The Alan Smithy Band

The band is on a mission.

Hello, Tornado

2014年07月09日 | ひで氏海外ミッション編
その日、私ひで氏が滞在していたアイオワ州のある街は大雨だった。

ホテルを出てからミッション遂行のためのオフィスに来ても雨脚は衰えることなく、
かなりの雨量のように見えた。


「すごい雨だねえ」

と聞くと現地のアメリカ人は皆口をそろえて言った。

「夕方からは嵐になるよ」

皆、朝から天気予報にかじりついてきたような口ぶりだ。

そう、この時期のアメリカ中西部はトルネード多発の季節。

私ひで氏はトルネードに会った経験がないのでどうしても日本の台風のイメージでしか連想できない。
つまりトルネードが雨と共にどんどん近づいている、というような漠然としたものだ。
しかし話しているうちにそういうものではないとわかった。

トルネードは突然地上から空に向かって発生する竜巻なのだ。
だから台風のように刻一刻と近づいている様子を見守るタイプのものではないのだ。
しかし気象条件や過去のデータから、今日の夕刻にこの地域で発生する可能性が高いということがわかっている、ということだろう。

日本だとこういうとき学校なり会社なりの判断を今か今かと待ち、「今日は帰宅せよ」と言われた瞬間よっしゃと言わんばかりに帰路につくパターンだ。とにかくガイドが必要な国だ。
しかし自己責任の国アメリカでは危ないと思ったらみんな早々に帰るし、全く気にせず残っているものもいる。まあこの方がよっぽど健全だと思う。

ということで私ひで氏もなるべく早く帰ろうと決めた。

とはいいながらもこういう時はなんだかんだと遅れたりするものだ。
早くは出たがその頃すでに16時半ごろ、つまり「夕方」になっていた。

意外にも雨はやんでおり、空の様子が明らかにおかしい。


しかしホテルまで約15分ぐらい、さっさと帰ってしまおうと車で高速道路に出てしばらく走っているとまた雨が来た。

ここから、恐怖の記憶をたどって書かねばならない。

本当に一瞬、あっと言う間に空が暗くなり、日本で経験したことのあるゲリラ豪雨の50倍ぐらいの雨が車を覆ってくる。

高速を走っているその轟音に加えて風が加わり、その音がビョオと増すと車がスライドする。

トルネードだ。

俺は、トルネードに巻き込まれているのだ。

ワイパーをあわてて最大にするが全く関係ない。何にも見えない。


前の車もたまらずハザードをつけたのか、かろうじてオレンジの光がかすかに見えるが、いつ見失ってもおかしくない。
恐怖と前が全く見えないのとで自然に減速しているが、前のオレンジについていかないと、道がどう延びているのかも全く見えない。

自分もハザードをつける。指が震えていた。

本当なら今すぐにでも車を停めたい。しかし停められない。
停めたら後続車に追突されそうだからだ。自分とて、前のハザードの車が急に停まったらついていくのに必死で距離がつかめず追突する自信がある。

こういう時に意外とメンタルを蝕んでくるのは音なのだ、ということを今にして思う。
ゴウゴウという音がさっきからだんだん大きくなって、揺れる揺れる。でも停まれない。かけていたラジオはずっと前からガーガーピーピー言っている。

Twisterという映画を思い出した。

たしかヘレンハントが出てたなあ。。。。
このまま木の葉のように巻き上げられるのか。。。

時間にしてたった数分、しかし地獄の苦しみに思える長さだった。

雨が弱まって前が見えるようになったとき、高速を下りるランプを走っていることにやっと気づいた。
前のハザードだけを頼りについていった結果、前の車もたまらず出口を何とか辿って降りたのだろう。

そのころには雨は止んでいた。
むしろうっすら晴れ間さえ広がっていたのだ。


結果的にものすごい遠回りをしてホテルにたどりつき、
興味本位でネットで調べてみた。ニュースになっているのではないか、と。
あれだけの恐怖体験だ。

しかし、私ひで氏が経験したトルネードはニュースどころか天気予報サイトにも「これか?」というくらいのごくごく小さい印がついているだけでランクも最低ランクのトルネードだった。

本当にトルネードの恐ろしさを実感したのはむしろこのときだと言っていい。

あれで。。。。と。


そんなことを振り返っていると日本にも台風が。
みなさん、くれぐれもお気をつけて。








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