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6月27日一般質問の解説(1)「明るい人口減少・高齢化社会」、CLT、脱法ドラッグ規制・・・

2014-06-29 | 活発!な活動報告
 6月27日に、議員になってから4回目、今の任期中では最後となる予定の一般質問を行ないました。いつものように各質問に対する解説を何回かに分けて行ないますが、まずは質問原稿を掲載致します。長文ですがお読み頂ければ幸いです。


※質問事項


※着ているのは「ふじのくにシャツ「武襯衣(むしゃ)」」です(平成26年6月27日)。



 ふじのくに県議団の鈴木智です。分割方式で質問致します。


1.「明るい人口減少・高齢化社会」実現のための取り組みについて

(1)慎重かつ長期的な財政見通しの策定


 最初に、「明るい人口減少・高齢化社会」実現のための取り組みについてのうち、慎重かつ長期的な財政見通しの策定について伺います。

 県の当初予算案と共に示される「財政の中期見通し」は、前提として、内閣府が試算した経済成長率を用いています。これまで、内閣府の試算では、今後の経済が順調に回復・成長した楽観的なシナリオと、そうではない慎重なシナリオ等、2つ以上のケースを想定しています。過去の県の中期見通しでは、平成21年22年は、順調回復と底ばい継続の2つのシナリオを、23年から25年までは、内閣府の試算の中でも、より慎重なシナリオを前提にしてきました。

 ところが、今年の中期見通しでは、内閣府の、より楽観的な「経済再生ケース」を試算の前提にしています。基本的な考え方として、財政の見通しを試算する際には、より慎重な想定をすべきではないでしょうか。例えば、人口が殆ど減少していない大阪府は、今年の中長期試算では、内閣府の、より慎重な「参考ケース」を用いています。既に急激な人口減が始まっている静岡県は、どうして大阪府よりも楽観的なのでしょうか。

 更に問題なのは、今年の中期見通しが前提としている「経済再生ケース」は、実現可能な前提というよりも、政府が目標としている経済成長率の達成を前提とした楽観的なものである点です。「経済再生ケース」では、平成25年度から34年度の平均の実質成長率を2.1%としていますが、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計によれば、平成25年から34年の10年間で、合計440万人以上、約3.5%の人口減少と、約3.1%の生産年齢人口の割合の低下が予想される中で、そうした高い成長率の実現は実に困難であると考えます。

 ちなみに、元日本銀行副総裁で、現在、内閣府の「「選択する未来」委員会」の会長代理である岩田一政氏が理事長を務める公益社団法人日本経済研究センターが作成した「中期経済予測最終報告」では、労働力人口の減少等も反映した結果、平成23年から27年の平均の実質成長率は1.0%、28年から32年は0.9%、33年から37年では0.7%となっています。

 県には独自の将来人口推計があるのですから、政府の楽観的な見通しを鵜呑みにするのではなく、もう一つの「参考ケース」や、民間の予測も取り入れながら、人口減少や高齢化の影響も加味した、慎重かつ現実的な中期見通しを、来年度の予算編成に当たっては策定すべきと考えますが、今後の方針を伺います。

 加えて、昨年の一般質問でも述べましたが、10年以上の長期見通しも早急に策定すべきです。例えば、大阪府では、独自の「財政運営基本条例」に基づいて、20年間の中長期試算を行なっています。

 また、欧米諸国は、50年から75年程度の長期財政推計を定期的に公表しているのに対し、わが国はこれまでそうした取り組みを行なってきませんでした。しかし、今年の4月28日、財務省の財政制度等審議会が、平成72年度までの長期財政推計を公表しました。

 5年間の中期見通しであれば、楽観的ケースと慎重ケースでも大差がないかもしれませんが、10年、20年ともなれば、大きな差が出てきます。将来人口推計は正にそうです。中期見通しだけでは、将来予想される問題から目をそらし、抜本的な対策の先延ばしにつながりかねません。今後の厳しい財政状況を乗り切るには、行政サービスの縮減や増税等が避けられませんが、それには県民や企業の理解を今から得ておくことが重要です。そのためにも、長期の財政見通しを早急に策定すべきと考えますが、今後の取り組みを伺います。



