前回までのあらすじ:
二度の乗継のすべてを左右する一本目のフライトがまさかの1時間遅れ。
それでも起死回生の超高速飛行をやってのけたパイロット。ミネアポリスに到着してつぎのシアトル行きになんとしてでも乗らなければならないひで氏は鬼の形相で走り、見知らぬアメリカ人女性との感動の別れを経てなんと搭乗4分前にゲートに到着。そこでひで氏を待ち受けていた運命は。。。
はあ、はあ、俺は。。。間に合ったのだ!4分!奇跡!
とふらふらになりながらゲートに駆け込んだ私ひで氏の目の前に立ちはだかったのは、堅く閉ざされた扉だった。通常は飛行機内部への通路入り口となるところだ。
当然、ゲートにはほとんど人はいない。いるのは次にこのゲートにくる飛行機を待つ人だけだ。モニターの表示もすでに次の便、デンバー行きに切り替わっている。
筋肉がぷるぷる震えるほどに走った体をじわじわと浸食する絶望感。
ふらふらとゲートを離れ、ヘルプデスクのようなところにいった。ヘルプデスクと言っても無人のブースで、電話が置いてあるだけだ。
震える手で受話器を取ると、すぐに女性が出た。
わなわなと基本情報を伝え、「必死で走ってきて搭乗時間に間に合ったのに、飛行機がない。何の間違いなのか」と伝えると、
アイムソーソーリー ミスターカシモト、と非常に申し訳なさそうな声で女性は言った。飛行機は予定より15分早く出た、と。
絶句した。
同じ航空会社のコネクションで、遅れている便があると知りながらそれを少なくとも予定時刻まで待たずに早く出るなどということがあるのか、どういう対応なのか。それをそのまま言った。すると女性は先ほどのフレーズを寸分違わず繰り返す。そして場合によっては早く出た飛行機のクルーには罰金が科せられる可能性がある、とか何とか。。。
そのころには私ひで氏の耳にはこの女性の声もぐにゃりと変形してしか聞こえず、目の前が真っ暗になりもう思考停止に陥った。
そしてリルートした情報を送るからとメールアドレスを聞かれ、かろうじてそれに答えたまさにその瞬間、
ハヴ ア グッデイ ミスターカシモト、と言い「モト」がもう聞こえないぐらいのタイミングで電話を切られた。最初の申し訳なさそうな物言いはなんだったのかと思いプチ恐怖を感じたほどだ。
乗り遅れるのがそんなに大変なのか、とお思いの方もいるかもしれないので一応補足するが、アメリカから日本に帰国するというのはそれだけで一日のロスが発生する。出る時間によっては金曜にでて日曜の夜着く、などというスケジュールもあり得る。これが狂うとさらに一日、しかも全く不要の待ち時間や宿泊などが発生したとえ航空会社が払ってくれるといってもこれほどのストレスは無い、というぐらいぐったりするのだ。
そうこうしている間にメールに案内が来た。見るとやはりどこかで一泊して、到着が丸一日予定より遅れるというものだった。そしてさしあたっての次のフライトはここで5時間待つというプランだ。
ぷつりと心の中の糸が切れた私ひで氏は、あははあはは といいながらゆらゆらと近くの椅子に座り、もう寝るしかないと考えた。
そして時差対応のために買っていた睡眠導入剤を出した。出発してから寝てないため、薬で少し強制的に寝ないとまずい、と思ったのだ。
実はミッション中は日本から持ってきた薬を飲んでいて、最終日直前にすべてなくなったのでアメリカで買った未開封のものを持っていた。
とりあえずそれを飲んだ。20分ぐらいは効くまでかかるはずだ。
そして椅子に座ってあらためてリルートされたプランを見ていると、猛然と腹が立ってきた。
なぜこんなフライトしかないのだ、本当にちゃんと調べたのか。。。
そしてしばらくして、たまたま座っていた無人のゲートの受付のところに航空会社の男性職員が現れた。
私ひで氏はそこに行き、事情を説明した。ほとんど何の進展もないことを半分確信しながら。
するとこの男性職員、異様にデキるオーラを放ち、
ははあ、じゃあちょっと調べてみようかと検索し始めた。そしていろんなところに電話をしはじめ、えらく待たされたりしても辛抱強くじっと待つなどしていろいろと調べ始めたのだ。
そして待つこと10数分、
「ここから成田に行く便があと2時間で出るが、それはダメだよね?成田とカンサイは数百マイル離れているもんね」
といった。
成田。。。!そうか、ミネアポリスから成田への直行便があるのか!
