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札幌・円山生活日記

バンクシー作品が過去最大級の規模で日本に集結「バンクシー展 天才か反逆者か」~札幌・東1丁目劇場(旧北海道四季劇場)~

イギリスを拠点に活動する匿名の芸術家バンクシーの作品が過去最大級規模で展示される「バンクシー展~天才か反逆者か~」。3月24日(木) ~ 5月31日(火)の予定で札幌「東1丁目劇場(旧北海道四季劇場)」にて開催中です。世界各地のストリート、壁、橋などに描かれ鋭い社会風刺や政治的メッセージが込められているバンクシー作品の貴重なオリジナルを含む多数の興味深い作品が展示され連日盛況でです。

今日は「東1丁目劇場(旧北海道四季劇場)」で「バンクシー展~天才か反逆者か~」の鑑賞です。元々この手の作品は好きなのですがきっかけは本年1月のことです。「カナモトホール(札幌市民ホール)」で開催の「札幌市消防出初式の開幕まで少し時間があったのでテレビ塔のあたりを散歩していました。すると「さっぽろテレビ塔」の脚柱に「バンクシー展」のポスターが掲示されていました。すぐさまネット検索すると3月から札幌で展示会が開催されるとのことで早速ネットで日時指定で予約しました。その日を期待して待っていたところ会期が近づくと会場近くでは展覧会のPRが盛んになり期待を更に高ぶらせました。そして漸く本日が予約日当日となり出かけてきました。


「バンクシー展」のチラシ。
“イギリスを拠点に活動する匿名の芸術家で世界中に神出鬼没に活動しているバンクシーのグラフィティ作品の大半は壁面に描かれるため、すぐに塗りつぶされてしまい、現存しているものは多くありません。そんななか本展では、複数の個人コレクターの協力のもと、貴重なオリジナル作品を含む、版画、立体オブジェクトなど70点以上のバンクシー作品を始め、映像やポスターなど計100点以上を過去最大級の規模で日本に集結させることを実現しました。作品をじっくりと間近で堪能してください。 ”

こちらが「さっぽろテレビ塔」下の掲示です。
チカホから「JR札幌駅」に至る地下通路のモニター。
地下鉄南北線「大通駅」のホームドアもこの通りです。

「バンクシー展 天才か反逆者か」の会場。

日時指定チケットは30分きざみで手元のものは10時~10時30分入場。後半の方が混まないという理解で10時15分ころに会場前に着いたのですが既に11時入場組が列をなしていました。

展示スペース入ってすぐにバンクシー氏の人と作品の紹介があります。ちなみに会場は写真撮影可能です。
展示エリアへの入口です。定番のキャラクター《バンクシーズ・ラット》お出迎えがです。ネズミはどのような状況でも生き抜くことのでき都会環境に最も適合した唯一の野生動物だそうで、そんな巧妙に生きているネズミがモチーフです。

展示エリアに入ってすぐのセクションは導入部のようでバンクシー氏の専属カメラマンとして氏と長く行動を共にしたスティーブ・ラザリデス氏の作品が展示されています。こちらはバンクシー氏のアトリエと顔を隠すご本人でしょうか。


バンクシー氏の代表的な活動スタイルであるステンシル(型版)を使用した独特なグラフィティの制作過程が判る写真。

仕上がったグラフィティの制作。

バンクシー氏のアトリエを模倣した部屋。中央は氏を想定しているそうです。順路を次に行くと大型3面スクリーンのイメージ映像などで氏の活動を紹介した映像を見た後に次の展示スペースへ向かいます。 制作意図のテーマごとに作品がまとめられています。 

【消費主義】

 バンクシー氏の作品で頻繁に取り上げられるテーマの1つが「反消費主義/反資本主義」。現在の経済社会生活上にあふれる大量のマーケティング情報の多くがうそっぱちで資本主義者の経済的利益を生み出すために編み出されたもとして風刺の対象にされてそうです。

《フライング・ショッパー》。ショッピングカートとともに落下している女性は落下しているにもかかわらずカートを決して離さず握りしめています。 
《セール・エンズ》。この世の終わりかのように悲しむ人達がいかに消費社会に毒されているかを風刺したものとか。
《ドーナッツ・チョコレート》。物々しくガードするのはドーナッツですか?

