サンチョパンサの憂鬱

昼下がりのサンチョパンサ(2)……『余計なこと』と『要らんこと』…

文化は『余計な一手間』を足していく事である……。
 
直接一つの獲物を皆で食べていたのを『切り分ける一手間』、皿の上で切り分ける為の『ナイフ、フォークの一手間』、和食で言えばお箸。

そのお箸を置く為の箸置き、右手で箸を持ったまんま何かを掴む(握り箸)ことを止め、左手のひらを上にして箸を一旦預け、右手を自由にしてから(一手間)目的のものを掴む?といった具合である。

これに比して……要らんことは『要らんことしやがって』という様に『無駄でマイナスしかならない手間暇、言動、行動……』である。
『蛇足』なんてのもその典型かもね?

僕の住んでる地方は……お好み焼きがソウルフード?欠かせないアイテムである。
一見その技法は簡単に見える。シンプルな製造過程故に……旨いのかも知れない。

ある東部のお好み焼きがB級グルメで天下を取った事があった。その時期と重なる様に……街ナカのソコココにお好み焼き屋さんがオープンし始めた。

田舎テレビもグルメと称してして盛んに紹介する様になった。
『拘った店主の店』……というキャッチコピーその度リポーターが妙に『大袈裟な美味い!』を連発するステレオタイプの番組である。

お好み焼きの味を決する要素の一つにキャベツの量がある。ふんだんに使わなきゃってのは皆さん意見を一にする。

結構有名なある店で定番のそば、にく、タマゴって奴を頼んだ。僕達の他に一組しかいない。
繁忙な時間を避けたから……。

早速、三人分のキャベツが鉄板の上に大盛りの山……。ヨシヨシ……。
店員は馴染みであろうもう一組との会話に忙しい。キャベツは鉄板の熱にやられて見る見る凹んでいく。十分経過しても粉の円形は作られないまんま……。

二十分、三十分経つ頃にはキャベツは見るも無惨に濃いベージュ色になり繊維だけが残っているといった風情。

やっとキャベツが鉄板中央に。
ソコからやおら、二本のヘラの角でコンコン、コンコンと調理上全く意味を成さない『訳わからん拘りの所作』が延々と演じ続けられたのである。

遂に、フレンチの同僚だったコックがキレた。
『早く作れよ!!』、『何?ソレ?』なんの意味があって『勿体付けて演ってんのよ!!』

ソコから……悔い改めた調理人は『普通の手順で5分』であっという間に作り終えた。焦げ茶色に変色し痩せ細ったキャベツの繊維が歯に一々当たる。折角味はイケてるけれど……『拘りとやらの演出』が全てを台無しにしてしまった……という顛末。

まさしく……『要らんことしやがって!!』の典型である。

今や……街中に『拘ってる店主のお店』だらけである。
しかし、一見余計なことに見えて……『奥深い味わい』に貢献する『文化的余計な一手間』を絶えず研究、研磨しながら『真摯に向き合ってる』人間はとても少ない。

言葉は汚いけれど『ミソクソ一緒の文化評論』になっちゃいませんか?って言いたかったのです。

『外せない一手・一手間の発見』ってメチャクチャ退屈な作業を絶えず深く見詰め続けなきゃ発見出来る訳もなく……。
拘ってるんですね?……と聞いて店主が悦に入ったら……直ちに退出の程を……酷い目に合うこと請け合いですから……。

グルメにも……ボリューミィなんてゲロゲロな形而下の価値観もあるらしい。
それと対極の奥深い『染み込んでくる様な味わい』なんて形而上的な価値観もグチャグチャ……最近この国は『安易に過ぎる頑迷』を、これまた安易に拘りなんて言って『一切拘りのないマスコミ』がチャラカしてる……これ?世も末って言うんじゃないの……?
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