サンチョパンサの憂鬱

東京的文化考……

麻布十番じゃないけれど……東京タワーーが間近に見えるビルの地下に、恐ろしく客を集めるイタリアンレストランがあった。
最近全くそこへ出掛ける事が無くなったから……その店が今もやってるかは分からない……。

当時、その隣のビルでよく仕事の打ち合わせを行っていた。
イタリア人シェフはテレビにも登場して名を馳せていた。

イタリアの有名デザイナーも来日すると必ずその店に立ち寄るのだと僕をその店に連れてった男が有り難がって何度も言ってた。

その担当の男とランチ時間に何度も食事をしたけれど……パスタにせよ肉料理にせよ料理自慢の素人主婦レベルを越えるモノに当たった事はなかった。
ホールスタッフの親玉が怪しいイタリア語を駆使してオーダーを取り仕切ってたけれど……。


店内にはそのデザイナーやタレントなどの有名人の来店した時の写真がサイン入りで飾られていた。

東京を構成しているのは、大多数が偉大な田舎モンだというのはホントだと思った。
そんなクソ不味いランチを行列して待ってる人を見てると哀しくさえ感じた……。

有り難がって長い時間行儀よく待って不遜な店長の怪しいイタリア語で席に導かれて嬉しそうにしてる客達の図は、その殆どが、自分で良し悪しの判断できない人種だと物語っていた……。

テレビに映り、タレントやビッグネームが通う?……そんな要素でこの都市は踊り続ける……。
じっくりコンテンツを構築するという態度より……意気がったニイチャンに、にわか仕込みのイタリア語を叫ばせる方が手っ取り早くカネになる街だ……。

仕事の話がまとまり、打ち上げをかねて、その会社の役員が僕をその店に誘った。
僕の暗い顔を見て、察したのか、大丈夫、夜は美味いですからと言って予約した。

確かに破格の扱いだった。
個室でそのイタリア人シェフとやらの料理を食べた。
確かに昼ほど酷くはなく、『まともな料理』だった……。

僕と同行した連れの男は、トンでもなく『感動』してた。
それは、昨日……この部屋は俳優の誰々が貸しきったんですよ……と怪しいイタリア語の店長が言ったからだった。

正直……その店の料理は普通のビストロクラスだというのが偽らざるレベルだった……と思う。
その店のディナーは……ランチ程、不味くはなかったから……。

麻布、赤く浮かんだ東京タワー、有名人、そしてテレビ番組がその実力を恐ろしくかさ上げして紹介する……。


そんな……田舎モン裸踊りプロジェクト?……トンでもなくあからさまなそんな成金趣味の方法論で……今夜もこの国の首都は、何も変わること無く舞い上がっている……。
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