「ゆれる」の西川美和監督最新作。
佐木隆三氏の「身分帳」が原作。
一日の王さんのブログを読み、気になって観賞。
評価が高いだけあって人多かったな劇場。
自粛明けムードってのもあんのかね? こんなに人気なもんかな~って思って。
もしかしてヤクザが出る映画だから周りの観客も全員ヤーさんだったりとか……それはないなw 背筋が少し寒くなったりw
西川監督の作品はゆれる以外見たことなかったけど、久々に見た感想としては「腕落ちた?」って感じですかね~。
ラストがしっくり来なかった。
ゆれるのラストが思い出深いし衝撃的だったから、なんか捻ってくるのかな~と身構えてた分、あのラストは拍子抜け。
退屈はしないし面白いは面白いんだけど。映画全体に漂う緊張感というかキレというか、ずっと集中して見れる。
だからこそ終わりが難しかったんかな。それにしても安易だった気も。
どっちかつーとコメディタッチ。社会復帰というテーマはあれど重苦しく扱われてないし。
壁に立ち向かい七転八倒。仲間が徐々に増え生活が充実していく。普通に慣れ日常へ溶け込んでいく。
急展開もなかったから、このままほのぼのとした雰囲気で終わるのかなと想像したし期待もしてたのに。
てっきり元妻と電話しながらの帰り道とか、一枚取り忘れた洗濯物とか、そこら辺でエンドロールと思ってた矢先ですからね。
原作がそういう終わり方なんかも知らんが。
でも、原作が30年前で映画は現代風に脚本をアレンジしたって西川監督言ってたし。それだったらラストもどうにかして欲しかったよな~。変えた意味とは?
皮肉にしか見えない。
あれだけ生きることへのこだわりや生き様を見せてくれた三上に対する侮辱や嘲笑にしか見えない。元犯罪者が所詮何をしたとこで何も変わんないよっていう。
西川監督にそういう思惑はないとは思うんだけど、あのラストのせいで物語が何を伝えたかったのか、ボケてしまった感じあるよな。
てか、これって佐木隆三原作の代表作「復讐するは我にあり」への対抗心もあったんかね。
疑問に思うのは原作の主人公は山川って名前のはずなのに、なぜ「三上正夫」という名前になったのか。
西川監督が偶然見つけた昭和49年の新聞。東京のバーで起きた殺人事件の記事。その事件の犯人の名前を拝借したって話だが。
なんかおかしくね? 無駄な凝りや捻りのような。
忘れられた時代や人や物。その象徴として三上を出したって監督の意図も分かるんですが。それも強引なこじつけのような。
あえて著名な西口彰事件に誰も知らないか忘れた事件の犯人をぶつけて、「復讐するは~」との対比や意趣返しを狙ったんじゃないか。
まぁ、悪いとは思わないけど。だとしたらあのラストも納得できる。
「復讐するは~」に比べたら希望を持たせる内容だったと思うし。帰る場所は確かにあったんだ、という。
それでも余計だったと思うけどね。監督の野心がギラつきすぎ。ギラつきの割に投げ槍だし。なんだかな~。
でも、ラストがちょっとと思っただけで概ね満足な出来なのは確か。
多少の齟齬は気にならないくらい役者陣も磐石でしたし。
まず何と言っても役所さん。この人がいないとこの映画は成り立たない。西川監督に切り札(ジョーカー)とまで言わしめた、期待に応える仕事ぶり。
同年代のライバルと言えば渡辺謙さんになるんでしょうが、見事な独自色。我が道を行ってますよね。
この映画の役所さんは演技というか、作品の世界観に自然と馴染んでるような、見てて不思議な感覚。
「Fukushima50」での渡辺さんの鬼気迫る感じともまた違う。その違いを楽しんだり。
山本五十六と栗林忠道の違いでもあるのでしょうか?w
ただ今作のMVPは仲野太賀さんになりますかね。
なんかお父さんも役者なんでしょ? トレンディドラマに出てたとか何とか。よく知らないけど。
2世俳優と色眼鏡で見ても、この人の活躍は目を見張るものがある。
ヒイキなしで今後の成長が楽しみな若手の1人。
その他の人も手堅い配役でソツがなかった。ここら辺は監督の手腕が物言うとこ。長澤さんが浮いてたくらいですかね。
てか、あの吉澤って人は何のために出てきたんやろ?
あの人も最後に何か関わるとかあったら良かったのに。ま、いいやw
原作が平成の始まり、映画が令和の始まりということで。
30年の開きがあれど、本当にずっと昔のような気がする。別世界のようですら。
何が変わったわけでもないはずなのに。それでも時が進むにつれ人の孤立が深まってるような。
今のコロナ禍とか、まさにその象徴ですよね。飲食店が苦境に~ってニュースを見ても、そこに映ってる人達の行く末を誰も知らない。
時代が変わって何を忘れたのか。誰が死んだのか。どう生きればいいのか。
世の中便利になったのに、今ほど先が見え辛い時代もないんじゃないか。
そう思うのは俺だけか?
今の社会のもどかしさや人間の持つ息苦しさ。
人と関わり合って、苦しんで、やっと辿り着いた小さな幸せとは?
三上が最後に得たものは一体なんだったんだろう?
では、また。
Fukushima50
山本五十六