ー 遺産はあげない ー
朝
身寄りのない年寄りが親身に世話をしてくれた介護施設の人に、全財産を残してやったという話を聞いたことがある。
反対に人生いろいろ、相続人がいても “ あいつ ” にだけは1円だってくれてやるものか、というケースだってあるだろうし、実際見聞もする。
どうすればいいか。
一番いいのは“ あいつ ” より長生きすればいい。
もうひとつ。相続は財産あっての話だから、生きている間に全部使ってしまえばいい。ただしこれにはひとつ問題がある。いつ死ぬかわからないことである。1年先に死ぬつもりが、それから10年も生きたのでは人生は悲惨な幕となりかねない。
上記のように、お世話になった人に全部あげるという方法もある。
生きている中にその人と「私が死んだら私の財産、全部あなたにあげます」という契約を交わしておくのである。
ただし、 “ あいつ ” が妻や夫、子、自分の親あるいはお爺ちゃん、お婆ちゃんの中にいるとする。この場合は1円もやらないという訳にはいかない。その法定相続分の何分の一かは “ あいつ ” にも残してあげなさい、という民法の条文があるからである(民法1042条1項)。もっともこの条文も1年経つと時効で使えなくなる(民法1048条)。
相続人は兄弟姉妹の A, B だけとする。A にだけはやりたくないと思ったら遺言書に全財産を B にやると書いておけばいい。
上と違って兄弟姉妹にはその法定相続分の何分の一かは残してあげなさいという条文はないから(民法1042条1項)、A が怒って裁判しようと何しようとA には1円もいかないことになる。
さらに、“ あいつ ” であれ誰であれ、自分を殺そうとしたなど一定の場合はなんら裁判を経ずに、または暴力を振るうなどした場合は家庭裁判所の手続きを経て、相続人としての権利そのものを取り上げることができる(民法891条、同892・893条)。
妻に暴力をふるい、その結果流産、死亡させた夫が 遺留分さえもらえなかった例がある。妻は遺言で夫に財産はやらないと書き残していた。
( 次回は ー 長男の嫁 ー )