(2)「明るい人口減少・高齢化社会」の実現を目指した長期ビジョンの策定


 次に、「明るい人口減少・高齢化社会」の実現を目指した長期ビジョンの策定について伺います。

 県の有識者会議の委員になる予定の増田寛也氏らによる「日本創成会議」は、先月5月8日に公表した提言の中で次のように述べています。

「人口減少問題には、長期的かつ総合的な対応が不可欠である。このため、例えば 20 年間程度を視野においた「長期ビジョン」を策定し、それに基づき、子育て支援だけでなく、産業・雇用、国土形成、住宅、地方制度など総合的な取組を内容とする「総合戦略」を推進していくことが適当である。」

 長期ビジョンは、まずは国が策定すべきものです。しかし、日本創成会議は、「地域によって人口をめぐる状況は大きく異なり、施策の内容も変わってくる。「地域の問題は、地域で決める」という考え方のもとで、地域自らも長期ビジョンを早急に策定すべき」とも述べています。国の長期ビジョンを待っていては、更に対応が遅くなります。一昨年の一般質問で紹介した大阪府の「人口減少社会白書」は、そうした長期ビジョンの策定につながる取り組みです。また次に紹介する北海道夕張市では、全国で始めて、20年後に人口が半減することを前提とした「夕張市まちづくりマスタープラン」を、市民と協働して策定しています。静岡県も、前述の長期財政見通しの策定と同時並行で、他のモデルとなるような長期ビジョンの検討を直ちに始めるべきです。

 更に、長期ビジョンの策定にあたっては、3つのメッセージを明確に打ち出すことが不可欠と考えます。1つは、将来人口推計が示すように、少なくとも今後数十年間は、人口減少は決して止まらないという現実です。2つ目は、関連しますが、数十年間は人口が減少し続ける以上、現在の人口、もしくは、それに近い人口の実現を、近い将来の目標として目指すことは、非現実的だという現実です。

 そして3つ目は、「人口減少や高齢化が進むと大変だ。だから何とか止めよう」という「夢のないメッセージ」ではなく、「人口減少や高齢化が進んでも、社会の仕組みや価値観を変えていけば、明るい人口減少・高齢化社会は実現できる」という積極的なメッセージです。なぜなら、一昨年の一般質問でも述べましたが、人口減少社会の到来は決して負の影響ばかりでなく、わが国が、戦後、経済的には豊かになる一方で失ったものを取り戻す、大きなチャンスにもなり得るからです。

 また、人口減少問題は国内的な議論に終始しがちですが、世界に目を転じれば、既に人口は70億人を超え、今なお、4.5日毎に百万人の割合で増加しています。米国のジャーナリスト、アラン・ワイズマン氏は著書『滅亡へのカウントダウン』の中で、人口爆発に直面する現代において、知的で教育水準の高い日本は、「限界を超えない範囲で安全かつ賢明に暮らすことへの転換」へと世界を導く、最初の国になると述べています。人口減少・高齢化社会の現実や変革の必要性と共に、人口減少は多くの健全な利点や本当の豊かさをもたらし得ることを説明し、「夢のある」メッセージを打ち出すことができれば、静岡県の将来に希望を持ち、「静岡県で結婚して子どもを産み育てよう」という若者がむしろ増えるのではないでしょうか。

 県は既に部局長からなる「人口減少問題対策会議」を設置し、来月22日には「人口減少対策に関する有識者会議」を立ち上げます。そうした会議で、以上の3つのメッセージを込めた、「明るい人口減少・高齢化社会」の実現を目指すための長期ビジョンを策定すべきと考えますが、今後の方針を伺います。


滅亡へのカウントダウン(上): 人口大爆発とわれわれの未来
アラン・ワイズマン
早川書房

滅亡へのカウントダウン(下): 人口大爆発とわれわれの未来
アラン・ワイズマン
早川書房

Countdown: Our Last, Best Hope for a Future on Earth?
Alan Weisman
Back Bay Books



(3)北海道夕張市への職員派遣について


 次に、北海道夕張市への職員派遣について伺います。

 「明るい人口減少・高齢化社会」を静岡県に実現するための取り組みとして、県の優秀な職員を夕張市に派遣することを提案致します。何故なら、前述のように、人口減少を前提としたまちづくりプランを策定し、「明るい人口減少・高齢化社会の実現」を目指している対策先進地が、正に夕張市だからです。

