透明樹脂にアクリル絵具で何層にも重ねて描く斬新な技法により立体感のある金魚を作り出してきた美術作家の道内初の個展「深堀隆介展 水面のゆらぎの中へ」 。作家の初期の立体作品から、絵画、映像、大規模なインスタレーションなど新作を含む作品約300点を一挙に紹介する展示会が「札幌芸術の森美術館」で9月16日(土)~11月23日(木・祝)の会期で開催中です。
本日は「札幌芸術の森美術館」で開催中の「深堀隆介展 水面のゆらぎの中へ」の鑑賞です。満開の《コスモス》と紅葉の《コキア》等の鑑賞に「国営滝野すずらん丘陵公園」に来た折角の機会なので帰路に寄らせていただきました。深堀隆介氏の「2.5Dペインティング」とも称される斬新な技法により創り出される立体感な金魚の作品は今年春に「北海道立近代美術館」で開催された「特別展 トリック×イリュージョン!」でも拝見させていただきました。今回の個展では多数の「2.5Dペインティング」金魚作品を含む作家の初期の立体作品から最新作まで約300点を展示しているとのことで楽しみにしてやってきました。北海道中央バス【真106】滝野線で「芸術の森入口」バス停下車です。
「芸術の森」入口付近。池に浮かぶシンボル彫刻マルタ・パン氏・作《浮かぶ彫刻・札幌》。
「札幌芸術の森美術館」入口。
「深堀隆介展 水面のゆらぎの中へ」フライヤー。
金魚に魅せられ、創作を続ける美術作家・深堀隆介。
透明樹脂にアクリル絵具で何層にも重ねて描く「2.5Dペインティング」とも称される斬新な技法により立体感のある金魚を作り出してきました。その作品は、まるで目の前に水があり、命ある美しい金魚が泳いでいるかのような迫真性を観る者に与えます。
水面(みなも)の揺らぎの中にあるのは虚か実か、幻か現か。深堀は自身の作品をまるで生きているかのように「見せる」一方で、それが命を持たない絵具の積層であるという事実に正面から対峙します。深堀の作品には、幻影と物質の同居というリアリズムにおける根源的な命題が横たわっているのです。
本展では初期の立体作品から、絵画、映像、大規模なインスタレーションなど新作を含む作品約300点を一挙ご紹介。深堀が一貫して取り組んできた金魚の造形にあらためて光をあて、描くこと、リアルであることに対する作家の思想に迫る展覧会です。
虚実の狭間をたゆたうように私たちを誘う、<金魚繚乱>の世界をご覧ください。
今回の個展で初披露となるインスタレーション《方丈ノ夢〉をアトリエで制作する深堀隆介氏。
<略歴>ふかほり・りゅうすけ 1973年、名古屋市生まれ。愛知県立芸術大美術学部デザイン・工芸専攻学科を卒業後、ディスプレー会社勤務を経て独立。美術作家としてスランプに陥っていた2000年に金魚を描き始める。02年、酒の一合升へ流し込んだ樹脂の表面に魚体を描く「金魚酒」シリーズが誕生、反響を呼ぶ。国内各地やロンドン、ニューヨーク、香港などで個展を開催。超絶技巧の美術作家として活躍している。横浜市在住。
【第1章 夜明け前− 金魚救い以前】
展示会場【第1章 夜明け前− 金魚救い以前】のようす。今回の個展は制作時期や作品類型等で第1章から第6章に分けられ第1章と第6章は写真撮影OK(動画NG)でした。
【第1章】は作家が「2.5Dペインティング」金魚作品を創造する以前の作品の展示なのですがコーナー最初には「2.5Dペインティング」作品を紹介するように2品展示されています。こちらは《百済》2004年。透明樹脂にアクリル絵具で何層にも重ねて描く「2.5Dペインティング」の初期の作品です。
《春ノ桶》2020年。
愛知県立芸術大美術学部デザイン・工芸専攻学科の3年時の課題作品という《自己像》1993年。
同じく卒業制作《Fishbone頭部》1995年。
深堀氏は大学卒業後にディスプレー会社に3年勤務し独立、作家活動を始めるも自信を無くし「美術なんかやめてしまおう」と悩んでいたとき、創作のモチーフを与えてくれたのが金魚だそうです。このことを「金魚救い」と呼んでいるとか。
【第2章 金魚酒− 2.5Dペインティングの誕生】
《金魚酒 命名 鈴夏(すずなつ)》2021年。その「金魚救い」による代表的シリーズ「金魚酒」のひとつ。最初見た時には3Dの立体写実アートかと思ったのですが・・器の中に樹脂を流し込み固まったその表面にアクリル絵具で金魚の姿の一部を描く、さらにその上に樹脂を重ね金魚をさらに描いていく・・平面の絵の集積だそうです。第2章から第5章は写真撮影NGのため画像はお借りしています。
【第3章 存在と不在− 気配がもたらすもの】
《初出荷 出目金》2009年 。
【第4章 金魚繚乱− 妖しく、ゆらめく】
《鱗象(りんしょう) -MACHIKO-》2019年 。【第4章】は多彩は絵画作品が中心です。
【第5章 金魚百態】
《方舟(はこぶね)》2009年。【第5章】ではより多くの素材や画法を活かした金魚作品が展示されています。
《露草》2019年。
【第6章 我らは、水溜りに発生するコケ− 新作インスタレーション】
【第6章】会場のようす。作家自身の死生観、宇宙観を表す作品が展示されています。
《天樫ノ緋魚(あまかしのひのな)》2009年。
《死せる君影》2023年。昨年の実父の死を「消えたのではなく、煙となってこの星を構成する物質にかえっていった」と受け止め、金魚の姿に託したという絵画作品。避けた腹部に宇宙が垣間見えます。
《お桃乳》2009年。
今回初披露となるインスタレーション《方丈ノ夢》2023年。人間の営みは、水槽に発生し水と太陽光を糧に増殖するコケと同じだと・・。
畳の上にも金魚が泳いでいます。
小さな「金魚酒」作品を何日もかけて制作する映像が会場で放映されていましたがこの大作の制作日数はどれほどなのでしょうか。圧巻です。大変見応えがありました。
《雪中花》2023年。作家によるライブペインティング(9月16日開催)により制作されたもの。
展覧会グッズも販売されていました。
以上で鑑賞終了して北海道中央バス「芸術の森入口」バス停より帰路につきました。ありがとうございます。
「深堀隆介展 水面のゆらぎの中へ」
会期:2023年9月16日(土)~11月23日(木・祝)
時間:午前9時45分〜午後5時00分 ※入館は閉館の30分前まで
会場:札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森2丁目75番地 )
観覧料:一般1,500(1,300)円、高校・大学生1,100(900)円、小・中学生700(500)円 *( )内は前売、または20名以上の団体料金休館日11/6(月)、11/13(月)、11/20(月)
主催:札幌芸術の森美術館(札幌市芸術文化財団)、北海道新聞社、北海道文化放送
後援:北海道、札幌市、札幌市教育委員会
協力:キュレイターズ
(2023.9.24)