アップルガレットと白ワイン。
芳醇な林檎とガレット地の絶妙なコンビネーション。心地よいシナモンの香り。
たまにはルームサービスでスイーツもいいものだ。。。。
などと私ひで氏がイカしたことをするはずが無い。
しかしこれは紛れもなく今回のアメリカミッション滞在中のある晩に、部屋で撮った写真だ。
話は2時間前にさかのぼる。
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ホテル滞在二日目のこの日、私ひで氏は食事を済ませ外出先から戻ってきた。
外の気温は体感にしてマイナス10度前後。
歩道の凍り方もおかしい。もう笑うしかない。
ホテルの部屋に入ってまずシャワーを浴びる。こう書くとなんだか寒そうだが、ホテルの部屋は暖房が効いていて入った瞬間からあったかいし、
とにかく冷え切った体を熱いシャワーで解凍したくて仕方がなかったのだ。
余談だがアメリカのシャワーというのは水勢が弱いことが多い。
まあまあの熱さのお湯を高圧で浴びるのが好きな私ひで氏にとってこれは実は小さくも毎夜毎夜積み重なるストレスだ。
特に極寒の外から生還した直後にやたらソフトタッチでシャーとやられても全く満足が得られない。
そして温度調整をする部分があるのだがこれが信じられないぐらい微妙で、ミリ単位の変化で熱湯が冷水に早変わりしたりする。
水の勢いの弱さを温度でカバーし、なんとかあったまってシャワーから出た。
次にすることは何か。日本から持ってきたスウェットを着るのか、とりあえずパンいちでベッドにどさっとなってテレビでもつけるのか。
なぜそんな細かいことを描写する必要があるのか。
実はこのあたりの細かい順番がこの後起こったことに決定的な変化を与える可能性が大いにあったからである。
この時私ひで氏が次にとった行動は ---- スウェットを着て、PCを取り出して机の上において、スイッチを入れた。特に理由は無い。
たまたまではあるが、ややリラックス気味の部屋着で机に向かいPCを操作するという、割と「ちゃんとした」行動に移ったのである。
次の瞬間。
ガチャガチャガチャッ
何者かがドアを開けようとしている音がした。PCを覗き込むように猫背になっていた私ひで氏はミーアキャットと同等の速さで背筋を伸ばし扉の方を振り向いた。
一人でホテルに滞在しているときに、ドアノブをガチャガチャされるのは相当な恐怖である。
当然オートロックであるし、上からかぶせるデッドボルトこそしないものの、カギは確実にかかっている。
間違えて人の部屋をカードキーで開けようとするのはたまにある。
自分でもやってしまったこともある。
そんなはっきり考えたわけではないが、瞬間そんな希望にも似た気持ちが起こった。
しかし現実は違った。
不躾にドアが開けられ、二つの塊がものすごい勢いで入ってきたのだ。
目を疑った。
弾丸のように飛び込んできた二つの黒い影。果たして、それは子供であった。
くりくりのブロンドヘアーの少女と、短髪の少年。二人とも両手を広げて満面の笑みで叫ぶ。
「Daddy!!!」
まず瞬時に、「ごめん、俺はお前たちのダディではない」と思った。
しかし言葉は出なかった。そしてやっと「何故?」とこちらが思う前に、彼らの顔が凍りついた。
彼らの外見から思うに、彼らのダディはきっと白人男性だ。
そこにいるはずの大好きなダディがアジア人と化して目前に座っているのだ。
そしてそのアジア版ダディは、そこだけはアジア人離れした大きな眼球を極限まで開いて驚愕の表情で見返している。
二人のキッズは恐怖のあまり、無言で180度転回し、入ってきたときと同じぐらいのスピードで一目散に入口へと走ってドアの向こうに駆けていった。
ドアがバタムと閉まる。すべて一瞬の出来事であった。
何が起こったのかわからなかった。
隠し子を設けた覚えはないし、人の部屋に忍び込んだ記憶もない。
そしてドアベルが鳴った。
