皇嗣殿下の世間を仰天させた、後に、「ブーメラン発言」と呼ばれる「ご発言」は、妃殿下には、全くお伝えになられていらっしゃいませんでした。
以前でしたら、お二方ご一緒にお誕生日の会見をなさっておられましたが、しかし皇嗣・・・・・・日嗣の皇子のお立場になられてからは、殿下、お一人で、会見に挑まれる様になられました。
お二方の時には、会見で、仰るお言葉等を妃殿下と相談されていましたので、当然、妃殿下は、内容を把握なさっておられたのですが、しかし、今回は、殿下お一人様ですので、その時迄どうにでも、妃殿下に、内容を隠される事が、お出来になられるのです。
・・・・・もし、妃殿下が、その事を事前に、ご存知でしたら、何としても、お止めになられていたはずです。
皇嗣殿下は、妃殿下には、お伝えになられていませんでしたが、お妹宮様の院の女一宮殿下と、ご長女の姫宮様を除く、お二人のお子様方、妹宮殿下と、若宮殿下には、事前にご発言の事をお伝えになられていました。
院の女一宮殿下は、姫宮様のご降嫁と、入れ違いに、「内親王殿下」に複位されました。姫宮様が「内親王殿下」の称号を放棄されてのご降嫁となれば、必ず、皇族の減少の大義名分で、「女性天皇」、「女系天皇」の議論が高まりますので、それを少しでも、封じる為での措置でした。その時、必ず、女一宮殿下のお名が上がりますので。勿論両陛下も承知の上での「内親王殿下」の複位でした。
院の女一宮殿下は、最初はその「ご発言」が、「大事・おおごと」になる上、御所のお上と同じ御言葉を、使うというのは、恐れ多い事とですと、言われ反対されましたが、しかし、お上のあの「御発言」のモヤモヤとした思いは、女一宮殿下のお心の中に、未だに尾を引いていらっしゃり、そして、皇嗣殿下の「思い」を、汲み取られまして、
「ご一緒に泥を被りましょう」
そう、おっしゃり、賛成されましたが、若宮様を「息子」として発言内容の中に入れられるのは、最後まで、反対されました。まだ未成年の若宮様の周囲の影響をご心配されての事でした。
しかし、皇嗣殿下は、若宮も、もう15歳で状況を分かっているから・・・・・
とおっしゃりまして、院の女一宮殿下を納得させたのでしたが、しかし、院の女一宮殿下は、
「若宮様を、表に出して、さぞお姉様は、お怒りになられるでしょうね。お年が27におなりの妹宮様と、15歳の若宮様では、違いますもの。皇嗣様、相当なご覚悟で、なされなければなりませんよ」
その様に、兄宮様に、言われましてため息を付かれるのでした。
(殿方は、どうしても事を大きくしないと済まされないのかしら)
お心の中で、そう、呟かれたのでした。
院の女一宮殿下は、皇嗣殿下とは、昔から仲が宜しく、又義理姉君とも実の姉妹の様な間柄でしたので、皇嗣妃殿下のバッシング等も、姫宮様のご結婚でどれだけ、妃殿下が傷付いていらっしゃるか、良くご存知です。
しかし、その一方、たおやかで美しく奥ゆかしい義理の姉君の内面には、かなりのお強いご気性を秘めていらっしゃるのは、院の女一宮殿下も、承知しておられます。
その上で、
「お兄様、お分かりでしょうけど、その後(あと)が、大変で御座いますわよ。その後(あと)が・・・・・。おたーさん(上皇后様)も、当然お絡みになられるでしょうし・・・・・」
「御代変りして、退屈だわ・・・・何か起こらないかしら・・・・」by上皇后様
上皇后様の性質を誰よりもご存知でいらっしゃる、院の女一宮殿下は、上皇后様を付け加える事も、お忘れにはなりませんでした。
皇嗣妃殿下よりも、遥かに厄介な母宮が、どういう反応をなさり、どう行動に出られるか、女一宮殿下は、見通していらっしゃるようでした。
皇嗣殿下も、それは分かっていましたので、
「間違いなく、批判されるだろうね。内でも外でも。でも批判を恐れるという事は、俺も、妃も子供達も、ない筈さ。幸か不幸か、我が家は評判が、元々悪いしね。今さら喧しく言われても、そう、『傷付いた』と言って、大騒ぎになるという事はないよ」
