ACC-J [Alpine Climbing Club of Japan]

東京の山岳会『ACC-J』のページです。

谷川岳 一ノ倉沢 衝立岩『中央稜』

2007年09月09日 22時36分28秒 | クライミング
谷川岳2日目

昨日にひきつづき本日は衝立岩『中央稜』に行くことに。
早朝3時半起床。
前の日の『南陵』では、車の中で寝づらかったのか一睡もできずにいたN雪艦長は、
昨夜は地べたのまっ平らなとこで寝た為かグッスリ寝れたらしい。が、ひとこと・・・
「ほんとに行くの?」

その後身支度とザックに必要な物を詰め込み、一路一ノ倉沢出合近くの駐車場へ向かう。
4時頃駐車場着、トイレ、補水、最終荷物確認後、
まだ暗い4時半頃ハーネスを装着、ヘッドランプを点け出合へ向け出発

アプローチは昨日よりもドロドロぬかるみ状態がひどくなっており辛さが増すが、
空が明るく白みかけて来たくらいにテールリッジ取り付き基部に下りる下降ポイントに到着。
ここでひと息入れ、すぐ下降開始!
昨日降りているので、皆要領良く降りて行く。でもやっぱり地面はぐじゅぐじゅ!

僕がテールリッジ基部に到着するとI、K村氏はすでにフィックスロープの箇所をガンガン登って行く。
今日、殿(しんがり)はN雪艦長。
後ろを振り返ると艦長もラペルの中間点を過ぎている、やっぱり早い 

追われるように沢筋からテールリッジをK村氏達めざし歩き出す。
前方2人も早い

フィックスロープ帯をぜいぜい言いながら自分なりに急いで行くが、2人にぜんぜん追いつかない。
フィックスロープ帯を越え岩&ブッシュ帯に入りやっと2人のおしり辺りが見えてくるまで近づきつつあるとき、
ふと後ろを振り返ると、もうN雪さんがフィックス帯を抜けようとする位置で、
鬼のような形相で肉薄して来る!
「やびゃい、また、おそいぞとおこらえる・・・
の2人も気が付いているのかペースがまたまた速まる

僕も熊に追い掛けらる気分になり必死で駆け上がる

結局テールリッジを登り切り『中央稜』取り付きまで一切休まずに到着。
N雪さんも少ししたら到着。ここで小休止。

休んでいる時後から来たパーティーの人に『中央稜』についていろいろ伺う。
最近雪の影響などで『中央稜』のコンディションは余りよろしくないと聞いている・・・とか、
ちょっと気になる事を聞くが・・・、
まさかこの後地獄を味わうとはまったく考えていなかったので聞き流してしまった。

小休止後ザックからロープを出しアンザイレンし、今回は僕らペアからスタート。

1P目(Ⅳ)
リードはK村氏。
取り付きはテールリッジを登り切った正面すぐから、
見上げると左方向に烏帽子沢奥壁へ向けラインが引かれたようになっている、
ここを沿うように登って行く。
烏帽子沢奥壁へのコーナー辺りでピッチを切る。

2P目(Ⅱ)
荒井リード
ルートがコーナー曲がったところだった為最初わからず、回り上を見上げると
とてもじゃないがⅡ級のピッチとは思えなく、あせる。
冷静にコーナー裏を覗くと階段状になっていて”ここだ”とホッとする。
淡々と登って行くが、ここら辺から岩の状態が怪しくなってくる。
かなり浮石や、ぐらつき、剥がれそうな感じの岩場に・・・。

3P目(Ⅲ、A0)
K村氏リード
急な階段状気味の凹角?を直上して行く・・・烏帽子沢奥壁へ奥壁へと向かって行く。
岩場の状態がもっと怪しくなってくる、浮石だけじゃなくフレーク状の物がベロベロ剥がれそうな岩場に。
K村さんとも「ここ全然快適じゃないねぇ・・・ほんとにⅢ級??」
「もし登り切ったとしても、もう一度登りたいって思わないんじゃない?」
「ほんとにここって南陵とおんなじグレードなの?人によって体感が違うって言ってもここまで違うのってあり?」
とか話し始めるくらい何かおかしい・・・。

4P目(Ⅳ、A0)(Ⅴ-)
荒井リード
このピッチ『中央稜』の核心部
ルート図で「外傾しているところが多いフェースから上部のチムニーもしくは左のフェースを登る」と書いてある。
岩場を見上げると確かにそれっぽくなっている、
しかしとてもⅣ級とは思えない、
A0とも書かれてあるがヘタしたらアブミがいるんじゃないのぉ・・・?と思う。
とにかく突っ込んでみる。
正面上方にフィンガークラックが走っているが遠い!
それに岩場全体がビチャビチャに濡れていてほとんどフリクションが無い!
右コーナーに足がかろうじて入るくらいのクラックがあるがやはりビタビタでフリクションが悪い!
でもここに足を突っ込まない限りクラックに指も届かないし、スタートも出来ないので、
ムリヤリ右足をえぐり込ませ立ちこむ。
なんとか右手がクラックに届くがビチャビチャですべる。それに浅い!!
クラックにピトンが打ってあるがなんとか届いた位置より上にあるためなかなか届かない。
エイドで登ろうと思ってもピトンに何も掛けられなければ進みようが無い。
息を整えまず右ガストンで立ち込んでなんとか左手に持ち替え左ガストン気味で
むりくりピトンにヌンチャクを掛けすぐさまロープをクリップ。