 夕張市は、日本で唯一の財政再生団体です。企業で言えば、倒産し、現在再建中の自治体です。そんな夕張市を、政府は、この5月、「地域活性化モデルケース」に選定しました。一度倒産した夕張市は、今では最先端の取り組みを進めているのです。

 夕張市が「倒産した」大きな原因は、まず、急激な人口減です。炭鉱で栄えたピーク時の昭和35年には約11万7千人が夕張市に住んでいましたが、それから半世紀で1割以下の9千7百人程にまで減ってしまいました。一方で、炭鉱から観光の町への転換等のために多額の財政支出を行なった結果、膨大な借金を抱えてしまったのです。人口減と借金増という点では、全国の自治体や国も同様の問題を抱えています。つまり、夕張の現実は、静岡、そして日本の明日なのです。

 そうした課題先進地である夕張市に職員を派遣することは、夕張市の支援と共に、県にとっても財政再生団体の現実や今後の取り組みについて学ぶことにつながります。正に、岩手県への職員派遣が、現地の支援だけでなく県の今後の防災にも大いに役立つことと同じです。県内では、既に浜松市と裾野市が夕張市に職員を派遣してきました。県も来年度から派遣すべきと考えますが、見解を伺います。

 以上について、答弁を求めます。



※平成26年6月27日一般質問



2.県産木材の利用拡大と大型木造建築の普及につながるCLT(直交集成板)の導入促進について


 次に、県産木材の利用拡大と大型木造建築の普及につながるCLT(直交集成板)の導入促進について伺います。

 国が平成28年度の早い段階での基準の策定を目指しているCLT工法は、既に海外では10階建ての大型木造建築を可能にするなど、これまで、原則として3階建てまでしか木造建築を認めてこなかった建築基準法のあり方を大きく変え得るものです。既に高知県は、そうしたCLTの普及を見越して、市町や森林組合と協力して、岡山県に本社がある企業の製材工場を誘致する等の取り組みを進めています。また、その岡山県は、真庭市や企業、大学等と共同で、CLTパネルを使用した全国初の市営住宅を今年中に建設する予定です。

 CLTの大きな利点の一つは、構造材としては使いにくかった国産杉の使用を可能にしながらも、十分な耐震性、耐火性、断熱性、遮音性を確保できることです。外国産木材が中心のツーバイフォー工法等とは異なり、CLTは、木材の産出、加工、使用、そしてリサイクルまでの流れを静岡県内で完結させる、つまり、地域内で「おカネ」が循環することを可能にします。また、CLTパネルはプレハブのように短期間での組み立てが可能なため、後で建て替える必要がない緊急時の災害住宅への活用も大いに期待できるはずです。

 こうした理由から、県もCLTの導入に向けた取り組みを市町や企業等と連携して進めるべきと考えますが、今後の取り組みを伺います。



3.草薙総合運動場新体育館における長期利用を見据えた取り組みについて


 次に、草薙総合運動場新体育館における長期利用を見据えた取り組みについて3点伺います。

 先日、建設中の新体育館を視察しました。屋根を支える256本の天竜杉集成材の柱は、実に力強くて美しい「芸術品」でしたが、完成後は、一般の方は直接触れることが出来ないと伺いました。県産木材の利用促進のためにも、天竜杉集成材の素晴らしさを直接感じてもらうことは重要なはずです。完成後も見本ではなく、実際の柱を直接触れることができる区画を常設すべきと考えますが、今後の取り組みを伺います。

 次に、東日本大震災では、天井の耐震性が問題となり、昨年7月には県の富士水泳場で天井材が落下する事故も発生しました。そこで、県産木材を多く使用した斬新なデザインの新体育館における、天井等の耐震性や耐火性を長期間確保するための取り組みについて具体的に伺います。

 また、今後更に厳しい財政が予想される以上、新体育館においても、極力低コストの維持管理や補修によって、より長く安全に使用することが不可欠です。現在、グランシップでは、外壁の落下に伴う改修工事が8億5千8百万円も掛けて行われていますが、その高所作業費だけでも1億円以上掛かっています。新体育館も斬新なデザインであるが故に、特に外壁の維持管理や補修はかなり大掛かりな作業になるのではと危惧しています。そこで提案ですが、外壁のチェックや補修を容易にするために、例えば、可動式のラダーを今から取り付けては如何でしょうか。グランシップでの失敗の教訓を踏まえた、今後の新体育館の維持管理の簡易化やライフサイクルコスト低減化の取り組みについて具体的に伺います。