そう、おっしゃりまして、ある意味、達観されているのでした。
妹宮様に、お伝えに成られた後、皇嗣殿下は、妃殿下が、仙洞御所へ「ご機嫌伺い」へ行かれている時、「御写真の間」に、お子様方をお呼びになられて、件の発言をお誕生日の会見に、言いまして「おたた様」を、若宮様が、成年をお迎えに成られるまで、「休養」させると、お伝えに成られたのでした。
妹宮殿下は、開口一番
「おもう様、やるじゃないの!私は賛成よ。おたた様、このままじゃ必ず壊れるわよ。やることなす事あれだけ批判されても、公務は、しっかりなさっていらっしゃるけど、やれ皇后様が、やれおばば様が~~と何時も引き合いされて、何時も批判的に書かれて、おたた様、どれだけ傷付かれて、いらっしゃるか・・・・・もう限界の筈よ」
「ご自身が、批判されるの、もう何年も続いているもの。良く身も心もこれまで、持ちこたえられたと、私はずっと思っていたの。私だけじゃなくって、お姉様だって、若宮だって、同じの筈よ。ねぇ」
そう、言われまして、お側にいらっしゃる弟宮の、若宮殿下の方を見られました。
若宮殿下は、このお年頃ですので、大人びた、落ち着いた口調で、
「又いろいろと(おたた様が)、言われるね。でも(おもう様の発言で)流れが、変わるといいね」
そう、冷静に、言葉少なめに仰るのでした。勿論内心では、とても母君が心配しており、そして、母君が、どれだけ傷付き、とても辛い思いをされているのは、ご存知でした。
事に姫宮様のご結婚でどれだけ傷付いて、いらっしゃるか・・・・若宮殿下ご自身、母君をお側でご覧になられていましたので、とてもお心を痛めていらっしゃるのでした。
勿論、それは、姉宮様方も同じでした。姫宮様も、ご自身の結婚問題で、それに便乗して、皇嗣家が・・・・母君が・・・・どれだけ非難されているかは、分かっておりましたから・・・・・。それに対しては、本当に申し訳なく思っておりました。
妃殿下は、「何時も笑顔」でいらっしゃいましたが、ご姉妹方が、ご成長されるに従い記憶の端々で、母君の妃殿下が、決して笑顔だけでは、ない状況で、いらしたのが、段々とご理解でき、お心を痛めて、いらしたのでした。
しかし、・・・・・母君は決して大人になられた、姫宮様方にも、弱音や愚痴をこぼすことは、ありませんでした。
妹宮殿下は、今ふと、思い出されたのですが、「国難」と言うべき有り様となった、世界中で大流行した「流行り病」の時、多くの国民が感染を防ぐ為、「巣籠もり」状態となっているとき、その病と日々向かい合う医療関係者に、少しでも役に立つならと、ご家族、表も奥の職員達総出で、手作りの「防護衣」を作り、又心ばかりのメッセージ等を、父君が総裁を務める団体の病院へ、贈った時にも、週刊紙は、皇嗣妃殿下の皇后陛下への痛烈なご批判とか、書き立て、批判しました。
その上、丁度その時の皇后陛下の体調不良(何時もの事です)もあたかも皇嗣妃殿下のせいとする記事までありました。
「それは何時ものことよ」
「だってそれが、私の自己実現(?)なんですもの」 by皇后陛下
一体、「国難」と言うべき状況で、皆がそれぞれの立場で協力しなければならない時に、良くもあんな下らない記事を書くことができるものだと、あの記事を読まれた妹宮殿下は、大層憤慨しました。それは、今、思い出しても本当に腹が立つのです。
頼りにされていた「お姉様」が、自分達よりもあの人を「意地と執念」で皇族の立場を捨てて迄、降嫁され・・・・
ご両親殿下方の強い「押し」で、母君の皇嗣妃殿下の次のお立場のうえ、お上の女一宮殿下よりも上位の内親王の筆頭と成られましたが、それは、元は、一宮家の次女としてお生まれに成られた妹宮様には、思いもよらない、出来事となったのです。
しかし元々、肝の据わった方でいらっしゃいますので、その運命を受け入れ、皇室随一と言われるお美しいお顔には、「覚悟」が見て取れていらしゃいます。そして、こうおっしゃいました。