【政治・体制】
「政治」や「体制」も「反消費活動」と同様にバンクシー氏が好んで取り上げるテーマだそうです。

《ブレクジット》。バンクシー氏が英国のEU離脱にどのような意見を述べていたのか承知しませんが英国政治の空白を生んだ空虚な論争を揶揄しているのではないかと思います。

《モンキークイーン》。女王もサル並みですか?


《ラフ・ナウ》はバンクシー氏が無名の頃に描いた作品といわれもの憂げなサルが描かれています。サルは「いまは笑うがいいさ。でもいつかは俺たちの時代さ」という標語付きの広告をぶら下げています。
社会的地位の低い若者の気持ちを表現しているとされていますがバンクシー氏自身が天賦の才にも係わらず世に評価されない自らの姿を現したのではとも思われます。氏の創作活動の原点のような作品に感じます。「才能ある自分が世に評価されないのは既存の体制・価値観などが間違っているから!」という意識ではないでしょうか。加えてそのような体制・価値観から遠ざけられている者たちから見た視線もです。こうした意識や視線が氏の作品を貫いているのかも知れません。  

《アイ・フォウト・ザ・ロー》。ストリートアートを落書きとして罰する法律への必死の抵抗とのことで、グラフィティ=言論の自由=表現者の強い武器と考えていたと感じられます。

《もし選挙で世の中が変えられるんだったら・・》。その後にはこんな認識になるようです。仲々難しいところです。

【警察】
また政治体制を維持する役目を果たす警察にもバンクシー氏の目は向けられます。
《フライングコッパー》とポリス・ヘルメット。

《ストップ・アンド・サーチ)。『オズの魔法使い』の主人公であるドロシーと警官。真実を追い求めて旅するドロシーを止め、質問し、捜査する警察の権力行使のやり方が風刺されているようです。


《スマイルコッパー》の通路を抜けて次のコーナーへ。

【戦争・暴力】
戦争な暴力などのテーマの作品コーナー。会場の頭上を見ると舞台上に設置されていることが判ります。

《ナパーム》。ベトナム戦争の有名は写真で逃げる少女の側にはアメリカ文化と資本主義の象徴ともいえるロナルド・マクドナルドとミッキーマウス。少女の顔の恐怖とアメリカ文化のアイコンの顔の微笑が印象的です。

《ハブ・ア・ナイス・デイ!》。武装した兵隊の顔がスマイリーの顔で置き換えられています。戦争で命令が出れば人は平然と微笑を浮かべながら殺人を犯すのだということでしょうか。

《ハッピー・チョッパーズ》。ヘリコプターのピンクのリボンは戦争を愛国主義の美名で飾ることを嘲笑しているとか。 


《ブラー・シンクタンク》。イギリスのロックバンド「ブラー」の反戦アルバム『シンク・タンク』は営利目的で制作されたとの批判もあったもののバンクシー氏は反戦という志を共にしていることから作品を提供したそうです。


ポスター等にも使われているバンクシー氏作品で最も有名なものの一つ《ラヴ・イズ・イン・ジ・エア》。街頭での抗議に参加する彼が投げようとしているのは火炎瓶ではなく花束。資本主義体制や軍国主義体制に対する抗議は暴動の最中に花を投げ込むのと同じくらい役に立つという作品だそうです。

【世界一眺めの悪いホテル】
会場の「THE WALLED OFF HOTEL(ウォールドオフホテル)」のコーナー。バンクシー氏がパレスチナにオープンした「ウォールドオフホテル」はすぐ横にイスラエルとパレスチナを分断する壁が築かれており、窓の外の景色は壁が見えるだけなので通称“世界一眺めの悪いホテル” 。イスラエルとパレスチナのためにこの地に人を誘致しようとホテルを建てたそうです。 
通称“世界一眺めの悪いホテル” の再現。
エントランス脇のサルのポーター。
《グラップリング・フック》。ホテル内で4万ポンドで売られていたバンクシー作品とか。「グラップリング・フック(鉤縄)」は海戦において敵の船を捕まえるため用いられた道具でイエス・キリストを張り付けたのは宗教を武器に世界侵略していた欧州諸国を批判しているとのこと。
「Love is in the Air」の壁画。このコーナーに並んでいたのはホテルから見えたのでしょうか。

