ディオールの全面協力によるオートクチュールのメゾンで生まれるヒューマンドラマ「オートクチュール」です。
フランス社会にある移民問題から数々のヒューマンドラマが生まれたフランス映画、上流階級の男と移民青年の友情を描いてヒットした「最強のふたり」が代表作としてあげられます。最強のふたりりは実話に基づくものでしたが、今回の作品は、フィクションですがオートクチュールのファッションの未来を感じる作品でした。
舞台は、ディオールのオートクチュール部門のアトリエ責任者のエステル、彼女は次のコレクションで引退が決まっている。ある日地下鉄でカバンを盗んだ少女ジャドの指を見てメゾン見習いとして迎え入れます。エステルにもジャドにも家族の問題を抱えながら、対立を繰り返しながら、時に母子のように、時に師弟のような人間関係を築いていきます。
主演のエステルを演じるのはヌーベルバーグのスタートして名高いナタリー・バイ。ダンス学校出身でニューヨークでバレエを習得した彼女のしなやかな指の動きや立ち振る舞いにメゾンを長きにわたり支えたお針子の気高き女性を感じます。ジャドを演じたリナ・クードリはフレンチディスパッチでティモシー・シャラメと共演した若手の有望株の一人、彼女の出生にアフリカ系移民としての配役もはまり、若い才能を引き出そうとするエステル不器用だけど純粋な姿と家庭の問題や貧困の中で選択肢がなかったジャドが、初めて手にする仕事への好奇心と情熱が生まれていく姿に感動します。
女性監督のシルヴィー・オハヨンは幼少期を移民が住むパリ郊外の大型団地出身で、彼女の自伝的な側面がうまく生かされているそうで、移民問題と親子関係がテーマになっています。また、前述した通り、ディオールの1級クチュリエ―ルがアドバイザーとしてオートクチュールのメゾンの舞台裏を徹底指導しています。また、ディオールの歴史遺産ともいえる衣装提供やムッシュ・ディオールの最初の古典的なアトリエを再現して映画に彩を添えています。
とにかく、出演者の人間的な美しさが生み出す最高級のオーダーメードの美しさを堪能しながら、感動的なドラマ展開を楽しんでみてください。