日本を代表するウイスキーブランド「ニッカウヰスキー」発祥の地「余市蒸溜所」。日本人として初めてスコットランドで本格スコッチウイスキーの蒸溜技術を学んだ創業者/竹鶴政孝氏が夢への出発点として選んだ北の聖地です。完全予約制の「蒸溜所ガイドツアー」でウイスキ―製造施設・工程とともに竹鶴氏とスコットランド人のリタ夫人が暮らした旧邸宅やウイスキー博物館などが見学できます。
今日は「ニッカウヰスキー余市蒸溜所」の見学にやってきました。札幌に転居した年の秋頃だったでしょうか、小樽から余市に小旅行をした際に蒸留所の前まで来たことがあります。見学できるものと何も考えず正門に行くと予約なしでは入場不可とのこと。残念な気持ちでその時は近くの「スペース・アップルよいち」などを巡って帰ったのですがリベンジが課題として残りました。ところがその後コロナ禍の「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」発令・適用期間中は工場見学が中止されていました。幸い先月の3月22日(火)より見学の受け入れが再開されネットで予約してやってきました。アクセスは「北海道中央バス都市間高速バス」の「高速よいち号」利用で自宅近くの「円山第一鳥居」から「小樽駅前」を経由して「余市駅前」に到着、「柿崎商店 海鮮工房」でランチを済ませて予約の13時少し前に「ニッカウヰスキー余市蒸溜所」の正門前に到着です。
「JR余市駅」。駅前に出ると正面(写真では背中側)に「ニッカウヰスキー余市蒸溜所」の正門が見えます。
「ニッカウヰスキー 余市蒸溜所」。石造りの重厚な正門下に受付があります。現在、蒸溜所見学は「ガイドツアー」のみ先3日間までがインターネットにて予約可能です。
正門を入ると「蒸留所施設」が登場。日本人として初めてスコットランドで本格スコッチウイスキーの蒸溜技術を学んだ創業者・竹鶴政孝氏はスコットランドに似た気候や豊かな自然を探し続けた末に1934年(昭和9年)にこの余市に蒸溜所を開いたとか。現在、創業当時の10棟が国の重要文化財に指定されています。
国指定重要文化財の「蒸溜棟」前の大樽看板。記念撮影スポットとして人気です。
中から見た「正門事務所」。事務所棟も国指定重要文化財です。
「ガイド付き見学待合所」。ツアー開始まで待機です。待合室内には蒸留所ガイドやウイスキーの製造工程などをパネルで紹介しています。
「蒸溜所マップ」。「ガイドツアー」は午前9:00~12:00、午後13:00~15:00の毎時00分、30分に開催。見学所要時間はガイド付き見学約40分+試飲・買い物など約30分、その後はウイスキー博物館などの自由見学が可能です。
NHK朝ドラ「マッサン」の二人の主役のサイン色紙。
ウイスキーの無料試飲券を兼ねた入場券。無料試飲会場から蒸留所施設内に戻る際にも必要になります。
ガイドツアーの最初は「第一乾燥塔乾燥棟(キルン塔)」見学。特徴的な屋根は「パゴタ屋根」と呼ばれ蒸溜所のシンボルにもなっているそうです。 「第一乾燥棟」、「第二乾燥棟」は国指定重要文化財 。「乾燥棟」は大麦をいぶしながら乾燥させ発芽を止めて大麦麦芽(モルト)を作る施設。現在は「麦芽」の状態で輸入するため現在「乾燥棟」はマイウイスキーづくり時のみ使用しているそうです。
次の見学場所は「単式蒸溜器(ポットスチル)」が並ぶ「蒸留棟」。国指定重要文化財・近代化産業遺産。 「余市蒸留所」では昔ながらの石炭による「石炭直火蒸溜」が行われているそうです。
ここでウイスキーの製造工程の説明があります。精麦→乾燥→糖化→発酵→熟成(貯蔵)→ブレンドに至る「蒸留」の工程がこの棟です。モルトウイスキーは単式蒸溜器(ポットスチル)で2回蒸溜を行いアルコールをとりだすそうです。
300℃の高温でアルコールを取り出す「石炭直火蒸溜」は温度調節が難しく熟練の技が必要だそうですが、芳ばしい香りと力強い味を持ったウイスキーができあがるそうです。
単式蒸溜器(ポットスチル)上部の注連縄は創業者/竹鶴政孝氏の実家が造り酒屋を営んでおり、その風習を取り入れ「良いウイスキーが出来ますように」としめているそうです。なお奥から3番目の小さな釜が創立当時に使用していた釜。
大麦麦芽を粉砕した後温水を加えて攪拌し麦汁(糖化液)にする「粉砕・糖化棟」や糖化液を醗酵槽(醗酵タンク)に移し酵母を加えて醗酵させる「醗酵棟」は入場できなかったので外部から見学です。
「発酵棟」前の「旧事務所」。創業者/竹鶴政孝氏の事務所として1934年(昭和9年)に建設。国指定重要文化財。
「旧事務所」内部。創立当時はウイスキーは貯蔵年数が必要ですぐに商品化が出来なかったため余市で採れるりんご等の果物を使いジュースやジャム等の加工食品を製造していたので社名は「大日本果汁株式会社」。1952年(昭和27年)大日本の「日」と果汁の「果」取り、「ニッカウヰスキー」と社名変更。
「大日本果汁株式会社」の社名の入った金庫が残されています。
「研究室(現リタハウス)」。1931年(昭和6年)建設で工場の操業開始後にウイスキー製造工程の研究、ブレンド、成分解析などの研究室として使用された建物。国指定重要文化財。現在は建物内部は公開されていません。
