映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、2017年公開のメキシコ作品「ノー・エスケープ 自由への国境」です。
トランプ大統領によるアメリカとメキシコの国境に壁を作る。先日の予備選挙でも、移民問題で世論が真っ二つに分かれているアメリカ。今回の作品は、その世論を代表するような形で、メキシコ移民とアメリカ人ハンターとの対立を命と引き換えにする壮絶な戦いとして描いた問題作です。
物語は、アメリカに向かうグループが車のトラブルで、砂漠を徒歩で進みざる得ない状況下で、正体不明のアメリカ人ハンターに次々と命を狙われるサバイナル劇です。
監督はホナス・キュアロン。ゼログラビティで監督を務めたアルフォンソ・キュアロンの息子で、今回はも脚本を手掛けています。
実際に、国境地帯では、退役軍人を中心に自警団が作られメキシコからの不法移民を警備している状況下にあって、今回の作品は、一歩間違えば暴発する行動として考えられるリアリティーがあります。必要に相手を狙い仕留めるハンターとその相棒の猛犬。武器を持たず逃げ惑いながら、残された人と共に戦いに挑む姿に感動さえ覚えます。
不法移民を受け入れることへの是非は、別にして一方でエゴが正義にすり替えられ、ゲーム化する人間の本能が目の前に突き付けられる現実を自らに問う問題作です。