「サラリーマンを辞めてみるのも悪くない」
待望の「踊る~」の第2弾。連ドラ放映から7年も経つんだねぇ……しみじみ。
――と、このように、しみじみと感じられる人なら、文句無く、この映画は面白いだろう。
逆に「踊る~」なんて知らない、観たこともない、そして、「単体の劇場公開作品」として観た場合、この映画の評価ってのはどうなるんだろう?
「踊る~」の楽しみ方の1つに、スクリーン(あるいはスクリーン外)に散りばめられた「ネタ」(スタッフ達は「リンク」と呼んでいる)を見つけるというものがある。
そういうネタを楽しむには、連ドラはもちろん、「踊る~」の周辺情報から、他の作品に至るまで、幅広く「作品外」の情報にアンテナを拡げていないと楽しめない――っていうか、ネタに気付かない。
はたして、これは是か非か……?
私は、これを「是」としたい。
『スターウォーズ』はスクリーンを離れて、きっと劇場興行収入よりライセンス収入の方が多い、と思う。
すでに映画が、従来から定義されている「映画」の定義で完結しないところにまで、娯楽性、経済性が拡大している現在。
「踊る~」の展開も、また従来から定義されている「映画」の定義で完結しない、新しい形として楽しめる作品になっていると思う。
ただ、1つだけ苦言を呈するとするなら。
この傾向が若干、制作者(フジテレビ?)の内側に拡大しているような気がしないでもない。
特に冒頭。
織田裕二と高杉亘の無線のやり取りは……昨日、『ホワイトアウト』を観ておいて良かった(笑)――でも、ちょっと内輪的すぎるかな、とも思わなくはなかった……。
じゃあ、ネタが分からないと楽しめないのか? と問われると。
ここらへんが微妙なところというか、そもそも、この映画は「前作」からの正統後継作品なわけで。
前作、あるいは「踊る~」を知らない人にとっては、感情移入しにくいというか、登場人物達の葛藤に深く入り込めないんじゃないか、と思う。
例えば、真矢みきの名ゼリフ「事件は会議室で起きている」は、前作を観ていなければ意味が通じないし、このセリフが意味する現場の人々の苦い感情、そしてこのセリフが後の伏線になるということに気付きにくいかもしれない。
そう、これは『ホワイトアウト』を観て、いまいち感が払拭できなかった私に通じる部分がある。
もしかしたら、『ホワイトアウト』とは異なり、些末なところは抜きにしても楽しめるのかもしれない。
こればっかりは客観的な評価はできないな。
で、ストーリーに入っていくと。
4つの事件が交錯するという話だったが、すぐにメインとなるべき事件は観る者に浮き彫りとなる。
そして、メインとなる事件=本庁管轄、その他の事件=所轄の管轄という対立構造となり、例によって例のごとく、本庁と所轄の間に軋轢が生じる。
この辺の分かりやすい話立ては「踊る~」に共通している「お約束」であり、また「踊る~」の根底に常に流れ続けたテーゼでもある。
この分かりやすさを、どう評価するかは人それぞれかな。
私は「踊る~」はミステリじゃないのだから、「警察機構の縦割り組織の矛盾」という制作者のメッセージをダイレクトに伝えるための舞台装置として十分に活かされていると解釈する。
(また今作では、このテーゼに対する1つの回答が出る点でも大きいと思う)
そういう意味では、「踊る~」ファンとしては10点をつけても良い作品なのだが。
なぜ、10点をつけなかったかというと、ちょっとギャグの挟み方が中途半端な印象を受けたからである。
落としどころの間が悪い感じがした。
それと余談ながら。
この作品は、ちょうど私がサラリーマンを辞めた直後に観た作品。
(この後、すぐに就職するんだけど)
サラリーマン的な人間=私が観ると、けっこう色々と考えさせられる。
頷けるところも多々あったりするし(笑)
『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(映画館)
監督:本広克行
出演:織田裕二、柳葉敏郎、深津絵里、水野美紀、ユースケ・サンタマリア、真矢みき、筧利夫、いかりや長介、スリー・アミーゴス、他
評価:9点
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