アパートの門の外で、アイリーンがたたずむ
あの日のことを詫びるために、みんなを一緒に連れて訪ねてきた
この思い、届けと、歌う



i feel the raindrops on my head
watch the sun 'til my eyes turn red
still i can hear those things you said


思い出せば 今も 心に雨が降る
思い出せば いつの間にか 空が夕陽に染まっている
あの日 あなたが言った言葉が 忘れられない

PV が描くストーリーに非常にマッチした、センチメンタルに満ちた美しい曲だ。
幼い頃の思い出を振り返るとき、誰もが優しい気持ちになる。
それを思うことで、今がどんなに成り果てていても、人は悲しみの中で救われる。

テリーをボコボコにした悪ガキたちが、あの日のアパートにフォーメーションを組んで訪ねてくるシーンが(03分06秒~)、おっさんとしては最も感動ポイントが高い。
こういう感じの、「小さい頃の思い出」、「時のながれ」 の合わせ技で来られると、

( ;∀;) イイハナシダナー....

と、つい涙腺が緩んでしまう人は多いのではないかと思う。

過去の軋轢を乗り越えて、万感の思いで再会し、再び手を取り合う。
この PV のようなドラマチックな和解のときが、おっさんの人生にも訪れてほしい。

The Adventures - Feel the Raindrops
https://www.youtube.com/watch?v=0xLttqYk2q8
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