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西洋神話

北欧神話の「バルドル」

2023-11-08 21:23:00 | 西洋の神話

【バルドル】
 バルドルは、光の神です。「主人」「君主」「白」などが名前の由来とされています。バルドルは、光り輝く美しい神でした。父は、神々の王オーディンで、母がフリッグです。フリッグは、物静かな賢母だったとされています。妻がナンナで、二人の息子が、調停と正義の神フォルセティです。バルドルは「ブレイザブリク」という館に住み「フリングホルニ」と呼ばれる船を所持していました。フリングホルニは、世界で最も巨大な船だったとされています。バルドルは、神々の中で、誰よりも知恵があり雄弁でした。その裁きは、公平だったとされています。しかも、優しく穏やかな性格だったので、誰からも愛されました。

【バルドルの死】
 ある時、バルドルは、自分が死ぬ悪夢を見ました。それを心配したのが、母親のフリッグです。そのため、森羅万象のものにバルドルを傷つけないように誓わせました。そのおかげで、バルドルには、どんな武器でも傷をつけることが出来なくなったとされています。神々は、試しにバルドルに向かって、様々な物を投げたり、矢を射て遊びました。それが、神々流の祝福だったとされています。

 しかし、巨人のロキだけは、その様子が面白くありませんでした。悪戯者のロキは、平和を好まず、混乱を楽しむからです。ロキは、フリッグに近き、言葉巧みにバルドルの不死の秘密を聞き出しました。狡猾なロキは、老婆に変身して、フリッグを油断させます。フリッグは、無害だと判断した「若いヤドリギ」だけには、誓いを立てさせていませでした。気を許したフリッグは、そのことをうっかり漏らしてしまいます。

 ところで、バルドルの弟のヘズだけは、神々の遊戯の輪から外れていました。ヘズは、盲目だったので、バルドルがどこにいるか分からなかったからです。ロキは、ヤドリギを矢に変え、それをヘズに渡しました。そして、バルドルの方を向け、しかり当たるように射させます。その矢は、バルドルの身体を貫き、その命を奪いました。ナンナは、悲しみのため、後を追うように死んだとされています。

【ロキの罪と罰】
 バルドルの遺体は、フリングホルニに乗せられ火葬されました。葬儀には、巨人たちも列席したとされます。フリッグは、バルドルを蘇らせるため、冥府の女王ヘルの下に俊足のヘルモーズを派遣しました。ちなみにヘルは、ロキの妹です。ヘルは、バルドルの復活を承諾しました。しかし、そこに一つの条件を付けます。それは、世界中の全てのものが、バルドルの死を悲しんで泣くというものです。フリッグと神々は、全世界にバルドルのために泣いてくれるように頼みました。ほとんどの者は、泣いたとされています。しかし、洞窟に隠れていた女巨人のセックだけは泣きませんでした。なぜなら、この巨人の正体は、変身したロキだったからです。一人だけ泣かない者がいたので、バルドルは蘇ることが出来ませんでした。しかし、ロキの悪事は、すぐに暴かれてしまいます。ロキは、罰として拘束され、蛇の猛毒を浴び続ける刑に処せられました。その罰は、ラグナロックが始まる時まで続けられるとされています。

 ラグナロクとは、世界の終わりの大戦争のことです。世界は、バルドルという光を失い、希望を失いました。世界は、一度ラグナロックによって破壊されます。しかし、バルドルとヘズは、そこから復活し、共に新しい世界を統治しました。バルドルは、一度死んで蘇る神です。そのため、イエスキリストにたとえられました。




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