 以上について、答弁を求めます。



4.公共の福祉を守るための脱法ドラッグ規制強化策について


 最後に、公共の福祉を守るための脱法ドラッグ規制強化策について伺います。

 私の地元で、今年の2月から、脱法ドラッグ店が営業を始めました。この店は昨年まで同じ駿河区内の別の場所にありましたが、近隣住民から販売自粛を求められ、その後、現在地に移転してきました。

 地元では、自治会役員の皆様が立ち上がって署名を集め、4月5日には脱法ドラッグ店に販売自粛を要請、私も同行致しました。しかし、同店は現在も販売を続けています。

 私の地元の取り組みは、先月5月28日にNHK番組「あさイチ」が放映した「脱法ドラッグ特集」でも紹介されました。危険な脱法ドラッグを無くしていくには、まずは、地域の取り組みが不可欠です。しかしながら、脱法ドラッグ店が別の地から移転してきたことからも明らかなように、行政による積極的な規制もなければ、地域の取り組みも十分な効果を挙げにくいと考えます。

 そこで、和歌山県独自の「知事監視製品制度」のような規制を静岡県も行なうよう、強く要請致します。和歌山県では、知事の強いリーダーシップの下で「薬物の濫用防止に関する条例」を平成24年12月に施行し、独自の「知事監視製品制度」を実施しています。全てが条例の効果ではありませんが、条例制定前に和歌山県内に2軒あった脱法ドラッグ店は、現在では0となっています。

 和歌山県の担当者によれば、「知事監視製品制度」を導入する際に苦労したのは「違法ではない脱法ドラッグを規制することは、憲法が保障する経済活動の自由を侵害する可能性がある」という原則論との調整でした。同様の議論は静岡県でもあるでしょう。確かに、経済活動の自由は保障されなければなりません。しかし、あくまでも「公共の福祉」に反しない範囲内であるべきです。次々と新製品が登場するために「指定薬物」の指定が追い付かず違法となっていないのが脱法ドラッグですが、逆に「安全である」と科学的に証明されているわけではもちろんありません。むしろ、覚せい剤よりも強力で危険なのが最近の脱法ドラッグです。

 例えば、お酒は、飲み方を誤れば健康を害し周囲に多大な迷惑を掛けることから法律で規制されていますが、殆どの方は、安全に楽しくお酒を飲んでいます。一方、「お香」「ハーブ」などと称して売られている脱法ドラッグは、実際には、直接吸引など危険な方法で使用されています。その結果、使用した本人が蝕まれるだけでなく、偶然近くにいた人達が、場合によっては子ども達が、幻覚等の中毒症状による交通事故や殺傷事件に巻き込まれる危険があるのです。

 事実、大きく報道されましたが、3日前の24日、脱法ドラッグを吸った男が車で歩道に突っ込み、直前まで友人と食事を楽しんでいた30歳の女性が死亡、7人が重軽傷を負う大変痛ましい事件が池袋駅前で起きました。またその前日の23日には、静岡駅構内の喫茶店で、脱法ドラッグを吸ったと思われる男が、突然奇声を上げ、他のお客に対し椅子を振り回す事件も発生しています

 この5月に厚生労働省が公表した全国調査結果によれば、0.4%の人が脱法ドラッグの経験があるということです。つまり、静岡県内でも1万5千人近い脱法ドラッグ経験者がいる可能性があります。また、昨年3月に同じく厚生労働省が公表した中学生対象の全国調査によれば、0.2%の生徒が脱法ドラッグ経験者です。つまり、静岡県内では2百人もの中学生が、既に脱法ドラッグを経験している可能性があるのです。

 地元の駿河区には2軒の脱法ドラッグ店がありますが、どちらも、小学校から直線距離で2百メートル程しか離れていません。危険は子ども達のすぐ隣にあるのです。

 池袋での事件のような悲劇が県内で起きてからでは遅すぎます。公共の福祉を害する脱法ドラッグを無くすために、地域との連携強化に加え、和歌山県型の条例を早期に導入すべきと考えますが、今後の脱法ドラッグ規制強化策について、県の本気の答弁を求めます。


 質問原稿は以上です。今回もテーマごとに質問と答弁を行なう分割方式で質疑を行なったため、「以上について、答弁を求めます」という言葉が入っています。

 お読み下さり、ありがとうございます。


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