サンチョパンサの憂鬱

コンプレックスの心理学……同一視(同一化)(2)

コンプレックスの心理学で同一視(同一化)について前編で書いた。

報われない自分から目を逸らせる為にスターとかタレントとかアイドル、裾野は広くキャバ嬢、ホストに至るまで自分と重ね合わせて同一視する『憧れの対象』は様々である。

度を過ぎて入れ込みが激しくなった多くの人達は多かれ少なかれ…過去に酷く傷付いたり挫折したり果ては両親の愛に恵まれなかった?そんな負の体験を隠し持っている。

私ってこんなに熱中出来る対象が居るのよ!
なぁ~んて一生懸命演じるのだが?
心の中には自分を通して得る実感は皆無に等しい。

こんな人達の心の傷は深く、短い時間で『その推し活には無理が生じる』のである。
『自分の心を上げ底して』無理な熱中によって自己嫌悪感とか?強度の不安を一瞬忘れること。日常の全ての時間はその目的のために収斂する?といった強迫的心理である。


それならばソコソコの中流、上流の育ちならOKか?
所がこのパターンは緩やかに無理が生じる分、質(たち)が悪いのである。
両親が『世の中成功モデル』って奴を空気に混入させて影響力を行使し子供を穏やかに執拗に支配しているパターンである。

こんな育ち方はこの国の多数派を占めている。俗に言う『イイコ症候群』で子供達はペルソナを被り『本音たるシャドウ』を念入りにひた隠しながら育っていく。
コレも本人たる実感は得ようもなく……成長と共に無理が生じる。

いい大学を出た途端目標を見失い出社拒否症となったり、安定した職業に折角就いたのに、中年になってから『暴れるシャドウ』に翻弄され性犯罪に走ったりなぁ~んて事件が頻発している。

生き急ぎ?とも思える乱暴な推し活に走る人は……自分ではどうにも見付からない解答を、過激な逃避によって『世の中から答を出させようとしている?』ようにも見えるのである。

一方でイイコ症候群で青春を実感薄く過ごした人達は『ある日突然?』かの様にペルソナが剥ぎ取られ『自分の本音たるシャドウ』が表面化する。
自分モドキのペルソナに抑え込まれ『緩慢な自己の自殺』を強要され続けた『ホントの自分の反逆』である。

親の虐待?愛情不足?……様々に説明される『自己肯定感の破壊』だけど、その親達の強烈な不安とか?孤独が子供に対する態度として表現されているのである。
詰まり社会生活の中に人間の基本的な余裕が無さ過ぎるのである。

そうして出来上がった今のニッポンは、其々がそれぞれに対して強い恐怖と不安を抱き合っている状態……。
個として社会に向き合うとき衆人監視の状態なんだと思う。

自然界の生物は自分の怪我を徹底的に隠す。
見付かればそこを攻撃され殺されるからである。
弱い人間が群れなすのはお互いのウィークポイントのカヴァーの為なのに……。

現代ニッポンの人間は徒手空拳の裸でサバンナに立つソロプレイヤー?そんなイメージを彷彿とさせる。
皆が皆を怖がりながら皆が皆、平気なポーズを演じて笑い合いながら何とか一日をやり過ごしている。

人一人の心境を覗き見ればそれも仕方ないのかも知れないけれど……?

経済学に整合性の誤謬というのがある。
一人一人の正義が全体となって集合すると経済は疲弊してしまうというものである。
不況だから節約する。貯蓄に回してカネを使わない。すると、ものが売れないから給料は下がり尚の事不況を囲ってしまうという悪循環である。

アメリカの新自由主義を導入した小泉、竹中平蔵。派遣労働によって人間だった労働者は単なる労働力として切り売りされる様になった。

『自己責任』という徹底的な個人主義。
トコトン利己主義者とならねば勝ち上がれない社会になって久しい。どこまで行っても個人、個人の個の追求である。

そろそろ『全体の在り様(社会)』に立ち帰る時が来てるんじゃね?そんなことを書いてて思った。
みんな泣きたいのに笑っている。みんな怒っているのに笑ってる。

『嘘つきと話すと疲れる』のである。今のニッポン、皆が嘘つきだから皆が疲れているのである。なにより、嘘を付かなきゃ攻撃される社会は危険なのである。
自民党の脆弱さを目の当たりにするとき結局嘘は弱いよねって思わないか……?

本音に嘘付いた笑顔の暮らしはプラマイゼロじゃないのである。
日一日と自分の心が破壊されているのである。

『個と社会』何方に偏ってもよろしくないんだと思う。
長らく個に偏りすぎたニッポンは今、個人は窒息寸前。
『恐怖ゆえの個の正義』を集めた社会もまた瓦解し始めている。

まさに整合性の誤謬なのである……。

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