たぶんホテルからの風景。

【ディズマランド】
〈ディズマランド〉は2015年にバンクシー氏の本拠地ブリストルのほど近くに5週間限定で開園された“逆ディズニーランド” 的テーマパーク。
敷地内には17か国約50人のアーティストが制作した現代アートが散りばめられた壮大な「テーマパーク」だったとか。
難民らしき子供たち?が多く乗ったボート。

【アートの生と死】

バンクシー氏のアート作品の短命さを紹介するコーナー。氏の作品は市政当局や競合するグラフィティ・グループ、ただ嫉妬心をもつ人たちによって塗りつぶされ、あるいは壁から切り取られて金儲けのために売られ、また自然に崩れていくものもあるとか。上掲の《ファイア・スターター》は氏が火事が起きたビルの壁にその放火犯を模したチャーリー・ブラウン(アニメ映画『スヌーピーとチャーリー』の主人公)を描いたものは壁から切り出されeBay(イーベイ)で売り出されたそうです。 
クエンティン・タランティーノ監督の有名な映画『パルプ・フィクション(Pulp Fiction)』の主演2人を描いた作品(2人が銃を構えたシーンの手にあるのはバナナ)はロンドン交通局により消去され紆余曲折があったとか。

【ガール・ウィズ・バルーン】
最後は《ガール・ウィズ・バルーン》のコーナーです。ハート形の風船を手放そうとしている少女の絵で赤い風船は希望の象徴であると言われていますが解釈は諸説あるそうです。
2018年10月5日にロンドンのサザビーズのオークションにかけられた《ガール・ウィズ・バルーン》は104万ポンド(約1億5000万円)で落札。その直後、バンクシー氏自らが仕組んだシュレッダーで裁断される瞬間。この一連の映像が会場で放映されています。
その後作品名は《愛はゴミ箱の中に(Love Is in the Bin)」に変更され価値が逆に上がったとか。芸術家にとって自らの作品を破壊するのは余程のことだと思うのですが《ラフ・ナウ》で「いまは笑うがいいさ。でもいつかは俺たちの時代さ」と書いたバンクシー氏にとって巨額の価値を付けた作品や大きな富を手にした自ら自身を冷淡に見ていたのかも知れません。


出口に導くのも《バンクシーズ・ラット》でした。


出口付近には「バンクシーは天才(GENIUS)なのか、反逆者(VANDAL)なのか。会場でみて、考えて、あなたの一票を投票してください」の掲示がありました。投票結果は展覧会の公式ウェブサイトに出ていますが「天才」が約65%の多数です。私なら両方に票を入れます。


会場前に写真撮影スポットがありました。
こんな風に撮影するそうです(他会場の写真を拝借しました)。

会場近くから見た「さっぽろテレビ塔」でした。創成川公園の残雪も少なくなってきました。

大変見応えのある展示会でした。サブタイトルは「天才か反逆者か」ですが誰が考えたのでしょう?そしてバンクシー氏自らはどう考えているのでしょうか?“天才”はいつかは自らの天賦の才を自覚するようですが“アンチ”であるのは“天才”の常のような気がします。もちろん例外はあります。そんなことも考えた「バンクシー展」でした。ありがとうございました。

「バンクシー展 天才か反逆者か」
日時 2022年3月24日(木) ~ 5月31日(火) 10:00~20:00
(入場は閉館の30分前まで) ※会期中無休
会場 東1丁目劇場(旧北海道四季劇場)/札幌市中央区大通東1
料金 <日時指定チケット>
平日:大人1800円、大・専・高1600円、中学生以下1200円
土日祝:大人2000円、大・専・高1800円、中学生以下1400円
<プレイガイド販売チケット>
平日:大人1800円、大・専・高1600円、中学生以下1200円
いつでもチケット:大人2000円、大・専・高1800円、中学生以下1400円
※早割チケット(12月31日まで)は各100円引
※未就学児入場無料(要保護者同伴)
主催者 BANKSY~GENIUS OR VANDALY?~札幌製作委員会
(2022.3.30訪問)

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