「いやいや、成田までいけるのならそこからはどうとでもして大阪に帰れるから、それにぜひ乗せてくれ!」というと、
あ、そうなの、という軽く手続きをし始めた。
な、なんという逆転劇。聞いてみるものだ。。。!
この瞬間、ものすごい勢いで何かが体を突き抜け、
立っていられないほどのそれはもう強烈な眠気が来た。カウンターに手を付き、かろうじて受け答えができる、というレベルで、呂律が回らなくなった。視界が狭くなり、暗くなってきた。
手続きが終わり、急に様子が変わった私ひで氏を多少不思議な目で見る男性職員に「は、はんキュー」と意味不明の感謝の言葉を述べ
そのままもとの席に戻った。偶然にもそのすぐとなりが成田行きの飛行機が2時間後に来るゲートだったので、移動する必要はない。
とにかくあと2時間、ここで待てばいいのだ。
そう、寝て待てばいいのだ。
こんなに眠たいのだから。。。
アメリカの薬が日本のそれより強い、というのは本当だと思う。
ただそれにかかわらずひとつ言えることは、睡眠導入剤を本当にベッドで寝る、というとき以外には絶対に飲んではいけない、ということだ。
この手の薬が導入する種類の眠りは、いまから5,6時間は寝させるよという成分だ。
ほんの2時間の昼寝のためでは、決してない。
そして私ひで氏は深い深い眠りに落ちた。
つづく。
二度の乗継のすべてを左右する一本目のフライトがまさかの1時間遅れ。
それでも起死回生の超高速飛行をやってのけたパイロット。ミネアポリスに到着してつぎのシアトル行きになんとしてでも乗らなければならないひで氏は鬼の形相で走り、見知らぬアメリカ人女性との感動の別れを経てなんと搭乗4分前にゲートに到着。そこでひで氏を待ち受けていた運命は。。。
はあ、はあ、俺は。。。間に合ったのだ!4分!奇跡!
とふらふらになりながらゲートに駆け込んだ私ひで氏の目の前に立ちはだかったのは、堅く閉ざされた扉だった。通常は飛行機内部への通路入り口となるところだ。
当然、ゲートにはほとんど人はいない。いるのは次にこのゲートにくる飛行機を待つ人だけだ。モニターの表示もすでに次の便、デンバー行きに切り替わっている。
筋肉がぷるぷる震えるほどに走った体をじわじわと浸食する絶望感。
ふらふらとゲートを離れ、ヘルプデスクのようなところにいった。ヘルプデスクと言っても無人のブースで、電話が置いてあるだけだ。
震える手で受話器を取ると、すぐに女性が出た。
わなわなと基本情報を伝え、「必死で走ってきて搭乗時間に間に合ったのに、飛行機がない。何の間違いなのか」と伝えると、
アイムソーソーリー ミスターカシモト、と非常に申し訳なさそうな声で女性は言った。飛行機は予定より15分早く出た、と。
絶句した。
同じ航空会社のコネクションで、遅れている便があると知りながらそれを少なくとも予定時刻まで待たずに早く出るなどということがあるのか、どういう対応なのか。それをそのまま言った。すると女性は先ほどのフレーズを寸分違わず繰り返す。そして場合によっては早く出た飛行機のクルーには罰金が科せられる可能性がある、とか何とか。。。
そのころには私ひで氏の耳にはこの女性の声もぐにゃりと変形してしか聞こえず、目の前が真っ暗になりもう思考停止に陥った。
そしてリルートした情報を送るからとメールアドレスを聞かれ、かろうじてそれに答えたまさにその瞬間、
ハヴ ア グッデイ ミスターカシモト、と言い「モト」がもう聞こえないぐらいのタイミングで電話を切られた。最初の申し訳なさそうな物言いはなんだったのかと思いプチ恐怖を感じたほどだ。