「私は、これから皇族として人生を送るのだから、おたた様が休まれている分、しっかり務めを果たしてゆくわ、おたた様のようには、まだまだなのは、自分でも分かっているけど、でもそうは、言ってられないわね。女一宮様もご成人なさるし、お手本になる様に自分を鼓舞して、やってゆくわ」
「そういう訳で、おたた様を休ませるのは、賛成だけど、おもう様は、大丈夫なの。おたた様とお年は、一つ違いだし。男の人でも、更年期障害は、あると、いうし、おもう様もこそ、ご無理なさっていない?」
妹宮殿下は、皇嗣殿下にそう、言われまして、じっと父君のお顔を心配気に、ご覧になられるのでした。
若宮殿下も頭の上に「オレも心配だよ」という文字が浮いて見える様な、不安げなお顔付きで、父君をご覧になられているのでしたが、
皇嗣殿下は、お二人を見られて、
「俺は、大丈夫だよ。何時も気を配っているし、何といっても、この若宮が、一人前になるまで、石にしがみついても、元気でいるさ」
そう、おっしゃり、若宮殿下の頭をポンポンと撫でられたのでした。
小さい時には、父君からこうされると、笑顔全開と成られた若宮様ですが、近頃では、そのような行為をされると・・・・・
「止めて下さい。子供じゃないんだから」
そうおっしゃる、若宮様ですが、しかし今日は、それを言わず、何事か思われているご様子で、父君に、深々と頭を下げられまして、
「ありがとうございます」
と、言われました。皇嗣殿下は、若宮様を、目の中に入れても痛くないとうほど、可愛がられていらっしゃいますので、何時もと違う素直な、若宮様の行為に、目を細めて、ご覧になられていました。
妹宮殿下は、最近弟宮様が、ツンツンしておりますので、素直な態度の若宮様が、可愛らしくて、止したらいいとは、分かっては、いても、
「あら、ずいぶんと素直な態度ね。いつもこうだったら良いのに」
そう言われ、若宮殿下の頭をナデナデされたのでしたが、当然若宮様は、ムッとしたお顔になられました。
「小姉様は、うざい。マジ、うざい」
そう言われて、プンプンされたのでした。
そんな態度に出られた若宮様に対して、皇嗣殿下は、「宮、この場でそんな言葉遣いは、いけないよ」と、優しくおたしなめられ、それから、
「おたた様には、絶対に言ってはならない。いいね」
と、やや厳しい口調でお二人に、言われまして、
「では、御写真様にご挨拶して、こちらを出なさい」
そう言われまして、お二方が、飾られている御写真に頭を下げられ、られるのを見ておられましたが・・・・・
お部屋を出ようとする、若宮様に妹宮様は、
「ちょと、おもう様に聞く事があるから、先に行っててね。後で、宮にも教えるから」
そう言われまして、若宮様を、先に出て行かせました。そして父君に、
「おもう様・・・・・あちらにいらっしゃる、お姉様には、どうするの、同じことをお伝えになるの」
そう聞かれましたが、皇嗣殿下は、
「いや・・・・・今は、伝えないつもりだ。誕生日の当日に言う。もう、あちらとは、立場が、違うからね」
そう、淡々と言われました。姫宮様を、『あちら』と呼び、一線を引いていらっしゃるのでした。
多くの国民の理解を得られないまま、「勢い」だけでの姫宮様のご結婚は、現在そして、これからの皇室事にとって、大きな遺恨として残すものとなりました。それは、ご姉妹方・・・・・・特に妹宮殿下は、良く承知なさっておられます。
それは、すなわち、若宮殿下の辿る道のりにも、大きく影響を及ぼす事は、間違いない事です。
皇嗣殿下は、妃殿下の苦しみは、これからの皇室の苦しみであると、思うのです。その苦しみを癒し、救う事が出来るのは、3人のお子様、事に若宮様の存在が、大きな力となるだろうと思いながら、飾られている「御写真様」を、御覧に成られていらっしゃるのでした。
・・・・・・其の17に続きます。