映画「ヴィヨンの妻」=原作、太宰治=を見た。
原作が太宰治だから、この映画を見たのでなく、主演が松たか子だったので見たのである。彼女はハッとするような美人ではないが、私にしてみれば、なんとなく気になる女優である。
映画の内容は、酒好きで女とお金にだらしない小説家の妻としての生様を描いたものである。小説家に浅野忠信、その妻に松たか子である。
このグウタラ亭主のために、粉骨砕身、働く妻を、松たか子は、女の可愛さ、凄さを見事に演じ切ってると思った。
脇役陣には、伊武雅人、堤真一、妻夫木聡、広末涼子などの主役級を並べたが、松たか子の存在感に圧倒されて、これら脇役陣は影が薄い存在となったように思えた。
歌舞伎俳優、松本幸四郎を父に、市川染五郎を兄に持った血筋の良さが、松たか子の存在感を高めたのかも知れない。
監督は、今年の第33回モントリオール世界映画祭、最優秀監督賞を受賞した根岸吉太郎となっていた。
映画は、グウタラ亭主が別れを覚悟して家を出ていくが、松たか子の妻は、すぐ追いかけ、亭主の手を握る場面で終わった。
今風だと、別れて当然の状態なのに、夫婦の絆は、簡単に切れるものではないことを表現したかったのかも知れないし、女の凄さを表現したかったのかも知れないが、そのへんは監督に聞いて見なければ分からない。ただ、この最後のシーンで、亭主役の浅野忠信が、困ったような、嬉しいような複雑な表情をして見せたが、唯一この映画の中で彼の秀逸な表情だったと思う。
久しぶりに、私にとって見ごたえがある映画だった。