出てみると、子供たちの母親と思しき白人女性が立っていた。
聞けば、先ほどチェックインしてこの部屋のカードキーをもらったという。このホテルには一足先に夫が滞在中で、その部屋のカードキーを追加でもらったのだ、とのことだった。私ひで氏が「自分は昨日からこの部屋に滞在している」ことを伝え、お互い「フロントの手違いではないか」という結論になった。
先ほどの二人のきょうだいが母親のお尻の後ろから顔を半分出して上目遣いでこちらを見ている。
こちらの目のサイズも通常に戻ったとはいえ、目を合わすのも可哀そうなほど恐怖に怯えている。
そして彼女はフロントにチェックしてくると言い、去ってから二度と戻ってこなかった。
そうか、やはり。。。と思った瞬間、電話が鳴った。
それはフロントからの電話で、とんだ手違いをして不愉快な思いをさせてしまった、ついてはお詫びの印として今夜オーダーいただくルームサービスはすべてホテルの方で持つということにさせていただきたい、ということだった。
私ひで氏は正直不愉快というよりも何かものすごく貴重な体験をしたという気持ちになっていたし、腹も外で完全に満たされていたので、このオファーを断ろうかとさえ思ったが、貧乏根性がふつふつと湧いてきて結局スイーツを頼んだのだ。
結果、生涯で初のルームサービス、しかもデザートとワインを注文するというなんともセレブな状況が生まれたわけである。
それにしても、あのキッズたちが入ってくるのがあと5分早かったら・・・
下手をすると全裸もしくはパンいちでキッズたちと鉢合わせしていた可能性も充分あったはずである。
たとえ一瞬でも彼らの「ダディ」となった自身の誇りは地に落ち、
幼い子供たちに一生消し去ることのできないトラウマティックな記憶を刻み付けることになっただろう。
この後、満腹だけど勿体ないので無理やり口に押し込みワインで流し込むという、セレブとは程遠いスタイルでガレットを完食した。
芳醇な林檎とガレット地の絶妙なコンビネーション。心地よいシナモンの香り。
たまにはルームサービスでスイーツもいいものだ。。。。
などと私ひで氏がイカしたことをするはずが無い。
しかしこれは紛れもなく今回のアメリカミッション滞在中のある晩に、部屋で撮った写真だ。
話は2時間前にさかのぼる。
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ホテル滞在二日目のこの日、私ひで氏は食事を済ませ外出先から戻ってきた。
外の気温は体感にしてマイナス10度前後。
歩道の凍り方もおかしい。もう笑うしかない。
ホテルの部屋に入ってまずシャワーを浴びる。こう書くとなんだか寒そうだが、ホテルの部屋は暖房が効いていて入った瞬間からあったかいし、
とにかく冷え切った体を熱いシャワーで解凍したくて仕方がなかったのだ。
余談だがアメリカのシャワーというのは水勢が弱いことが多い。
まあまあの熱さのお湯を高圧で浴びるのが好きな私ひで氏にとってこれは実は小さくも毎夜毎夜積み重なるストレスだ。
特に極寒の外から生還した直後にやたらソフトタッチでシャーとやられても全く満足が得られない。
そして温度調整をする部分があるのだがこれが信じられないぐらい微妙で、ミリ単位の変化で熱湯が冷水に早変わりしたりする。
水の勢いの弱さを温度でカバーし、なんとかあったまってシャワーから出た。
次にすることは何か。日本から持ってきたスウェットを着るのか、とりあえずパンいちでベッドにどさっとなってテレビでもつけるのか。
なぜそんな細かいことを描写する必要があるのか。
実はこのあたりの細かい順番がこの後起こったことに決定的な変化を与える可能性が大いにあったからである。
この時私ひで氏が次にとった行動は ---- スウェットを着て、PCを取り出して机の上において、スイッチを入れた。特に理由は無い。
たまたまではあるが、ややリラックス気味の部屋着で机に向かいPCを操作するという、割と「ちゃんとした」行動に移ったのである。
