「ゲームの主人公もググってる?」
コナミのゲーム『サイレントヒル』(以降、「ゲーム」)を原作とした映画、ってぐらいの予備知識で観にいった。
- 「ゲーム」は一作目だけプレーしている
- 一応、トゥルーエンドは見てたけど、もうほとんど記憶がない
- ただ、ひたすらに鈍器でゾンビどもをぶん殴ってたなぁ、ぐらいしか覚えてない
- 電撃PSで、当時の開発スタッフのインタビュー記事を読んでいる
- 同タイプのゲームとしては、むしろ『バイオハザード』の方にハマってた
とまあ「ゲーム」に関しては、この程度の思い入れの人が、この映画を観たときの感想ってことで。
なお、オレってばネタバレとか気にしないで書く人なんで、続きを読む場合は気をつけてくださいね。
とにかく面白かった!
ゲームは『バイオハザード』の方が好きなんだけど、映画で比べたら『サイレントヒル』の方が間違いなく面白い!
サイレントヒルで行方不明になった娘を捜す、ってのが「ゲーム」の目的なので、この映画も子守アクションなのかな、と実は不安に思っていた。
冒頭、いきなり「ゲーム」との違いが示される。
行方不明になる子供は一緒だけど、主人公はオッサンから母親のローズ(映画オリジナル)に変更になっている。
母親がサイレントヒルに自主的に向かってしまい、オッサンが母親と娘を捜しにサイレントヒルに向かう、という二重構造となっているのだ。
ただし、主人公は母親のローズ。
オッサンはっていうと――冒頭の部分ではゲーム的には、何の因果関係もない。っていうか、なんのためにオッサンがいるんだろう……?
などという心配をよそに、サイレントヒルに入っていくだけど――これが怖いね。じんわりと怖い。迫りくる闇とノイジーな音楽で、じわじわと怖さがかき立てられる。
「ゲーム」のインタビューでも、光源の使い方や音楽で怖さを表現云々と言っていたのを覚えてるんだけど、その辺は忠実に再現されていると思った。
忠実に再現と言えば、町並みの再現もこだわりがあった。
細い路地を俯瞰カメラでローズを捉えているところがあったんだけど、あれって「ゲーム」でも同じ俯瞰カメラだった記憶がある。
「ゲーム」をやっているときに「なんか、先が見えにくくて意地悪なカメラワークだな」と思ったけど、映画だと先の見えない不安感があおられるんだな、と納得した。っていうか、ゲーム的に不便と感じるってことは、それだけ「不安」も感じてたってことなのかも。
不安と言えば、映画のローズは基本的に武器を持たない。そのためクリーチャーに一方的に追い回される立場なんだけど、これが怖い!
クリーチャーの不気味さもさることながら、「迎撃できない」というゲーム的な縛りが、映画になると怖さになる。
映画を観ながら何度も「武器を装備しろって!」と叫びそうになったことか。
そんな丸腰のまんま、ずんずん進んでいって、ついに学校に到着しちゃう。
この学校のシーンが、序盤のハイライトだろうな。
「ゲーム」をやった人なら分かると思うけど、昼の世界の廃墟となった学校と夜の世界のクリーチャーがいる世界を、映画でも行き来することになる。
「ゲーム」ではサイレンが鳴ったら画面が切り替わるってカンジだったけど、映画の方はそう簡単な処理じゃない。
生身のものが毟られるような表現しがたい不快な音ともに壁が剥がれ落ちていって、ドロドロになりながら血と錆と鉄骨の異世界へと切り替わっていく。
もう、これが不愉快指数が高くて、映像的に最悪でサイコー! 「ゲーム」そのもののステージ構成が、さらに不気味さを増大させて再現されている。
「ゲーム」ではオブジェに過ぎなかったハードコアな死体も、変な声を出しながら迫ってくるし。この不気味な不愉快さは、ぜひ映像で体験してもらいたい。
と同時に、映像だけではなく、いかに音も怖さや不愉快さを増幅させるかも体感できると思う。
んで、ここでオッサンが学校に到着する。でも、なぜかお互いに、お互いの存在が見えない。
もう、このへんで気付く人は気付いちゃうんだろうけど……オレ的には、ローズは夜の世界にいて、オッサンは昼の世界にいるから気付かないんだろうな、ぐらいに解釈していた。
きっと、ラストではオッサンも夜の世界にいって大団円か、なんて邪推したりもして。
このオッサンの合流が「ゲーム」と違うところとすれば、警官のベネットが戦ってくれるところもゲームと違うところ。
この後、サイレントヒルの住人たち(教団の連中)と合流するんだけど、これほどまでにNPCの存在がありがたいなんて、思いもしなかった。「ゲーム」じゃ孤独に戦ってたからな~(笑)。
NPCと合流したあたりで、サイレントヒルの「夜の世界」について簡単な説明がされる。
ようは、夜の世界は悪魔が支配するクリーチャーの世界だ、ってことなんだけど。こういう説明が「ゲーム」であったかどうかは記憶が定かじゃないな……などと思っていたら、また夜の世界に突入。
ここで悪魔の大男に住人が殺されるんだけど、人間の身体を引きちぎって、壁に叩きつけるというスゴ技を見せてくれる!
