江戸川教育文化センター

「教育」を中心に社会・政治・文化等の問題を研究実践するとともに、センター内外の人々と広く自由に交流するひろば

関東大震災と朝鮮人虐殺 (8)

2019-01-26 | 随想
30年前、私の教育実践の思惑はある意味で純粋だったが、実は、この貴重な聞き取りを授業では十分に生かせなかったような気がしている。

当時の私は、当該校の周年記念副読本づくりを進める過程で地域の様々な史実を調べていた。
地域の古老からの聞き取りや調査活動は予想以上の収穫があったのだ。

教科書にはない地域の史実から授業を組み立てたい、という思いがあった自分には格好の条件が揃ったわけだ。

関東大震災のことを記憶の限り語ってくれたMさん夫妻は、そうした私の思いを受けてのことだったのかは分からないが、可愛い二人の孫の担任に対するサービスであったのは確かだ。
他人に対して初めて語る過去の体験と記憶だったのだから・・・。


さて肝心の授業実践であるが、素材や資料は揃っていても良い授業が出来るとは限らない。
結果的に授業の出来不出来は教員の腕にかかってくるのは否定できない。
私はただただ過去の事実を伝えようとして、目の前の子どもたちを本当の意味で見ていなかったようだ・・・。

この苦い思い出を糧に、「今だからできる」可能性を追求していきたいと思う。

あれから95年経った今でも、排外主義に基づくヘイトクライムが後を絶たない。
「今は報道が正しいから、もうあんなことは起こりません」と安心して語ってくれたMさんだったが、今日の現実を知ったらどう思われるだろうか・・。

多様な価値観の共存を認めず、暴力で解決を図ろうとする気風を増長させてはならない。

大地震が引き起こした社会的事実をあらためて検証(地元地域フィールド等)するとともに、3・11以降のこの国を覆っている理不尽さや人権軽視を正す行動に繋げていきたいと思う。
それが、今は亡きMさん夫妻が熱く語ってくれたことへの恩返しと考えるからである。
(おわり)

<M>

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