「でも、夢ちゃん、卒業して38年、いろいろなことわかってよかったね。」
「うん。懐かしいものに会うこともできたし、気になっていたこともだいたいわかったし、
新しいものも見ることができた。あとは卒業記念樹だけね。それも、六月に来れば
わかると思う。」
夢は六小の言葉に、笑顔で答えました。
「あ、それからね、去年運動会見に来た時、もう一つわかったよ。」
「え、なになに。」
六小の放つ光は、夢の言葉に輝きを増し、六小は夢の言葉に興味深深のようです。
「うふ、あのね、わたしたちより2年前の、第ニ回卒業生が卒業記念に残したテントが
まだ使われていたの。」
「へぇ~、それはすごいね。」
「でしょ?あのテントは、わたし、よく覚えているんだ。5・6年生の運動会の時、
使っていたもの。まだ使っていたんだね。なんか、うれしかった。感激しちゃったな。」
六小は、懐かしそうにテントの話をする夢を見て、夢ちゃんにとっては、ほんのテント
一つでも、わたしの所にいた時の大切な思い出なんだな、それはわたしを大切に
思っていてくれているということでもあるんだな、と思い、いつまでも自分を大切に
思ってくれている夢に、小さな声で「ありがとう。」と言ったのでした。この時、夢は
六小と向かい合っていました。しかし、六小には、夢の眼がどこか遠くを見ている
ような気がしてなりませんでした。その眼には、40年前の懐かしい小学校時代が
映っているように六小には見えました。六小はそんな夢の顔を、いつまでも
そっと見ていました。