「研究室(現リタハウス)」を横から見たところ。趣のある建物です。
ウイスキー木樽運搬用の木ぞり。
「旧竹鶴邸」。1935年(昭和10年)に竹鶴政孝・リタ夫妻の住居として工場内に建設。後に余市町の郊外山田町に移設するが2002年(平成14年)に再び工場内に移築・復元したもの。登録有形文化財、近代化産業遺産。
和洋折衷造りの玄関ホールが一般公開され夫妻愛用のハイティーセット、リタ夫人愛用の聖書・十字架などが陳列されています。
展示されている「旧竹鶴邸」の模型。〇印に注目。何かと思ったのですが後ほど「ニッカミュージアム」で判明。竹鶴氏が仕留めたクマの皮敷でした。
「ニッカミュージアム」から。竹鶴氏は余市の人に誘われしばしばクマ狩を行ったそうです。
「第1号貯蔵庫」。外壁は石づくりで夏でも冷気が保てるように設計されているそうです。国指定重要文化財。
「1号貯蔵庫」は見学使用のため空樽を置いていますが実際には樽の中にはウイスキーの原酒が貯蔵され熟成します。それと共に蒸発が進み20年で約1/2ほどに。いわゆる「エンジェル シェア(天使の分け前)」です。
「ニッカ会館」。ウイスキー製造施設・工程の見学を終えいよいよ試飲会場へ。
試飲会場は「ニッカ会館」2階です。
試飲会場。
提供されるのは「シングルモルト余市」、「スーパーニッカ」、「アップルワイン」の3種類でトレーで渡されます。あるガイドブックではひとり1種類の選択と出ていたので得した気分です。
フロアには水や氷、炭酸水などが揃えられパンフレットには「オススメの飲み方」も詳しく紹介されています。もちろんジュースやお茶も無料で提供されているので子どもやドライバーも一緒に楽しめます。
試飲会場では女優の中野良子さん出演「女房酔わせてどうするつもり?」というセリフでニッカ「オールモルト」を異例の大ヒットに導いた懐かしいテレビCMなどが放映されていました。
「ニッカ会館」に隣接する売店「ノースランド」。
「余市蒸溜所」限定のブレンデッドウイスキーなどが販売されています。無料のガイドツアーに感謝して「シングルモルト余市」(小瓶)を購入しました。
最後の見学場所「ニッカミュージアム」。ウイスキーの世界を紹介する「ウイスキー館」と創業者・竹鶴氏とリタ夫人の軌跡を展示する「ニッカ」館で構成されます。
「ウイスキー館」の「ブレンダーズ・ラボ」。スペース中央には千葉県柏市にあるブレンダー室内に実際に設置されている「ブレンダーズテーブル」を再現しブレンダーの日々の様子を紹介。
「ストーリー・オブ・ニッカウヰスキー」。ニッカウヰスキーを代表する4つのブランド「余市」「竹鶴」「ブラックニッカ」「フロム・ザ・バレル」を紹介するコーナーで各ブランドの歴史やストーリー、世界観を展示。
「竹鶴」。
「余市」。
「テイスティング・バー(有料試飲コーナー)」。スペース中央に実際のポットスチル(蒸溜器)を配した雰囲気のある空間です。
試飲品のメニュー。あるガイドツアー参加の男性は無料試飲の3杯を「クイっと」飲みほしすぐに会場を後にしましたがこの有料試飲で更に飲んでいました。好きな人には「宝の山に入って宝に触れずに帰れるものか!」の気分なのでしょうか。
一角ではこれも無料の「シングルモルト余市キーモルトテイスティングセミナー<入門編>」を開催中でした。
「ニッカ館」の創業者・竹鶴政孝氏とリタ夫人の生い立ちを資料やパネルで紹介するコーナー。
竹鶴政孝氏のパスポート。ウイスキー作りを学ぶため若くして単身でスコットランドへ渡った竹鶴氏の足跡が分かる資料が充実しています。
リタ夫人の実家の居間を再現したコーナー。竹鶴氏もクリスマスなどを共に過ごしたそうです。
「旧竹鶴邸」の調度品。クマの皮敷も置かれています。
リタ夫人の肖像画と愛用品。
NHK朝ドラ「マッサン」の衣装等のコーナー。
ドラマで使用されたビン類。「スーパーニッカ」が「スーパーエリー」(ドラマではリタ夫人の役名はエリー)でした。
竹鶴政孝翁像。
見学を終えぶらぶらと国指定重要文化財群の中を歩いて正門に戻っていきます。
見学を終えた時間には正門の門は閉ざされていました。
「JR余市駅」前には「マッサン」記念碑がありました。
駅構内に掲示されている「マッサン」のポスター。
大変充実の「ニッカウヰスキー北海道工場余市蒸溜所」見学でした。見どころ満載でウイスキーに興味がなくても楽しめる内容です。このような施設を工場の操業を続けながら維持管理・一般開放するのは大変なことと思います。企業イメージの向上等の企業戦略もあるのでしょうが創業者の余市への想いと感謝の気持ちが受け継がれているのでしょう。立派なことです。ウイスキーはあまり得意ではありませんが飲む時は「ニッカウヰスキー」とすることにします。ありがとうございました。
「ニッカウヰスキー北海道工場余市蒸溜所」
〒046-0003 北海道余市郡余市町黒川町7-6
TEL:0135-23-3131/FAX:0135-23-3137
(2022.4.7訪問)