乗り遅れるのがそんなに大変なのか、とお思いの方もいるかもしれないので一応補足するが、アメリカから日本に帰国するというのはそれだけで一日のロスが発生する。出る時間によっては金曜にでて日曜の夜着く、などというスケジュールもあり得る。これが狂うとさらに一日、しかも全く不要の待ち時間や宿泊などが発生したとえ航空会社が払ってくれるといってもこれほどのストレスは無い、というぐらいぐったりするのだ。
そうこうしている間にメールに案内が来た。見るとやはりどこかで一泊して、到着が丸一日予定より遅れるというものだった。そしてさしあたっての次のフライトはここで5時間待つというプランだ。
ぷつりと心の中の糸が切れた私ひで氏は、あははあはは といいながらゆらゆらと近くの椅子に座り、もう寝るしかないと考えた。
そして時差対応のために買っていた睡眠導入剤を出した。出発してから寝てないため、薬で少し強制的に寝ないとまずい、と思ったのだ。
実はミッション中は日本から持ってきた薬を飲んでいて、最終日直前にすべてなくなったのでアメリカで買った未開封のものを持っていた。
とりあえずそれを飲んだ。20分ぐらいは効くまでかかるはずだ。
そして椅子に座ってあらためてリルートされたプランを見ていると、猛然と腹が立ってきた。
なぜこんなフライトしかないのだ、本当にちゃんと調べたのか。。。
そしてしばらくして、たまたま座っていた無人のゲートの受付のところに航空会社の男性職員が現れた。
私ひで氏はそこに行き、事情を説明した。ほとんど何の進展もないことを半分確信しながら。
するとこの男性職員、異様にデキるオーラを放ち、
ははあ、じゃあちょっと調べてみようかと検索し始めた。そしていろんなところに電話をしはじめ、えらく待たされたりしても辛抱強くじっと待つなどしていろいろと調べ始めたのだ。
そして待つこと10数分、
「ここから成田に行く便があと2時間で出るが、それはダメだよね?成田とカンサイは数百マイル離れているもんね」
といった。
成田。。。!そうか、ミネアポリスから成田への直行便があるのか!
「いやいや、成田までいけるのならそこからはどうとでもして大阪に帰れるから、それにぜひ乗せてくれ!」というと、
あ、そうなの、という軽く手続きをし始めた。
な、なんという逆転劇。聞いてみるものだ。。。!
この瞬間、ものすごい勢いで何かが体を突き抜け、
立っていられないほどのそれはもう強烈な眠気が来た。カウンターに手を付き、かろうじて受け答えができる、というレベルで、呂律が回らなくなった。視界が狭くなり、暗くなってきた。
手続きが終わり、急に様子が変わった私ひで氏を多少不思議な目で見る男性職員に「は、はんキュー」と意味不明の感謝の言葉を述べ
そのままもとの席に戻った。偶然にもそのすぐとなりが成田行きの飛行機が2時間後に来るゲートだったので、移動する必要はない。
とにかくあと2時間、ここで待てばいいのだ。
そう、寝て待てばいいのだ。
こんなに眠たいのだから。。。
アメリカの薬が日本のそれより強い、というのは本当だと思う。
ただそれにかかわらずひとつ言えることは、睡眠導入剤を本当にベッドで寝る、というとき以外には絶対に飲んではいけない、ということだ。
この手の薬が導入する種類の眠りは、いまから5,6時間は寝させるよという成分だ。
ほんの2時間の昼寝のためでは、決してない。
そして私ひで氏は深い深い眠りに落ちた。
つづく。
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