江戸川教育文化センター

「教育」を中心に社会・政治・文化等の問題を研究実践するとともに、センター内外の人々と広く自由に交流するひろば

「組み体操」の廃止・禁止・制限要請は是か非か

2016-03-15 | 随想



運動会の「組み体操」が原因の骨折・捻挫・打撲などの事故が全国で2011年以降4年連続、年8000件以上を超えていると云う。
2014年度の事故では小学校6289件、中学校1885件、高校418件で、3/4が小学校の事故である。
また骨折が2095件と(24.4%)1/4を占めている。

日本スポーツ振興センターの資料によれば、脊椎や骨盤などの重傷骨折や脊椎損傷、内臓損傷といった重度の怪我も全体の1%を占めると云う。
車椅子生活になって将来の夢や希望が砕かれ、足に金属製の装具をつけて不自由な生活して完治の目途もたたない例も報告されている。

これを受け文科省は来年度の運動会に間に合うように3月末までに、安全対策を講じるよう都道府県教育委員会に要請した。
柏市では組体操全廃を検討、大阪市は「タワー」と「ピラミッド」の禁止を決定した。
何処も検討を迫られており、江戸川区でも各学校に実態調査を依頼しているという。


私も高学年担任が多かったので、組体操の指導もやったことがある。
安全が全てなので、普段からの基礎体力作りや練習も十分とって臨んだ。
幸いにも骨折やねん挫など怪我は無かった。

一人演技から二人、三人、五人、七人と技の質を上げていく。
クライマックスに効果的な曲も取り入れ最終場面でタワーや全員ピラミッドなどで盛り上げる。
特に集団演技は体格・体形や運動能力などの違いを考慮して、適材適所に配置しないと上手くいかないことが多い。
児童生徒の希望もあり、話し合って決めていた。

ピラミッドは下の段が一番重要で安定感が無いと崩れてしまう。
どうしても体格の良い体重のある人を優先せざるを得ないが、中には三段ピラミッドで下の段は嫌だと言い張る子もいた。
目立つポジションに居たいと誰しも願うが、下の段になった女子の父親から一時間以上も電話でクレームを言われたこともあった。

しかし、全員ピラミッドの最下段の前から三番目は一番体重がかかる。
暗い状態で地面しか見えない。
だんだんと重くなり周りが見えないし、いつ崩れるか分からない。
恐怖そのものである。

私はその大変な最下段を自分で何回かやってみて、誰をどう配置するか、時間を計り完成まで何分以内とか計算してやった。
それでも練習では失敗の連続。
運動会前日にやっと成功というのが普通だった。

全員の気持ちを一つにするには、子ども達が納得できる声もかけなければならない。
誰からも見られない下の段の子ども達の恐怖感や頑張り、三段タワーのてっぺんに立つ恐怖とか、お互いのポジションを理解して演技することの意義も話して当日に臨んでいた。

見事成功すると、見ている観客や保護者は素晴らしい演技に涙し感動する。
教師も同じくやっと出来たという達成感に自己満足し感動する。
危険に晒され演技していた児童も「終わった」と云う安ど感から感動する。

しかし、それで良いのかという懸念がある。


運動会に組体操は必要なのか、あるいは学校で決めていることに危険だからという要素で文科省や教育委員会からのトップダウンで決めて良いのかという問題もある。

組体操に限らず他の教科にも口を挟んでくる可能性もありうる。

とにかく大変な労力を伴い、教師の誰しもが簡単に短期間で指導出来るものではないと思っている。

スポーツに怪我は付き物だが、運動会での怪我は別問題である。
児童の体力低下や運動能力の低下もあるかもしれないが、指導する教師側の力量不足や経験不足もありはしないか。

これらも含めて運動会のあり方や組体操の是非を学校現場で意見を交えて決めるべきことで、文科省や行政からのトップダウンで決めることではないと思っている。



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