本日のシネマレビューは、本年度アカデミー賞で4部門にノミネートされた濱口竜介監督の映画「ドライブ・マイ・カー」です。
今回の作品、ハッピーアワーや寝ても覚めてもの濱口竜介監督が、村上春樹の短編小説を脚本した3時間近い長編映画です。主演は西島秀俊、そしてドラマの準主役とも言うべき女優に2代目なっちゃんや天気の子の主題歌歌手の三浦透子が演じています。
物語は、舞台監督の西島秀俊が演じる家福悠介が妻の音の突然の死により喪失感と仕事の関係で知り合った三浦透子演じる専属ドライバー渡利みさきとの出会いより人生の再生ドラマです。悠介はパパートナーとして欠かせない存在だった妻の裏切りを知りながら日常を過ごしていましたが、ある朝妻から夜話したいとことがある告げられます。しかし、その夜妻は突然亡くなり謎の告白となり、喪失感を抱いた中ある演劇祭の仕事を受けます。
依頼先から滞在中は契約の都合上運転できないこととなり、依頼者側から専属のドライバー渡利みさきを紹介されます。妻を除き他人には愛車を運転を指せない悠介は一旦は専属ドライバーを断るも、みさきの運転を気に入り徐々にお互いの過去を吐露していきます。
そんな中で主役を演じる妻の知人でもある若手俳優が、ある事件を起こし公演を可否が責められます。自らが主演演出してきた舞台に妻の死後立てなくなった悠介、数日の猶予をもらい悠介は、みさきの故郷である北海道を目指します。
先ずは、過去の村上春樹原作の映画作品に比べて個人的には、非常にわかりやすかったし長編映画ではあるけど間延びせず丁寧に描かれていたことが良かったです。今回の作品は、舞台演出家である悠介と脚本家である音、そして専属ドライバーとなったみさきの心情が言葉としてうまく表現され三人が抱える問題が徐々に紐解かれていくセリフ劇の素晴らしさを感じました。夫婦の日常とみさきの過去がうまくリンクしているところも面白く、男と女の性のようなものや、親子の不思議な絆みたいなものも巧みに生かされているなと思います。
僕はハルキストではないので作品の良さが映像に反映されていたかはわかりませんが、映画から原作の意図は伝わりました。
※ネタバレになるかもしれませんので、まだ観てない人はご注意を。
周りの感想としてはわかりにくいとの意見もあったので、ここからは作品の概要とポイントを時間経過を追いながら僕なりに解説したいと思います。
悠介と音はセックスを通じて繋がっている、特に音は娘の死後、性癖により喪失感から立ち直った。
悠介はビジネスパートナーとしての音に依存していて、愛車同様に失くしたくない存在であり音の浮気癖に黙認している。
ある朝、音の告白予告があるが帰宅をためらったことで音の突然の死による新たな喪失感を持つ。
瀬戸内での舞台上演の折り専属ドライバーとなる生きていれば娘と同じ年齢のみさきと出会う。
みさきは、雪崩事故により母を亡くし、西に向かい瀬戸内で運転手の仕事に就いている。
舞台オーディションで、音の知人である若手俳優の高槻と再会し、自作自演劇の主役に抜擢する。
公演間近に高槻が傷害事件を起こし主役不在となり、代役とて悠介が主演するかどうか決断を迫られる。
数日の猶予をもらい、悠介はみさきの故郷に向かう。
公演は悠介の主演により成功する
時は移り、みさきは悠介の愛車を運転し韓国にいる。悠介の姿はない。
作品の経過を振り返れば容易に推測はつきますが、生前の音の告白と悠介とみさきのその後と再生のドラマは謎です。謎だからこそ観終わった後に想像力を掻き立てられました。
確かなことは、悠介の過去と現在そして未来にとって音とみさきの存在は人生のドライブ・マイ・カーではないかと思います。