競技の合間、夢は校庭の端に植わっている樹々を見て歩いていました。夢に
とっては思い出のあるもう一本の記念樹、戸久野町が戸久野市になった時、その
記念として六小に植えられた『市制施行記念樹』を探しているのです。町が市に
なったのは、ちょうど夢が六年生の時でした。それで、その樹が植えられた時の
ことはよく覚えています。役所の人が何人か来て、校門のすぐ脇(校舎のある側)に
樹を植えていました。そして、植えた樹の横には『市制施行記念樹 戸久野市』と
書かれた立て札が立てられましたが、樹の名前は夢にはわかりませんでした。今、
その場所を見ると、そこには大きな「ケヤキ」の樹が立っています。しかし、当時は
あった立て札がありません。なので、夢にはこの「ケヤキ」が、あの
『市制記念樹』なのかはっきりわかりませんでした。ただ、卒業アルバムに
載っている『記念樹』の写真が「けやき」みたいなので、『これがそうかな。』とは
思いました。夢は、とりあえずめぼしだけつけて競技を見にもどりました。そんな夢を
見て、六小が言いました。
「夢ちゃん、何してたの?」
夢は、六小を見上げて答えました。
「あ、うん、あのね、6年の時に市が植えた『市制記念樹』を探してたの。」
「ふ~ん。で、見つかったの?」
「うん、たぶんこれだろう、というのはあったよ。」
夢は、「でも、まだ確定はできないの。」と言って、六小といっしょにまた競技を見て
いました。