次の瞬間。
ガチャガチャガチャッ
何者かがドアを開けようとしている音がした。PCを覗き込むように猫背になっていた私ひで氏はミーアキャットと同等の速さで背筋を伸ばし扉の方を振り向いた。
一人でホテルに滞在しているときに、ドアノブをガチャガチャされるのは相当な恐怖である。
当然オートロックであるし、上からかぶせるデッドボルトこそしないものの、カギは確実にかかっている。
間違えて人の部屋をカードキーで開けようとするのはたまにある。
自分でもやってしまったこともある。
そんなはっきり考えたわけではないが、瞬間そんな希望にも似た気持ちが起こった。
しかし現実は違った。
不躾にドアが開けられ、二つの塊がものすごい勢いで入ってきたのだ。
目を疑った。
弾丸のように飛び込んできた二つの黒い影。果たして、それは子供であった。
くりくりのブロンドヘアーの少女と、短髪の少年。二人とも両手を広げて満面の笑みで叫ぶ。
「Daddy!!!」
まず瞬時に、「ごめん、俺はお前たちのダディではない」と思った。
しかし言葉は出なかった。そしてやっと「何故?」とこちらが思う前に、彼らの顔が凍りついた。
彼らの外見から思うに、彼らのダディはきっと白人男性だ。
そこにいるはずの大好きなダディがアジア人と化して目前に座っているのだ。
そしてそのアジア版ダディは、そこだけはアジア人離れした大きな眼球を極限まで開いて驚愕の表情で見返している。
二人のキッズは恐怖のあまり、無言で180度転回し、入ってきたときと同じぐらいのスピードで一目散に入口へと走ってドアの向こうに駆けていった。
ドアがバタムと閉まる。すべて一瞬の出来事であった。
何が起こったのかわからなかった。
隠し子を設けた覚えはないし、人の部屋に忍び込んだ記憶もない。
そしてドアベルが鳴った。
出てみると、子供たちの母親と思しき白人女性が立っていた。
聞けば、先ほどチェックインしてこの部屋のカードキーをもらったという。このホテルには一足先に夫が滞在中で、その部屋のカードキーを追加でもらったのだ、とのことだった。私ひで氏が「自分は昨日からこの部屋に滞在している」ことを伝え、お互い「フロントの手違いではないか」という結論になった。
先ほどの二人のきょうだいが母親のお尻の後ろから顔を半分出して上目遣いでこちらを見ている。
こちらの目のサイズも通常に戻ったとはいえ、目を合わすのも可哀そうなほど恐怖に怯えている。
そして彼女はフロントにチェックしてくると言い、去ってから二度と戻ってこなかった。
そうか、やはり。。。と思った瞬間、電話が鳴った。
それはフロントからの電話で、とんだ手違いをして不愉快な思いをさせてしまった、ついてはお詫びの印として今夜オーダーいただくルームサービスはすべてホテルの方で持つということにさせていただきたい、ということだった。
私ひで氏は正直不愉快というよりも何かものすごく貴重な体験をしたという気持ちになっていたし、腹も外で完全に満たされていたので、このオファーを断ろうかとさえ思ったが、貧乏根性がふつふつと湧いてきて結局スイーツを頼んだのだ。
結果、生涯で初のルームサービス、しかもデザートとワインを注文するというなんともセレブな状況が生まれたわけである。
それにしても、あのキッズたちが入ってくるのがあと5分早かったら・・・
下手をすると全裸もしくはパンいちでキッズたちと鉢合わせしていた可能性も充分あったはずである。
たとえ一瞬でも彼らの「ダディ」となった自身の誇りは地に落ち、
幼い子供たちに一生消し去ることのできないトラウマティックな記憶を刻み付けることになっただろう。
この後、満腹だけど勿体ないので無理やり口に押し込みワインで流し込むという、セレブとは程遠いスタイルでガレットを完食した。
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