そして、このへんから映画のボルテージが、「ゲーム」と違う方向に上がっていく……。
とまあ、サイレントヒルでローズたちがクリーチャーと戦っているころ、オッサンはというと町を離れて、「サイレントヒル」について調べている。
んで、行方不明になった娘のシェリルと、「ゲーム」でもキーパーソンだったアレッサとの関係がオッサンによって徐々に明らかにされていく。
こういう見せ方もありか、と感心していたら、意外とあっさりとローズもストーリーの核心へ至る。
ゲーム的に言えば、ここでエンドなんだろうけど……。
ここからが映画オリジナルというか、「ゲーム」の後日談とでも言うべきか。
「ゲーム」をやってるけど、映画は観てないって人は、ここから先は注意してくだされ。ネタバレしまくりなんで。
アレッサの身にあったことが詳しく説明される。
こういう話が「ゲーム」にあったのかは覚えてないんだけど、なぜサイレントヒルが、こんなことになってしまったのかってのを、わかりやすく説明してくれる。
んで、ボス戦も無しにクリア? かと思ったら、まあ、ここからの展開が凄まじいのなんのって!
アレッサの恨みを晴らすことを受諾するローズ。
そうこうしているうちにベネットが、教団の連中に火炙りで殺されてしまう。おいおい、重要なキーパーソンなのに!
んで、ベネットの救出に間に合わなかったんだけど、シェリルの救出には間に合って――ついにアレッサによる復讐が発動!
ベッドに括り付けられた全身大火傷のアレッサが現れるってだけでも、かなりスゴイんだが。
有刺鉄線で人体を貫いて、あまつさえ真っ二つに引き裂いてしまう! ちゃんと、このへんの描写もあります。他にも有刺鉄線でデビル・トムボーイを喰らってる人もいたな。
そんな血と肉の惨劇でミンチの雨が降り注ぐなか、シェリル=アレッサの姿を借りた悪魔が笑いながらはしゃぎ回る。ケロイドまみれのリアルアレッサは、ニタニタと惨劇を見守っている。
狂ってる!
だが、それがいい!
いや~、久しぶりに良いモノを観た!
でも、この惨劇はアレッサの復讐によって引き起こされたんだけど……このシーンって、何も救われてないんだよね。
教団の連中は映画的には敵役なんだけど……ただのパワフルな敵ってだけじゃない。
“社会正義”を盾にした、人間の嫌な部分を満載したエゴイスティックな連中。確かに、アレッサへの仕打ちを考えると死すべき存在なんだけど、彼らは人間社会の縮図みたいなもん。はたして、人間は人間であるが故に死すべきなのか?
復讐をしたアレッサにしても気分は晴れたかもしれないけど、彼女が救われたわけではない。
唯一生き残った(復讐を免れた)ダリアにしてもアレッサの復讐が果たされたところで、何かが変わるわけでもない。っていうか、死人すらいなくなったサイレントヒルで、これからどうすれと。
んで、ローズはっていうと、娘を救いたい一心とはいえ悪魔に荷担してしまった。一見ハッピーエンドっぽいけど、これってゲーム的解釈なら間違いなくバッドエンドだよ。
しかも、サイレントヒルを脱出して家に帰ってみたら……全然、救われていないじゃんかよ、って。
「ゲーム」は昼と夜の2層構造だったけど、映画では、もう一つの3層目があったってことがラストにいたって分かる。
っていうか、作中でもフィルムの色というか、シーンの色がそれぞれ異なっていて、それとなく「サイレントヒルではない世界」の存在は描かれてたんだけど。
こういう後味の悪いラストへ続くとは思っていなかった。
でも、この救われない後味の悪いラストも含めて、すごくこの終わり方が気に入っている。
あれ、なんだか思うに任せて書きまくってたら、随分と書いてしまったな。しかも、褒めてばっかりだし。
確かに、ストーリー的に不親切な部分や、「なんでやねん」とツッコミたくなる部分もある(そもそも、なんで病気の子供連れてゴーストタウンへ向かうのか)。
そういう部分を差し引いても、この映画は良かったと思うよ。
前半は「ゲーム」の世界観を壊すことなく再現して見せて、原作のファンも満足させてくれたと思うし。ゲームを原作にした映画で、はじめて「おもしろ!」と思えた。
っていうか、原作ものの映画ってのはビッグキャストを揃えるより、いかにゲームの雰囲気が分かる人がスタッフにいるか、ってことなのかも。
後半は狂った映像美と、一筋縄ではいかない罪深さで重たい気持ちにさせてくれる。
これらのバランスの良さも合わせて、この映画はとてもオレのお気に入りな映画でした。
『サイレントヒル』(映画館)
映画公式 http://www.silenthill.jp/main.html
ゲーム公式 http://www.konami.jp/gs/game/silenthill/index.html
監督:クリストフ・ガンズ
出演:ラダ・ミッチェル、 ジョデル・フェルランド、ショーン・ビーン、ローリー・ホールデン、デボラ・カーラ・アンガー、他
評価:9点
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