世の中には3Dプリンターなるものがあり、なんでも3次元つまり立体のデジタルモデルを元に、物体を造形することができるらしい。すでに退役した年寄りのアタマでは、理解するのが難しいが、直訳である立体印刷機と聞くと、わかった気になるのが不思議である。しかし、3Dプリンターもそれで作った作品も、実際にはまだこの目で見たことがなく、インターネットで画像などを見ながら想像を膨らませるだけであった。
それが、本当かどうかわからないが、ひょんなところで目にすることになったのである。2組のゴルフ友達を世話する間に、妹夫婦が可愛い姪っ子を連れてバンコクに遊びに来た。妹と姪の主目的は「推し活」で、コンサートに行くことだったが、1日半を観光に付き合うこととなった。姪にしてみれば、海外旅行に不慣れなポンコツ両親の世話をするのは大変な労力と忍耐を必要とするので、タイ語を話せる伯父さんの同行は、願ったり叶ったりという訳だ。彼らのリクエストは、象に乗るアユタヤ観光で、私もこういった機会がなければ訪れることはなく、まさに渡りに船。いそいそとパンダバスのツアーに申し込んだのだった。一人1,980バーツ(約9,000円)は悪くない。
当日は遠足気分で大型バスに乗り込み、ワットマハタートで木の根に絡め取られた仏頭(レプリカ)を拝み、ワットプラシーサンペットで昔の王の大きな仏塔群を見て、それからエレファントファームで象に乗ってその高さに驚いた。そして最後に寄ったのが白い涅槃仏のあるワットヤイチャイモンコンであり、門前に露店がひしめいていた。アユタヤ名物であるタイの綿菓子ロティサイマイにも興味があったが、目に飛び込んできたのは「3Dアイス」と言う看板。ハイテクを想起させるネーミングと折からの暑さに食指が動いた。1個89バーツ(約400円)となかなかのお値段だが、知的好奇心への投資と思えば、かわいいものだ。恭しく冷凍庫から取り出された3Dアイスは、一個一個がプラスチックのパッケージに入っていた。花を摸した細かな造形が美しく、しばし見惚れてしまう。なるほど、これだけのものを型に流し込んで作るのは、極めて難易度が高そうだ。いったいどうやって製造しているのだろう。花びらが欠けたりすると商品価値が落ちるので、品質管理にも細心の注意が払われているはずだ。ラインナップは、茶色のタイミルクティー、オレンジがかったマンゴー、そして淡い水色のバタフライピーの3種がある。
翌日ボートで行ったチャオプラヤー川添いのワットアルンでも同じ商品が売られていたので、現在、勢力を拡大している真っ最中と見た。「3Dアイス」と言っても、アイスクリームではなく、アイスキャンデーなのだが、今後、取り上げる旅行ガイドブックやウェブサイトが増えて来ると予想する。