サンチョパンサの憂鬱

サンチョパンサの食卓 (14)

ティックトックで五十代のカネ持ち風なオジサマが様々なウンチクを語っているのを最近よく目にする。

学歴競争に血道を上げているのは環境のせい?
特に大きな影響を与える親自身が大抵、被支配者層の『給料を貰う立場』を生きていることによるのだと。

世の中には給料を払う側の人間と給料を貰う立場の人間がいる。貰う側の立場の人は支配される側の人間……(言い方は悪いが奴隷的立場の人だから、と彼は言った)の考え方は出来る限り待遇の良い(ギャラが多い)奴隷を目指し、子供にも目指させているのだと。

初めから人に給料を払う側の立場を想定してないのだと。
つまり、ヒラの奴隷であれ奴隷頭であれ所詮は奴隷なのだと彼は言う。
少々腹立つけれど……なぁ~るほどね?と思った。

この御仁が『幸福感・達成感』を得る方法に付いて喋ってた。
彼によると不平不満のもとは『期待値が大き過ぎること』によって発生するのだという。

自分の周りの人に、事に、状況に『大き過ぎる期待値』を抱いていることによって落胆し、腹を立てていると。
先ずは自分のことを極力正確に把握することだと。

そうすればこの程度の自分に腰を抜かすほどの幸運が唐突に起こる筈はないという客観情報がすべての未来の前提となる。
過度な期待値がない分、大抵の時間は楽しく過ぎていくだろう……と。


様々な人間がスタッフとして働いてきた。
仕事をこなせない人、役に立てない人ほど不平不満をつのらせ反抗的だったのはこの『期待値の法則』のせいだったのだ!と僕は思った。

彼は、彼女は自分の情報把握に大きな齟齬を生じさせていたのだと。
論外に動きが悪く、気も利かない。だから立ち位置から始まり尽くに周囲とハレーションを生じる?

ソレを注意されることが『その人の周囲に対しての勘違いの期待値』のせいで受け容れられないのである。それどころか私に注意するとは『何たる理不尽!』ってな受け止め方になる。

彼に、彼女に大きな勘違いさせたのは『親の育て方の問題』なんだけど、もう成人してる以上親のせいにしたって仕方ない。その勘違いから生じる結果は全て自己責任として本人が引き受けるしかないのである。

ま、お引き取り願うか?本人が怒り心頭となって辞するかとなる。
これ、スポーツと同じで有能なプレイヤーほど『自分を冷徹に俯瞰する能力』がある。自分の短所を知り尽くしているから日々弱点矯正が進むのである。

『自分は何故?報われないか?』その原因、理由を自分の中に発見する力がある人ほど進化するスピードは早い。

昨日、金融機関の知人が二人やって来た。彼等に不似合いな愚痴っぽい空気を感じたから気になって少し話した。
『君等は自分の出来得る全てを演ったのか?』と僕は聞いた。そして『まさかソレこなさずに人のせいにしてないか?』と意地悪く聞いてやった。

そして『人に負けられた人は最高に幸せな人』なのだと言った。
大抵の人間は他者との勝負の前に『自分に負けるからな』……と。自分の穴、落ち度を全てチェックしてリカバリーして自分に演らせたなら初めて他者との勝負が出来る。

それが最高に幸せなプレイヤーなのだと。自分の諦観や横着を放置したまんま疲れなんぞをエクスキューズにして、早々と他人に対する虫の良すぎる期待値の虜になってはいないか?

見込みのある五十代の男二人。だから彼等の顔には素直に『恥の表情』が浮かんだ。 
自分との真剣勝負をしないで『他人を語る人間』にだけはならない様に!……相変わらずキツイこといいますよね?とそう言って笑いながら彼等は帰って行った。

小学四年生の頃を思い出せ。今君達が出来ない理由にしている加齢臭プンプンのオッサン上司に負ける様な自分を許したか……?
もう少し『自分に対する期待値は高かった筈だ』……と追い打ちをかけておいた。

自分に対する期待値が低い人間ほど、他者に対しての期待値は高くなるのである。
ここ三十年、そんなアマチュアの大人が増え過ぎたんだと思う。

それに比してこの国のスポーツの世界は恐ろしく進化し続けている。
スポーツの世界はシンプル。『自分に対する期待値』しか頼れないのである。そのシンプルなセオリーを受けて立つ世界の若者達は目覚ましく伸びている事実。

自分との本気の勝負が出来ない人間が、いきなり他者との勝負に勝てる筈などないのである。
最近、僕の僕に対する期待値は人生史上最高に高くなっている。
従って僕は今、人生史上最高に幸せを感じている……。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「リアルなフィクション」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事