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同人サークルA-COLORが北海道をうろうろしながら書いているブログです

タッチ CROSS ROAD 風のゆくえ

2001-02-09 13:23:00 | 映画-2001年

「決勝点は、あの映画と同じ」

『タッチ』のテレビオリジナル版の2作目(1作目は未見)。
 高校を卒業した原作の後日談。
 達也はアメリカへ渡り、シングルAの野球チームに入団。
 南は新体操を辞めて、スポーツカメラマンの助手になるというもの。

 見終わった感想は、原作の『タッチ』らしさが消えているなという感じ。
 考えてもみれば、原作は15年以上前のもので、時代背景を無視して21世紀の世界観で描いているのだから、当然なのかも知れない。

 原作の『タッチ』は、『巨人の星』に代表される「スポ根」ものの概念をひっくり返したものだった。
 いわば「アンチスポ根」的な部分が、ちょうど80年代的な時代の風潮にマッチしていて、それがゆえにヒットした。
 60年代、70年代のスポ根ものは、生活に困窮していながらも、「スポーツ」に対して求道的でストイックなアプローチをしていた。
 そんな泥臭くて、汗くさい主人公たちも、当時の時代背景においては、大いに読者の感情移入を受け入れていた。

 でも、『タッチ』の場合、そもそも生活に困窮してなんかいない。
 野球のプレーする場面では、もちろん死にものぐるいなのだが、野球を離れた場面ではラブコメをやっている。
 星飛雄馬が親友・伴のために彼女をフルのとは大きな違いだ。
 そして、そもそも野球をやるのも「南を甲子園に連れて行くため」という微笑ましい動機だ。
 肘を壊して、野球ロボットになってまでプレーしようなんて考えてもいない。
 そういう等身大的な主人公らが、80年代においては読者の支持を集めたのである。

 で、このテレビ版であるが、そういう80年代的な臭いは伝わってこない。
 そもそも、達也が初めて「自分のために」野球をするというのだから、設定自体が根底から覆っている。
 南もまたしかりである。
 でも、こういう彼らの生き方というのは、非常に90年代的だと思う。
「自分探しの旅」なんて言葉が流行ったり、心理学ブームが起こったのも90年代である。
 そして、自己実現のための手段が、プロ野球であったり、カメラマンであったりと地に足がついていない(サラリーマンという堅実な選択と比較して)職業を選んでいるのも90年代的だと思う。

 そう考えると、この作品も「アンチ80年代」――原作が「アンチスポ根」であったように――という側面から見れば、『タッチ』の正統進化だったとも思える。

 で、肝心の感想だが、「タッチである必要はなかったのでは?」というのが正直な感想。
『タッチ』の名脇役たちが全く登場せず、オリジナルキャラとばかり絡んでいたのが寂しい。
 こういう原作ものは、原作の設定を活かしてこそだと思うのだが…

 最後に補足として、この作品のクライマックスが非常に『メジャーリーグ』に酷似していたので、その点をいくつか上げておく。
1.チーム存亡の危機
 赤字経営で弱体チームなので、今シーズン限りでチームが解体されることになる。
 その報せを聞いてから選手は奮発するのだが、だったら最初から頑張れよって言いたい。
 プロなんだから。
2.最終ゲームで同率、勝った方が優勝
 145試合目で同率に追いつき、そして最終戦で主人公のチームが勝って優勝する
3.ツーランスクイズが決勝点
 ラジオ中継ということでプレーシーンは出てこなかったが、ランナーをセカンドに置いた状態で打者がバント。
 セカンドランナーが一気にホームインするというのも、『メジャーリーグ』と同じ。
 やっぱ、ホームランで決勝というのはベタすぎるから、制作者は敬遠するのだろうか?
 まあ、15対3ぐらいのワンサイドゲームになったら、ストーリー的に盛り上がらないだろうし。
4.エース(=主人公)が最後にリリーフ
 最終回、ワンヒットで逆転という場面で、バッターは四番の強打者。
 そこで主人公(達也、チャーリー・シーン)が急遽リリーフ。
 やっぱりクローザーってのは、今の野球では花形ポジションなのだろう。
 ちなみにチャーリー・シーンは100マイルのファーストボールで三振を奪ったのに対し、達也は初めて投げるフォークボールで三振を取る。
 アメリカ映画なら「勝負を避けた」ということで大ブーイングなのかも知れないが、「ダイマジン」の国・日本ならこういう配球もありなのだろう。
5.スタンドには愛しの彼女が…
 優勝が決定し、チームメイトとの歓喜の輪の中、スタンドに目を遣ると、そこには彼女が…
『メジャーリーグ』ではキャッチャーのトム・ベレンジャーがこの美味しい役だったが、『タッチ』では達也だった。
 クローザーで試合を締めて、彼女も独占という非常に美味しい役だった。
 ちなみにキャッチャーといえば、『タッチ』では鈍足の正捕手に代走を出して途中交代してしまうが、そういう用兵には疑問符が付く。 

『タッチ CROSS ROAD 風のゆくえ』(テレビオリジナル)
総監督:杉井ギサブロー
監督:永岡昭典
出演:三ツ矢雄二、日高のりこ、高山みなみ、林家こぶ平、他
評価:5点(タッチだからきわどく+1)


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