トポロジカル絶縁体としてのSrBi2Ta2O9(SBT)というBLSFビスマス層状強誘電体結晶の一つを取り上げる。
SrBi2Ta2O9(SBT)結晶の焼成温度と結晶構造および微細組成分析からトポロジカル絶縁体の発現メカニズムを酸化還元電位に基づいて考察する。
SBTは分極反転に伴う膜疲労が少なく強誘電体メモリーの長寿命化が図れるため
研究されていた。しかし水素ガス処理時リーク電流が流れて絶縁特性が下がりメモリとしては使いづらい材料とされて実用化は限定的だった。
なぜ、水素ガスで絶縁性が下がるか考察すると、
2016年ノーベル物理学賞のトポロジカルな考え方を使うと説明しやすい。
ここでトポロジカルとは結晶粒子の集まりである膜のなかの、結晶粒子表面だけが変質している物理現象を指している。
SBT結晶内部は水素ガスで還元されておらず、ほぼ原型を保っている。
これは水素ガスの酸化還元電位が0Vとすると、
卑金属リチウムがー3V
ストロンチウムがー2.8V
チタンがー1.6V
タンタルがー0.8V
鉛がー0.1V
ビスマスが+0.3V
貴金属に近い銅が+0.34V
と水溶液での酸化還元電位を参考に考える。
電極は貴金属の白金を使っている。
貴金属は金属になりやすく
卑金属は酸化物になりやすく還元されて金属にはなりにくい。
おそらくSBTは+0.3Vのビスマスよりもー0.1Vの鉛よりも卑な酸化物だ。
推測ではー0.8V程度の酸化還元電位をもっているために
結晶内部は水素ガスでは還元されない。
しかし、焼成温度と結晶構造解析から
フルトライト構造の微結晶(低温相)はあまり還元されない。
SBT構造の大結晶(高温相)も内部までは還元されない。
中間相のパイロクロア微結晶のうち、
耐還元型パイロクロア(低温型)はフルオライトに似ていて、あまり還元されない性質がある。その組成比はS:B:Tで0.7:2.3:2から0.9:2.1:2程度と分析できている。
易還元型パイロクロア(高温型)が特異的に還元されやすくさらに自身を酸化して接した結晶を還元する性質を持っている。
S:B:Tで0.7:1.5:2程度であると分析できている。
特にビスマスの欠損が特徴的でストロンチウムとタンタルは欠損は明らかではない。
これはビスマスが特に低融点でマイグレーションという膜内外への移動を起こすために引き起こされると推測している。
この易還元型パイロクロア(高温型)が現れると、
これが還元されやすい。しかし一方的に還元されて金属にはならずに
パイロクロアが再び酸化されて接しているSBT結晶を還元するというメカニズムを仮定すると説明がつく事象がある。
それが750℃で焼成したSBT結晶膜だ。
SBT結晶が8割程度を占めているが、2割程度高温型パイロクロアが隙間に挟まって分布している結晶構造を示すことを確認している。
そのときのリーク特性はきわめて電流値が大きく、
また疲労耐性も低い。
SBTは同じような結晶ができているのに、
特性はSBT本来の絶縁性や疲労耐性が現れない。
低温パイロクロアがある膜にくらべても圧倒的に絶縁性が低く、疲労特性も悪い。
これを説明するのに、
SBTの結晶表面がトポロジカルに導電性をもっているためと推測している。
またそのトポロジカルな導線性は金属性のビスマスのような析出物とSBT表面の変質が担っていると信じている。
SBTの表面の変質が起こるメカニズムが
前述の高温型パイロクロアがビスマス欠損型つまり、タンタルストロンチウムリッチな卑な酸化物で、しかもタンタルの性質上、再酸化しやすい、つまり接しているSBT結晶表面を還元しやすい特性をもっていることが推察される。
つまり易還元型パイロクロアはー0.9からー2.8Vの間の酸化還元電位であるが、
部分的に貴が+0.3Vのビスマスがあって、
その差が大きいことが予想される。
つまり容易に還元される部分と還元から酸化されて相手を還元する部分が現れる。
以上から、
1)SBTのリーク電流はSBT結晶表面トポロジカルな伝導性によって生じる。
2)SBTの表面トポロジカル導電性は周りのビスマス欠損型パイロクロアが一旦還元されて、すぐに周りを還元する力によって引き起こされるメカニズムにより生じる。
モデルを推測される
そのため、ビスマス欠損型パイロクロアを作らないことがリーク電流低減に役立つことが結論できる。
