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札幌・円山生活日記

写実絵画の巨匠「野田弘志-真理のリアリズム」~「札幌芸術の森美術館」~

「札幌芸術の森美術館」で開催中の展覧会「野田弘志-真理のリアリズム」。日本の写実絵画を代表する巨匠・野田弘志氏の最初期から近作までの画業の全容を回顧するもの。会期は1月15日(日)までです。

本日は「札幌芸術の森美術館」で開催中の展覧会「野田弘志-真理のリアリズム」の鑑賞です。「野外美術館」で「芸森かんじきウォーク2023」を楽しんだ後にやってきました。実は同展覧会の前売りチケットは昨年11月に「北海道陶芸の変遷vol.2―現代陶芸の今―」を鑑賞した際に購入しました。11月19日(土)からの会期早々に来ようと思っていたのですが諸事により会期末近くの本日の訪問となりました。そのためもあり観覧客が作品の前に列をなすほどの人気ぶりでもう少しゆとりのある環境で鑑賞できれば良かったと若干後悔しました。そんな見応えのある展覧会でした。

「札幌芸術の森」入口付近。シンボルアートの伊藤隆道氏・作「空と地の軌跡」。
右側へ雪道を歩いていけば「札幌芸術の森美術館 」です。

「野田野田弘志 真理のリアリズム」のポスター。

‟野田弘志(1936-)は、日本のリアリズム絵画を代表する画家の一人です。東京藝術大学を卒業後、イラストレーターとして多忙な日々を送る中で、絵画制作への想いが高まり、30代半ばより画業に専念するようになりました。広島市立大学芸術学部で後進の指導にあたったのち、傘寿を超えてなお、リアリズムの画壇をけん引し続けています。
 
本展は、画家・野田弘志の最初期から近作まで、その画業の全容を回顧するものです。自身のスタイルを模索していた学生時代の作品、広告会社時代のイラストやデザイン。画壇デビューを果たした頃の細密な静物画群(「黒の時代/金の時代」)から、その名が全国的に知られる契機となった新聞連載小説『湿原』(加賀乙彦著)の挿絵原画。骨、あるいは生ける人間を描き、死生観を示そうとしたシリーズ「TOKIJIKU(非時/ときじく)」「THE」、そして近年手掛けている等身大肖像のシリーズ「聖なるもの」「崇高なるもの」まで。人物・静物・風景、いずれのモチーフを前にしても、一貫してひたすらに見つめ、描くことで「在る」ということを突き詰めようと野田弘志が一貫して追求してきたリアリズムの道をたどります。”


「札幌芸術の森美術館 」。

エントランス付近。会期末が近いせいもあり多くの人出です。

展示は「札幌芸術の森美術館 」での通常の美術展で周る方向と逆で右側から会場に入ります。画伯の60年以上におよぶ創作活動を6章に分けて紹介しています。

①第1章「黎明」では、自身のスタイルを模索している途上であった学生時代の作品~広告会社時代のイラストやデザインなど 、
②第2章「写実の起点と静物画」では、画壇に鮮烈なデビューを果たした頃の黒を背景とした細密な静物画(黒の時代)の作品など、
③第3章「挿絵芸術では、画伯の名が一般に広く知られる契機となった新聞連載小説『湿原』の挿絵原画が110点余り、
④第4章「風景を描く」では画伯が神秘的と呼ぶ北海道に題材をとった風景画、
⑤第5章「生と死を描く」では、さまざまな生きものの骨あるいは生ける一人の人間を描き独自の死生感を示した大作(TOKIJIKU/THEシリーズ)など、
⑥第6章「存在の崇高を描く」では、近年手掛ける等身大の人物画(聖なるもの/崇高なるものシリーズ)などを一堂に紹介しています。


なお第3章と第4章の間の会場では、画伯の制作風景とインタビュー映像がながされています(一部はネット上で見ることが出来ます)。展覧会の途中にありますが最初に見るのがお勧めです。

【第1章「黎明」】

《ナイフ》制作年不詳。
➡画伯の学生時代からイラストレーターとして活動していた時代の作品が展示されています。さまざまな画法を試した「模索」の時代でもあったようです。

【第2章「写実の起点と静物画」】
《やませみ》1971年。
➡画壇デビューを果たした1970年代から80年代にかけては、画伯は主に背景が黒く塗られモチーフの存在感が際立つ作品を多く制作し「黒の時代」と呼ばれるそうです。 