この辺りで頭が混乱してくる、おかしいこんなグレードのわけが無い・・・
それともルートが間違っているのか?それとも濡れているから・・・?
それともそれとも・・・・・・
力不足も考えられたが、とてもそうとは思えない・・・
おかしい・・・きつすぎる、越えたいと思う半分越えられない・・・??ともよぎったが、
ここに来る前いろいろ調べたときの感じだと、
初心者の人でもかなり快適に登られているという印象を受けていた。

でも今僕がへばり付いている岩はとてもⅣ級ともⅤ級とも思えない・・・5.10b、c、d、11・・・とモヤモヤしてくる
こうしている間にも下から名雪さんの激が飛んでくる!
もう、行くしかない!と決心。高い位置にあるピトンになんとかスリングを掛け、
虫の知らせか一本だけ持って来ていたカムが偶然にもこのクラックにちょうどのサイズで、
左手ガストンでなんとか体勢を維持しつつカムを決めプロテクションをひとつ増やし、
もう力技でツルツルのフェースを攀じ登り、
フェース出口右側の割れ目状に手を突っ込む、

すべらないでくれと願っていたが、やはり運が悪い!ずるっときた!
やばいと思ってすぐ飛びつき左手も突っ込んでホールドを掴んで保持・・・と思ったが、
もう保持力が限界に近い、それにヌメッってすべる!

K村さんに「すみませんが、落ちます!よろしくです!」と言った矢先両手がズルッとはずれ
フォール
自分では大丈夫と確信のつもりでいたが、端で見ていた側は危うくグランドフォールって感じだったらしい。

くやしい、この辺で空の雲行きも怪しくなり小雨が散って来ていた。
急がないと・・・次が最後だと決め少し休んだ後さっきの方法で一気に行く、
フェースの出口さっきよりもちょっとでも奥へと思い右手を突っ込む、
勢い左手もより深く突っ込む
じりじり両手を交互に奥へ奥へともぐらせて、上体も乗り込んでゆく、
チムニーが目に入って来て、チムニーに突入!って感じで一気に越える!抜けた!

核心を抜けれたと思い、ホッとひと息ついたが、
周りを見回すと今このあとこのチムニーを抜けてもどうやって上へ前進して行くのか分からないくらい、
状態が悪い!
チムニーの中だからか・・・?と思い前進してみる。
チムニーを抜け、体を出してみても自分を置く場所が無い!
おまけに回り中前進用のプロテクションが一切見当たらないどころか、
全体がグズグズでグラグラ、今にも崩れて来そうな雰囲気・・・やばい、行きづまった!?
何度もトラバースやルートを変えてみたりと前進を試みたが、どこを触っても岩が動く!
おまけに縦フレーク状に刺さった感じの岩だらけだったので、
乗り込んだら絶対はずれるとしか思えなかった。 
絶対下のみんなにぶち当たる!

ヤバイヤバイヤバイ。

結局降りるしかない状況になったのだが、
変則的なルート取りをするしか無かった為直接取り付きに降りれない状態にはまってしまい、
ムリヤリK村さんに上がって来てもらい、
とても使われている感じじゃないビレイ点を辛うじて見つけていたので、
そこからなんとかラペルで降りる事に。

K村さんも登ってくる時かなりヒーヒーだったみたいで良く登れたねぇと言われたが、
こんな感じのところと分かっていたらたぶん登らなかったと思う・・・。

なんだかんだでロープをセットしてみたところ途中空中懸垂気味になりそうだが、
なんとかルートへ戻る事が出来そうなので、慎重に降りて行く。

下のN雪さんたちの姿を見るまで正直生きた心地がしませんでした。
辿り着いた時本気で、生き残ったぁと思いましたが、肝心なのはこれから、
完全下山するまでと思い返し、気を引き締め4人協力して下降を開始しました。

何ピッチか懸垂して『中央稜』の取り付きまで無事降り、やっとホッとする。
ここでちょっと休みつつ今回の件を考察してみたがやっぱり僕も木村さんも納得できないと意見が一致。
最後のあの状況を見たから尚更で、とても『南陵』と同程度の物とは思えない、

このままでは僕らは谷川岳では『南陵』しか登れないままじゃないのか・・・!?
と、なり、近いうちに絶対リベンジしないとと話した。


後日、自宅で調べた結果、
僕らが登って(入り込んで?)しまったルートは、
どうも『中央稜』の”左(側?)ルート”だったらしい・・・

正規では3P目、烏帽子沢奥壁へと向かうのでは無く、
衝立と奥壁のコーナーあたりのカンテ状を右側(衝立側)にトラバースして回り込み、
そこ(衝立側?)の凹角からフェースに抜けるのが正解らしく、
この辺りから歯車が狂ってしまったらしい・・・。

その件をすぐ後にあった集会で話してみたら、
諸先輩方はやはり知っていたらしく
「そんな所に入り込んじゃったの!?だめだよ!あぶねーよ!」
言われ、
「そうなんです登っちゃったんです^_^;)」と答えると、
「え?登っちゃったの?」と笑われましたが、
これも生きて帰って来れたからだなと思いつつ複雑な気持ちになってしまいました。

で、結果!

近いうち、出来れば調べ直した結果の考察も兼ねて今月中にでも行ければ、
リベンジすることを決定!
でなければ、先に進めないとK村氏にも渇を入れられる。


追伸
今回の『中央稜』は最初からおかしかったらしく、
誰ひとり写真を一枚も撮っておらず、というか取れる状況でも撮る気も起きなかった為、
めずらしく画像ゼロ!です。


以上