テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

2024-02-09 | ドラマ
(2015/ジェイ・ローチ監督/ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、ヘレン・ミレン、ルイ・C・K、エル・ファニング、ジョン・グッドマン、マイケル・スタールバーグ、アラン・テュディック/124分)


 “トランボ”=ダルトン・トランボですね。
 “ハリウッドに最も嫌われた男”というのは言いたいことは分かるけど、命名者が悦に入ってる感じがするな。端的に言えば“彼は如何に赤狩りに立ち向かったか”ということなんですよ。

 僕がトランボの名前を知ったのは1971年の映画「ジョニーは戦場へ行った」の時で、本職は脚本家であった彼の初めての監督デビュー作でありました。時にトランボ66歳。そして「ジョニーは戦場へ行った」はトランボ自身が1931年に書いた小説の映画化でした。
 その後トランボが1950年代にアメリカを席巻した赤狩り(レッド・パージ)の被害者であった事、ハリウッドで実名で仕事が出来なかった為に匿名で書いた「ローマの休日 (1953)」、「黒い牡牛 (1956)」で2度もアカデミー脚本賞を獲った事を知りました。
 という事で、実話が元になっているし、人間トランボも殆ど知らないので興味津々で鑑賞に入りました。ジェイ・ローチ監督には全然馴染みはありませんがネ。
 尚、「ローマの休日」の裏事情については“「ローマの休日」の秘密”という記事を書いてますのでご笑覧を。

 まずは映画の冒頭に説明される時代背景について。
<1930年代、大恐慌とファシズム台頭を受けて数千人のアメリカ人が共産党に入党。第二次世界大戦で米ソが同盟を結ぶと更に入党者は増加した。労働運動の旗手だった脚本家ダルトン・トランボは1943年に入党。だが、冷戦が始まり共産主義者には疑惑のまなざしが向けられるようになる>

 米ソの冷戦が始まり、朝鮮戦争も勃発し、アメリカ人にとっては不気味な存在だったんでしょうな、共産主義者というのは。
 さて下記にてストーリーを紹介しますが、これはウィキを参照、加筆修正したものです。

*

<ダルトン・トランボは、その才能によってハリウッドの売れっ子脚本家の一人に数えられるようになっていたが、アメリカ共産党員として積極的に活動していることから、コラムニストのヘッダ・ホッパーや俳優のジョン・ウェインなどのエンターテイメント業界における強硬な反ソ連の人物からは嫌われていた。一緒に映画を作った監督のサム・ウッドからもハリウッドの裏方の賃上げ運動に参加するのを止めるように言われたりもした。

 トランボは、ハリウッドにおける共産主義のプロパガンダに関して下院非米活動委員会(HUAC)で証言するよう召喚された十人の映画人(ハリウッド・テン)のうちの一人となる。彼は質問に直接答えることを拒否し下級審で議会侮辱罪で有罪判決を受ける。トランボ達はたとえ一審で負けても上訴すれば最高裁で多数派を占めるリベラルな判事たちがそれを覆すことを確信していた。ところが、リベラル派とされる二人の判事の予期せぬ死去によりトランボの上訴の計画は叶わぬこととなった、1950年、トランボはケンタッキー州アシュランドの連邦矯正施設で11ヶ月間服役する事になる。
 「ハリウッド・ブラックリスト」の対象が拡大し、より多くの共産主義者や共産主義シンパが業界から排除される中、トランボの仲間であった者たちも自分の仕事を守るためにリスト対象者との繋がりを否認するようになる・・・>


▼(ネタバレ注意)
<トランボは刑期を終え刑務所から釈放されたが、依然としてブラックリストに載っており、彼の経済状況と家庭生活はますます逼迫していった。トランボは友人のイアン・マクレラン・ハンターに書き溜めていた「ローマの休日」の脚本を渡し、ハンターが脚本の名義と報酬の一部を得るという手段をとる。のどかな湖畔の家を売り、都会の家に引っ越した彼は、低予算のキング・ブラザーズ・プロダクションでペンネームを使った上で脚本家として働き、ブラックリストに載っている仲間の作家たちにもB級映画の脚本執筆の仕事を回してやった。妻のクレオと10代の子供たちにも仕事を手伝わせ、家庭内不和が大きくなる事もあった。そんな中、「ローマの休日」がアカデミー賞で脚本賞を受賞し、3年後には仮名で書いたオリジナル脚本の「黒い牡牛」がまたもアカデミー脚本賞を受賞する。
 業界ではトランボがゴーストライターとして脚本を沢山書いてきているという疑惑が浮上するが、彼はそれを肯定しないように注意を払った。1960年、俳優のカーク・ダグラスが大作映画「スパルタカス」の脚本を書くよう彼に依頼し、オットー・プレミンジャー監督は「栄光への脱出」の脚本を依頼する。ホッパーはダグラスを脅してトランボを降板させようとしたが、ダグラスとプレミンジャーの二人はトランボが脚本を書いたと新聞に公表した。ブラックリストの効力は、1961年の初めには新大統領ジョン・F・ケネディが「スパルタカス」を称賛するほどまでに下落しており、漸くトランボ達は自分の名前で仕事を再開出来るようになったのだった>
▲(解除)

*

 う~ン、まずは出てくる業界人が全て実名っていうのが凄いですね。過去のニュース映像をそのまま使ってるシーンもあって、改めて人の見方が変わりそうです。
 序盤の賃上げデモにハンフリー・ボガードやローレン・バコール、ダニー・ケイが参加していたり、ラジオで赤狩り反対を冷静に喋っているグレゴリー・ペックやルシル・ボールがいたり。
 レーガンは当然だけど、ロバート・テーラーが聴聞会でタカ派の発言をしてたのは意外だったな。

 主演のブライアン・クランストンは馴染みがないんですが「アルゴ」や「リトル・ミス・サンシャイン」に出ていたようです。
 ダイアン・レインはトランボの奥さんクレオ役。典型的な良妻賢母でしたな。
 ヘレン・ミレンは今回はトランボの最強の敵、コラムニストのヘッダ・ホッパー役。彼女の憎々しさあってこその終盤の逆転劇の痛快さでありますね。
 「アルゴ」のジョン・グッドマンはキング・ブラザーズ社の社長役。プレッシャーをかけに来た非米活動委員会の男をバット一本で追い返すシーンが最高。今回も適役でした。

 お薦め度は★三つ半。
 堅実な演出と上手い脚本で見応えあるけれど少し長い。幾つか端折っていいシーンがあったし、後半のダグラスとプレミンジャーのエピソードに入る辺りもなんか変化球が欲しかったな。
 いずれにしても良い映画でした。





・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 テアトル十瑠

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