《黒い風景 其の参》1973年。
➡細密に描くうちに時間が経過し麦わらにいた昆虫が羽化したようすも描き込んでいると会場映像で解説がありました。

《1・9・4・5》(部分)1986年。

【第3章「挿絵芸術」】
“(みどころ)野田の名を世に知らしめるきっかけとなったのが、朝日新聞連載小説『湿原』(加賀乙彦作)の挿絵です。1日1点のペースで挿絵を完成させなければならないという厳しいスケジュールの中、野田はモチーフを鉛筆によって細やかに描きました。本展では、所在がわかっているものの中から110点余りを出品します。会場では、圧倒的な量と質で仕上げられた挿絵の数々を、じっくりとご覧ください。”
 
 《鳥の巣[第55回連載]》。
➡連載小説で1日1作の挿絵が求められる中で1週間かかって仕上げたという作品。「とてもやってられません!」と編集担当者に仕事を断ろうとしたら「先生!それで良いですよ!それでお願いします!」と言われたと紹介がありました。

《ホッチャレ[第197回連載]》。

《和香子》。
➡展示作品ではありませんがネットで見つけました。展覧会場では連載小説のために書かれた全628点のうち110点余りが展示されています。散逸した作品が多いそうです。

【第4章「風景を描く」】
《トドワラ(北海道野付半島・8月)》1990年。
➡画伯は連載小説『湿原』挿画制作のため北海道に取材旅行を行ったことをきっかけに北海道の大自然に強く惹かれていったとか。いわく「北海道の景色は神秘感がある」。その北海道の風景画を描きながら後年のテーマとなる「生と死」を絵の中に表現しているそうです。
《朝の美ヶ原》2005年。
《摩周湖・霧》1996年。

【第5章「生と死を描く」】
《TOKIJIKU(非時)ⅩⅡ Wing》1993年。
➡この時期のモチーフは生命の本質を追求しようと化石や骨へと変わっていったそうです。
《TOKIJIKU(非時)XXⅢ》2000-04年。 
《THE-1》1997-2000年。
➡「死」のイメージの化石や骨に肉付けした裸婦をモチーフにした「THE」シリーズは、眼の前の一人一人を描くことを通して「人間」「生」とは何かを問う試みだそうです。 

《THE-8》2002-07年。

【第6章「存在の崇高を描く」】
《「聖なるもの」The‐Ⅰ》2009年。
《「崇高なるもの」OP.7》2018年。
➡等身大肖像シリーズ「聖なるもの」「崇高なるもの」は「まるで写真のような絵」と称されるものの画伯としては対象をひたすらに見つめ描くことで「在る」ということを突き詰めようした結果だと。写実主義が美術の王道と評される欧州に対して日本では抽象画の方が人気がある風潮への【真理のリアリズム】のようです。

会場に掲げられた画伯の言葉。紹介ビデオでも「僕の絵から生きることや死ぬことや、人間って一体何だろうかということを考えていけるような絵を描きたい」と述べていた画伯でした。以上で鑑賞終了。


中央バス「芸術の森入口」バス停より帰路に着きました。「野外美術館」での「芸森かんじきウォーク2023も含め大変結構でした。ありがとうございます。 

「野田弘志-真理のリアリズム」
会期 2022年11月19日(土曜日)~2023年1月15日(日曜日)
時間 午前9時45分〜午後5時00分 *入館は閉館の30分前まで
会場 札幌芸術の森美術館
観覧料 一般700(600)円、高校・大学生500(400)円、小・中学生300(200)円 ※()内は前売・20名以上の団体料金
休館日 月曜日(ただし1月9日は開館)、年末年始(12月29日~1月3日)、1月10日(火)
主催 札幌芸術の森美術館(札幌市芸術文化財団)、STV札幌テレビ放送
後援 北海道、札幌市、札幌市教育委員会 

「札幌芸術の森」
〒005-0864 札幌市南区芸術の森2丁目75番地駐車場
TEL:011-592-5111(代表) FAX:011-592-4120
開園時間 9:45~17:00(6~8月は17:30まで)
※札幌芸術の森美術館の入園は閉園の30分前まで
休園日 4月29日~11月3日は無休、11月4日~4月28日は月曜日
※月曜日が祝日・振替休日の場合は翌平日
年末年始(12月29日~1月3日)
https://artpark.or.jp/shisetsu/sapporo-art-museum/
(2023.1.8訪問)

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