また、易還元型パイロクロアにならないような組成比や構成元素にすることも必要だと考えられる。
SrBi2Ta2O9(SBT)結晶の焼成温度と結晶構造および微細組成分析からトポロジカル絶縁体の発現メカニズムを酸化還元電位に基づいて考察する。
SBTは分極反転に伴う膜疲労が少なく強誘電体メモリーの長寿命化が図れるため
研究されていた。しかし水素ガス処理時リーク電流が流れて絶縁特性が下がりメモリとしては使いづらい材料とされて実用化は限定的だった。
なぜ、水素ガスで絶縁性が下がるか考察すると、
2016年ノーベル物理学賞のトポロジカルな考え方を使うと説明しやすい。
ここでトポロジカルとは結晶粒子の集まりである膜のなかの、結晶粒子表面だけが変質している物理現象を指している。
SBT結晶内部は水素ガスで還元されておらず、ほぼ原型を保っている。
これは水素ガスの酸化還元電位が0Vとすると、
卑金属リチウムがー3V
ストロンチウムがー2.8V
チタンがー1.6V
タンタルがー0.8V
鉛がー0.1V
ビスマスが+0.3V
貴金属に近い銅が+0.34V
と水溶液での酸化還元電位を参考に考える。
電極は貴金属の白金を使っている。
貴金属は金属になりやすく
卑金属は酸化物になりやすく還元されて金属にはなりにくい。
おそらくSBTは+0.3Vのビスマスよりもー0.1Vの鉛よりも卑な酸化物だ。
推測ではー0.8V程度の酸化還元電位をもっているために
結晶内部は水素ガスでは還元されない。
しかし、焼成温度と結晶構造解析から
フルトライト構造の微結晶(低温相)はあまり還元されない。
SBT構造の大結晶(高温相)も内部までは還元されない。
中間相のパイロクロア微結晶のうち、
耐還元型パイロクロア(低温型)はフルオライトに似ていて、あまり還元されない性質がある。その組成比はS:B:Tで0.7:2.3:2から0.9:2.1:2程度と分析できている。
易還元型パイロクロア(高温型)が特異的に還元されやすくさらに自身を酸化して接した結晶を還元する性質を持っている。
S:B:Tで0.7:1.5:2程度であると分析できている。
特にビスマスの欠損が特徴的でストロンチウムとタンタルは欠損は明らかではない。
これはビスマスが特に低融点でマイグレーションという膜内外への移動を起こすために引き起こされると推測している。
この易還元型パイロクロア(高温型)が現れると、
これが還元されやすい。しかし一方的に還元されて金属にはならずに
パイロクロアが再び酸化されて接しているSBT結晶を還元するというメカニズムを仮定すると説明がつく事象がある。
それが750℃で焼成したSBT結晶膜だ。
SBT結晶が8割程度を占めているが、2割程度高温型パイロクロアが隙間に挟まって分布している結晶構造を示すことを確認している。
そのときのリーク特性はきわめて電流値が大きく、
また疲労耐性も低い。
SBTは同じような結晶ができているのに、
特性はSBT本来の絶縁性や疲労耐性が現れない。
低温パイロクロアがある膜にくらべても圧倒的に絶縁性が低く、疲労特性も悪い。
これを説明するのに、
SBTの結晶表面がトポロジカルに導電性をもっているためと推測している。
またそのトポロジカルな導線性は金属性のビスマスのような析出物とSBT表面の変質が担っていると信じている。
SBTの表面の変質が起こるメカニズムが
前述の高温型パイロクロアがビスマス欠損型つまり、タンタルストロンチウムリッチな卑な酸化物で、しかもタンタルの性質上、再酸化しやすい、つまり接しているSBT結晶表面を還元しやすい特性をもっていることが推察される。
つまり易還元型パイロクロアはー0.9からー2.8Vの間の酸化還元電位であるが、
部分的に貴が+0.3Vのビスマスがあって、
その差が大きいことが予想される。
つまり容易に還元される部分と還元から酸化されて相手を還元する部分が現れる。
以上から、
1)SBTのリーク電流はSBT結晶表面トポロジカルな伝導性によって生じる。
2)SBTの表面トポロジカル導電性は周りのビスマス欠損型パイロクロアが一旦還元されて、すぐに周りを還元する力によって引き起こされるメカニズムにより生じる。
モデルを推測される
そのため、ビスマス欠損型パイロクロアを作らないことがリーク電流低減に役立つことが結論できる。
また、易還元型パイロクロアにならないような組成比や構成元素にすることも必要だと考えられる。