元祖・静岡県議会議員すずきさとる新聞『すずしん』web版★新しいサイトもご覧下さい!

『新発想でつくろう。豊かな人口減少社会』が合言葉。現在のブログは➡ https://suzukisatoru.net

JR北海道問題:人口減少時代にあるべき「道」の姿が問われている

2013-09-27 | 人口減少問題とDIY主義!
単なる一民間企業の問題ではない

 JR北海道の杜撰な安全管理が問題となっています。「安全軽視」「現場と本社との意思疎通不足」等のJR北海道の経営体質がその背景にあるようですが、決してJR北海道という一民間企業の問題として片付けてはいけないと思います。なぜなら、杜撰な安全管理となってしまった根本要因には、やはり、鉄道という公共交通インフラを維持することの経済的な厳しさがあり、人口減少時代に突入した日本では、鉄道会社に限らず、全国の道路、橋等の維持管理においても、多かれ少なかれ、安全を確保することが難しい状況に陥りつつあるからです。

 JR北海道は、その株式を全て国が保有しているだけでなく、国鉄民営化の際に作られた「経営安定基金」の運用益で毎年赤字の補填を行なっていることから、今でも「事実上の国鉄だ」という指摘があります。本州のJR各社と比べて民営化当時から厳しい経営が予想されたことからそうした仕組みがあるわけですが、それでも、経営改善を優先するあまり、安全管理が疎かになってしまいました。当面の対策としては、管理体制の徹底的な見直しが必要です。しかし、慢性的な赤字体質そのものを変えなければ、今後も人口減少が進み更に厳しい経営環境が予想される中で、同様の問題が将来再び起きかねないと考えます。

 便利さと安全を求めるにはそれなりのコストが掛かります。JR北海道の場合は、便利さのコストを確保するために、安全のためのコストを削ってしまいました。今後、便利さと安全の両方のコストを確保するには、具体的には、運賃の値上げ、赤字路線の廃止等を行なう必要があります。あるいは、地域にとって欠かせない路線であり赤字は仕方ないということであれば、税金を投入すべきという考え方もあるでしょう。いずれも厳しい選択ですが、今回のJR北海道の問題は、どこまで負担(運賃・税金)をしてどれだけの公共交通インフラを維持すべきかという根本的な問いを、利用者、納税者に投げ掛けていると考えるべきです。


全国共通の「道」の問題

 鉄道と同じ公共交通インフラの「道」である道路や橋梁等も、全国で同様の問題を抱えています。道路の大半は無料ですから私たち利用者はあまりコスト意識を持ちませんが、言うまでもなく、税金で整備・維持されているから無料なのです。しかしこれから更に人口が減少し高齢化が進むということは、基本的に、今後も税収は減り続け、そして道路の需要も減少することになります。加えて、昨年の中央自動車道笹子トンネル事故に象徴されるように、特に高度成長期に作られた道路、トンネル、橋梁等の老朽化対策が急務となっています。

 国や自治体では、「アセットマネジメント」として、インフラの長寿命化を進め、コストの削減や平準化に努めています。しかし、その効果にも当然ながら限度があります。人口減少が進む中で、数は減ったとはいえ今後も新規の道路整備を進める必要があるのなら、その分以上に、「ダウンサイジング」もしくは「スマートシュリンク」、つまり、通行量の減った道路の車線を少なくしたり道路そのものを閉鎖・廃止するという選択もしていかなければ、正に、JR北海道の線路がそうであったように、予算が足りず既存の道路や橋がボロボロで安全に通れないということにもなりかねません。

 「道」はあればあるだけ便利でしょう。しかし、安全性が確保されていなければ、最悪の場合に事故が起きるだけでなく、日常的にも快適に通れずかえって不便ということにもなります。乱暴な選択ですが、100本のボロボロの道路と50本のしっかり維持・舗装された道路のどちらが良いかと問われれば、私は躊躇なく50本の道路を選びます。皆さんは如何でしょうか。

 人口減少・高齢化が続く将来にわたって私たちが負担できるコストはどれ位か、そのコストの中で安全に維持できる、あるいは維持すべき必要な「道」はどれなのか、全国共通の問題として問われています。JR北海道問題もその一端としてとらえ、根本的な解決法を見つけるべきと考えます。

 お読み下さり、ありがとうございます。

  

  






最新の画像もっと見る